"月30万円の親孝行は、誰の財布から?" 第20話
目のしい通帳
季節は巡り、の音がづくの旬。 がのダイニングテーブルのには、梅のが輪挿しにけられていた。
「お母さん! お父さん! あったよ、私の受験番号!!」 リビングにび込んできたの歓声とともに、格通の画面がスマートフォンの液晶に映しされた。 第志望の公学、理学部への格だった。 「やったあああッ!!」 達也がちがり、を抱きしめて涙を流した。陸も「姉ちゃん、すげえ!」とハイタッチを交わす。 族全員の歓の声が、リビングに満ち溢れた。
そのの夜、子供たちがそれぞれの部へ戻った、私と達也はいつものようにダイニングテーブルに向かいっていた。 テーブルのには、あの『篠原・共財務管理簿』のノートがかれている。
「入学と期授業料、それにパソコンの購入費用……わせて約百万円だな」 達也が卓を叩きながら、元の通帳を確認した。 「俺の毎の遣いから削って貯めた予備費が、ヶで万円。活費座のプールから万円。……残りの万円、美奈子の個座の貯からしてもらってもいいか?」
「ええ、もちろんよ」 私は微笑んで頷いた。 「の学学のために貯めてきたおだもの。んですわ」 「ありがとう、美奈子。……本当に、おのおかげだ」
広告
達也は々とをげた。 そこには、かつてのような「妻のは俺のもの」という傲さは微もなかった。 互いの稼ぎと役割を尊し、謝を忘れない、対等なパートナーとしての敬だけがあった。
達也はこのヶ、度も愚痴をこぼすことなく、筒とおにぎりを持って勤し続けた。 会社のみ会を断るようになった達也を、最初は同僚たちが怪訝にったそうだが、今では「篠原課は族いで堅実なだ」と、社内での望がむしろがったという。 義母のふみ子さんへの万円の送も、達也の座から毎きっちり続けられており、義母の膝の痛みもリハビリの甲斐あって随分と良くなったそうだ。
私は引きしから、真しい冊の通帳を取りした。 しく設した、族ののための積座だ。 「ねえ、達也さん。が学に入って、陸がになったら……でしずつ、この座におを貯めましょう」 「何のための座だ?」 達也が覗き込んできた。
「結婚周の、婚式の旅資よ。……で、温泉にでもきましょう」 達也は目を見張り、それから照れくさそうに、だが底嬉しそうに目尻をげた。 「ああ……こう。必ずこう。俺が、旅費の半分以を稼ぎして見せるよ」
カチリ、と計の針が午を指した。 キッチンの片隅で、古い卓が静かに休んでいる。
かつては孤独な忍耐の具だったその卓は今、の未来を等で刻み続ける、信頼の証へとまれ変わっていた。
誰かの見えない犠牲のに成りつ平穏など、最初から平穏ではない。 おのみをり、活の痛みを分かちい、互いの尊厳を守りうこと――それこそが、私たちがという歳をかけてようやく辿り着いた、本物の族の姿だった。
夜の静寂の、LDKを満たす温かなに包まれながら、私たちはしい計簿の最初のページに、で並んで未来の予定をき込んでいった。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
元夫の再婚式に招かれた私には、秘密がある
離婚から五か月後、元夫が若い再婚相手を連れ、結婚式の招待状を届けに来た。だが由美が抱く生後二か月の男児を見た瞬間、元夫の笑顔は凍りつく。 由美は離婚時、すでに妊娠していた。さらに彼女の手元には、元夫の裏切りと消えた夫婦の財産を示す証拠も残されていた。 捨てられた妻が過去を暴くだけでなく、息子とともに自分の人生と安心して帰れる家を取り戻す再生の物語。夫婦|親子関係|不倫2.6万字5 3 -
完結第10話
義母に突き落とされたので、離婚します
