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"昭和29年、棟梁が祝いの柱を割った理由" 第10話

梁の裏側

柴田の建築現へ戻るのは、源吉にとって初めて棟式の朝をやり直すようなものだった。庭にはまだ餅を配ったの箱が残り、真しい根瓦が半分だけ載っている。忠蔵は痩せたように見えた。「疑わしいところを全部見てくれ。ただし、何かあれば隠さず言ってくれ」と頼んだ。源吉は健太郎と川島を伴い、まず交換した通し柱の納品を確かめた。

今回の柱は別のから仕入れたものだった。材の寸法も状態も確認でき、取り替えた作業の順序にもきな問題は見つからない。だが階の梁のうち本、見えにくい面に自然な削り跡があった。は載せたからでは分に確かめられない所で、墨を引き直した線まで残っている。健太郎が「ここを隠したいように見える」と言い、川島は裏側へを入れて慎に触れた。

削り跡の奥には、黒い筋が延びていた。仮支えを増やし、その梁を受ける位置を確認したうえで、見える部分の片を取って調べる。源吉が押すと、繊維が脆く裂けた。忠蔵はったまま、削りかすを見ろしていた。回は「祝いのにを傷つけられた」とっていた。今度は、源吉が来なければ傷んだ梁をそのまま見過ごしたのだと分かった。

「これも替えないかんのか」

「替えるべきだと俺はいます。

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どこまですかは、支えを組んで順を決めます」

源吉が答えると、忠蔵はく息を吐いた。嫁の律子は庭から義父を見げている。には初めての子がまれる。忠蔵はその子のためにを建てていた。見栄のためと源吉はい込んでいたが、族が増えるにしでも広い部を用したかったのだとり、胸が痛んだ。

津久田は事を止められ、源吉ので顔を真っ赤にした。「何かあれば全部壊すつもりか。直しで済むものまで事にして、施主に余分な費をさせる気だろう」と鳴る。源吉は初めて声を張り返した。「余分な費かどうかを決めるに、この梁が使えるか見ろ。俺の目だけで信じられんなら、川島にも見てもらえばいい」。川島は黙って同じ判断を伝えた。

その、忠蔵は事の続きを度止した。津久田の支払い請求をすべて認めたわけではなく、材の状態と取り替えの負担について話しうためだった。源吉も自分が受け取った事代の部を返す用があると申したが、忠蔵はすぐにを受け取らなかった。「誰がいくら負担するか、まだ決められん。順番を違えると、もう誰も信用できなくなる」と言う。

夕方、川島は傷んだ梁の寸法をへ写し、取りした部材を勝に捨てないよう頼んだ。材の状態を関係者が直接確かめられるよう、印と切りを残して保管するためである。

豊は梁の隅を見て、突然ち止まった。「これ、俺が積み替えた材です」と言った。の、本線を削った箇所に鋸のさな傷が残っていた。豊が自分でつけた目印だった。

源吉は息をえ、豊へ尋ねた。「その、誰がへせと言った」。豊は津久田と原田の顔を見比べ、答えた。「原田の旦です。でも津久田さんもそのにいて、今に使う分だけ先に運べと言いました」。のは互いにらぬ顔をしたが、材ので若い男が見たことは変わらない。忠蔵は静かに言った。「は、材と請負をうちの座敷へ呼ぶ。逃げずに話をしてもらおう」

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