みかん小説
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"昭和29年、棟梁が祝いの柱を割った理由" 第20話

しい帳

昭の、岩崎の仕事にはしい棚ができた。文が考えたもので、納品控え、点検記録、請負の約束、修繕の記録を分けて置けるようになっている。以の源吉ならが増えるのを嫌がり、職の腕さえあればよいと言っただろう。今は棚をけ、次の現で使う材の記録を自分で探す。字をくはまだ慣れだが、読み返せることが仕事を助けると覚えた。

しい依頼は、町れの豆腐の増築だった。きな仕事ではなく、古い釜の横にさな作業部を作るというものだ。主は「なるべくくく」と頼んだが、源吉は予算と完成までの数を聞いたうえで、まず面の状態を見たいと答えた。川沿いで湿気がく、の通しを考える必がある。源吉は計画を急がず、どこにをかけるべきか説した。

その、材を運んできたのは原田のではなかった。しい仕入れ先を選んだことを、源吉は特に誰にも話さない。原田のも営業を続けているが、の問題で信用を失い、以ほどの注文はないと聞いた。原田は帳の仕組みを改め、材の仕分けを記録するようになったという。源吉はそれを聞いても、すぐ注文を戻すつもりはなかった。商売の関係は、度の謝罪では元に戻らない。

豊は源吉の仕事で、を運ぶだけでなく鉋を握るようになった。

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最初は削りすぎて健太郎にられ、次には墨の位置を違えた。源吉は自分が若い頃、兄弟で同じ失敗を繰り返していたことをいす。ある、豊が「材の印を確かめるだけなら、俺はのでもしていた」と言うと、源吉はを止めた。「ここでは印だけじゃりん。目で見て、叩いて、必なら別の者にも見せる」。豊は頷き、そのの仕事帳へ自分が見たことをいた。

清次も々からりて来るようになった。兄弟は以のように同じ仕事をするわけではないが、の所や乾き具について話すが増えた。ある晩、清次は古い製材所の具を見せ、源吉にさな角材を渡した。「これならの柱に使える」と言い、兄の反応を見て笑った。源吉はを確かめ、「おに言われたから使うんじゃない。自分で見る」と答えた。はしばらく笑いった。

文の嫁入りはに決まった。きな披宴はせず、両で事をするだけにした。源吉は祝いの箪笥を自分ので作ろうとしたが、文に「仕事があるなら無理しないで」と止められる。それでもさな文机をつ作った。引きしには鍵をつけず、類が収まるさにした。文が仕事の帳面を広げられるよう、板はし広く取った。

完成した机を見た文は、目をなぞって「ここに父さんの印を押すの」

と尋ねた。源吉は首を振った。「おが使うものに俺の印はいらん」。文はし考え、「じゃあ、裏にだけいて」と頼んだ。源吉が墨で「昭」とくと、文は裏返して眺め、「これでいつ作ってもらったか忘れない」と笑った。

嫁入りの、男の母・澄は源吉へをげた。「はいろいろ失礼を申しました」。源吉は「あれだけのことがあれば、配するのが普通です」と答えた。澄は度だけ頷き、「増築した部も、までに直していただけて助かりました」と言った。その部は補修記録のある軒のうちのつである。源吉は縁談がまとまったからといって、その事実をさく扱うつもりはなかった。

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