十九年間、義母の虐待と夫の無関心に耐えてきたさつき。妊娠中、義母に階段から突き落とされ重傷を負うが、夫は愛人と過ごし、彼女の訴えを切り捨てる。 病室でさつきが残したのは、離婚届と「あなたが守らなかったものを、私は守ります」の一文。元刑事の父と証拠を集め、義母を実刑へ、夫を失職と離婚へ追い込む。因果応報|怒り|嫁姑|修羅場1.4万字5 168 -
完結第12話
空港に置き去りにされた妻は、もう帰らない
欧州出張から帰国したゆりを、夫と義母は成田空港へ置き去りにした。「四時間歩いて来い」と笑いながら、彼女を貧しいラーメン屋の娘だと見下して。 彼女は、夫の不倫や会社資金四千八百万円の横領を示す証拠を、すでに揃えていた。 空港から一本の電話をかけた三時間後、取引停止が相次ぎ、夫の会社は大混乱に陥る。嫁姑|夫婦|修羅場1.8万字5 685 -
完結第14話
十八年勤めた売り場を追われた日、恩返しが始まった
十八年間デパ地下を支えた契約社員・千鶴は、新店長から「高齢者の代わりはいくらでもいる」と突然解雇される。 だが、毎週安い弁当を買う老人の正体は、大手食品会社の会長。かつて倒産寸前だった彼の弁当を世に広めた恩人こそ、千鶴だった。職場逆転|退職金|金銭問題|修羅場1.9万字5 32 -
完結第20話
妻の事故と、五歳の娘が見抜いた嘘
事故で下半身不随になった妻を前に、夫・大介は「僕が君の足になる」と誓う。ところが五歳の娘・春だけは冷たく「帰る」と言い、父に病室の毛布の下を見るよう促した。 そこに隠れていたのは、事故当時に妻と一緒にいた浮気相手。家族を置いて密会していた妻は、事故の賠償や介護まで夫に押しつけようとする。 幼い娘の一言で裏切りを知った父が、離婚と親権確保を決断し、娘と二人で新しい生活を始める物語。夫婦|真実|真相|親子関係2.0万字5 14 -
完結第10話
13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた
2009年、自宅から忽然と消えた四歳の娘・くるみ。母のえみは、娘の部屋を十三年間そのまま残し、帰りを待ち続けていた。 失踪から十三年後、元隣人のSNSに十七歳の少女が写る。成長した娘に似た顔、同じ三日月形のあざ、そして少女の名前も「くるみ」だった。ミステリー|夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 8 -
完結第20話
路線バスで来た父を笑った婚約者一家の誤算
娘の顔合わせに路線バスで訪れた庄三は、相手の両親から「車も持てない乞食」と嘲笑される。婚約者まで黙って見ていたため、庄三はわずか五分で破談を告げた。 しかし庄三の正体は、県下一の交通グループを一台の中古バスから築いた創業者。翌日、社運を懸けた大型工事のコンペ会場で、相手親子は上座に座る庄三と再会する。職場逆転|人生逆転|第二の人生|金銭問題2.6万字5 137 -
完結第15話
白米だけの夕飯を出されたので、家を出ました
年度末の仕事を終えて帰宅した麻子を待っていたのは、冷めた白米だけの夕食。夫と義母は特上寿司を食べながら、「反省したらおかずを出す」と笑った。 「外で牛丼でも食べてきたら?」という夫に、麻子は静かに「分かりました」と答える。しかし彼女は半年前から新居や弁護士の手配を進め、大切な荷物も運び終えていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|修羅場2.0万字5 156 -
完結第20話
妻の予定表に書かれた「最終日」
妻の予定表に記された、結婚記念日の「最終日」。夫は離婚を疑うが、その言葉には、十四年間積み重なった妻の孤独が隠されていた。 毎年同じレストランに二人分の席を予約し、来ない夫を一人で待ち続けていた妻。彼女は今年を最後に、待つことをやめようとしていた。夫婦|真相|第二の人生2.8万字5 82