"雪の空港で消えた四人と第七格納庫" 第16話
の夜から始まったもの
事件が解決へ向かってから。
1224。
斗空港跡の角にはしい商業施設が建ち始めていた。
かつて滑だった所にはが通り、第7格納庫があった所も更になっている。
野は仕事帰りにでそこへち寄った。
特別な式典があるわけではない。
ただ、あのからが経ったことを自分ので確認したかった。
がっていた。
1989ほど激しい吹ではない。
静かなだった。
柴田はすでに定を識する齢になっていたが、事件も未解決事件の再検討チームへ残ることを希望した。
「に借りがある」
彼はそう言った。
福岡や仙台の事件では、彼が古い捜査員へずつ連絡を取り、当の記憶を聞きしていた。
野もまた、古い事件を見る目が変わった。
証拠がないのではなく、証拠を探している所が違うかもしれない。
答えがくへ消えたのではなく、なところに残っているかもしれない。
斗空港のは、そのことを教えた。
スマートフォンが震えた。
直からだった。
族は今も集まっているという。
以のような「方者を忘れないための追悼会」ではない。
今はの写真を並べ、事をし、の話をする会になっていた。
メッセージには枚の写真が添えられていた。
広告
テーブルの央にの若い頃の写真が置かれている。
周囲には恵子、健、弓、直、それぞれの子どもや孫たちが座っていた。
の数は、35より増えている。
失われたの代わりにはならない。
それでも残されたたちは、失踪した夜だけでを記憶することをやめ始めていた。
順子が母親だったこと。
理が婚約者だったこと。
奈が弟にとって憧れの姉だったこと。
さゆりが妹の秘密の相談相だったこと。
犯が奪えなかった部分を語り直していた。
野はく返信した。
《皆さんによろしくお伝えください》
空を見げると、の向こうをのが通過していった。
音だけがしばらく遅れて聞こえてくる。
1989のクリスマスイブ。
は仕事を終え、へ帰るだけだった。
それだけの夜だった。
そこへの男が勝なを持ち込み、彼女たちを自分の物語へ閉じ込めようとした。
しかし35、壁が壊されたことで残ったのは、黒田の望んだ「作品」ではなかった。
族へ戻ったつの名だった。
宅順子。
佐藤理。
奈。
森田さゆり。
野はずつので名を呼び、の積もり始めた空港跡をにした。
事件は解決した。
けれど、古い記録庫にはまだ答えを待つファイルが何千冊も残されている。
そののどこかにも、見落とされた壁があるかもしれない。
誰かがもう度資料をき、違う角度から見るのを待っている掛かりがあるかもしれない。
翌朝、野の机には仙台から届いたしい事件資料が置かれていた。
1981。
空港勤務の女性。
勤務に突然姿を消し、見つかっていない。
野はコートを子へ掛け、ファイルをいた。
最初のページには若い女性の写真が貼られていた。
その横に、赤い文字でしい付箋がある。
《黒田信司との接点、再調査》
野はページをめくった。
35かかった真実は、つの事件を終わらせただけではない。
く閉ざされていた、別の扉をけていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
妻の事故と、五歳の娘が見抜いた嘘
事故で下半身不随になった妻を前に、夫・大介は「僕が君の足になる」と誓う。ところが五歳の娘・春だけは冷たく「帰る」と言い、父に病室の毛布の下を見るよう促した。 そこに隠れていたのは、事故当時に妻と一緒にいた浮気相手。家族を置いて密会していた妻は、事故の賠償や介護まで夫に押しつけようとする。 幼い娘の一言で裏切りを知った父が、離婚と親権確保を決断し、娘と二人で新しい生活を始める物語。夫婦|真実|真相|親子関係2.0万字5 2 -
完結第10話
13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた
2009年、自宅から忽然と消えた四歳の娘・くるみ。母のえみは、娘の部屋を十三年間そのまま残し、帰りを待ち続けていた。 失踪から十三年後、元隣人のSNSに十七歳の少女が写る。成長した娘に似た顔、同じ三日月形のあざ、そして少女の名前も「くるみ」だった。ミステリー|夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 2 -
完結第20話
妻の予定表に書かれた「最終日」
妻の予定表に記された、結婚記念日の「最終日」。夫は離婚を疑うが、その言葉には、十四年間積み重なった妻の孤独が隠されていた。 毎年同じレストランに二人分の席を予約し、来ない夫を一人で待ち続けていた妻。彼女は今年を最後に、待つことをやめようとしていた。夫婦|真相|第二の人生2.8万字5 62 -
完結第14話
七年後、屋上で見つかった妻の秘密
1993年、鹿児島。自治会の帳簿を整理していた主婦・ミキは、過去の火災復旧費に不自然な水増しを見つける。調査を始めた直後、彼女は遺書とバッグだけを残して姿を消した。 投身とされた事件から七年後、マンション屋上の封鎖された旧貯水槽から、ミキと一致する人骨が発見される。ミステリー|真相|行方不明2.1万字5 178 -
完結第12話
二十六年目の告白
余命わずかな夫・浩司は、妻ゆみに衝撃の告白をする。二十六年前、ゆみが産んだ息子と愛人の子を、病院で密かにすり替えたというのだ。 だが、ゆみはすべてを知っていた。夫の行動を目撃し、名札を元へ戻していたため、浩司が愛人の子だと信じて溺愛してきた誠は、紛れもなくゆみの実子だった。夫婦|真相|親子関係|修羅場|不倫1.7万字5 1287 -
完結第13話
成人式に消えた母と十三着目の振袖
2014年の成人式当日、貸衣装店から母・奈津子が消えた。店の960万円もなくなり、共に姿を消したカメラマンとの逃避行が疑われる。娘の紗季に残されたのは、「今日は署名をしないで」という謎のメモだけだった。 10年後、閉店する店の倉庫から、記録にない「13着目の振袖」が見つかる。その裾には、若い女性たちの名義で作られた高額ローン契約書と、母が隠した証拠が縫い込まれていた。ミステリー|真実|行方不明2.3万字5 225