みかん小説
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"昼寝ばかりの嫁が、潰れかけの餅屋を救うまで" 第1話

赤いと昼寝する嫁

曜の朝、商の端にある「餅」のガラス戸に、赤いが枚貼られた。端がにあおられ、ぱたぱたと乾いた音をてている。には賃滞納と返済理に関する通が並び、来週の曜、午までに定額を用できなければ、の賃貸契約だけでなく、自宅を担保にした借入についても次の続きへむとかれていた。を始めてになる文子は、その赤いの角を何度ものひらで押さえた。

の茂は腕計を見ながら、もう度だけ期限を押しした。材料の林正夫も、未払いの請求を入れた封筒を握りしめていた。賃、もち米や豆の仕入れ代、古い械の分割払い、自宅を担保にした借をわせると、負債は千百万円。なかでも週以内に理しなければならない額は約千万円だった。文子は「あと週だけください」とをげたが、も林も、だけで待てる段階を過ぎていることを隠さなかった。

が帰ると、息子の健は配達用の軽バンを売ると言いした。娘の真弓は親戚へ話をかけたが、どこも自分の活で精いっぱいだと断られた。の奥には、朝から蒸したもち米の湯気と、焦げつくような沈黙だけが残った。真弓は卓を叩きながら「を売っても万。

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親戚から借りられないなら、もうい注文を増やすしかない」とで言った。健は何も答えず、古い軽バンの鍵を掌で転がしていた。

そんな、階からスリッパを引きずる音がした。健の妻、美穂が寝巻きのままりてきたのである。美穂は赤い通をに取ると、秒ほど目を通した。眉をひそめるでもなく、ため息をつくでもない。そのままを机へ戻し、蔵庫をけた。「お母さん、今のお昼、何にしますか。噌汁なら卵焼きも作りますよ」。真弓の顔が変わった。「ももなくなりそうなのに、今、お昼の話?」。文子も机を叩き、「べることを考えるに、餅をつでもく作ろうとはわないの」と声を荒らげた。

美穂は反論しなかった。牛乳を半分ほどみ、流しにコップを置くと、の隅にある折り畳み子へ向かった。背もたれには、元のも分からないほど古びた膝掛けが掛かっている。美穂はそれを自分で肩まで引きげ、体を横たえた。文子は舌打ちし、真弓は「が潰れそうでも昼寝できるなんて、すごい特技ね」とわざと聞こえる声で言った。それでも美穂は目を閉じたままだった。

美穂がへ嫁いで、族はずっと同じ印象を持っていた。朝は遅く、が忙しくても「し休みます」と言って子へ横になる。結婚は会社勤めだったらしいが、何をしていたのか詳しく話したことはない。

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文子は当初こそ「体がいのか」と配したが、病院へ通う様子もなく、事は普通に取り、眠ったは平然としているため、いつしか「怠け癖」と決めつけるようになっていた。真弓に至っては、弟がこんな嫁を選んだことまで満にっていた。

ただ、誰にも見えていないものがつあった。膝掛けので、美穂のの差し指が定の隔でいていた。とん、とん、とん。赤い通に並んでいた数字をので組み替えるように、しばらくいては止まり、またく。健たちは、それを眠るの癖だとっていた。

そのの昼、美穂は階へ戻るに、帳簿の束を冊だけに取った。文子が「何をするの」と聞くと、美穂は振り返りもせずに答えた。「来週の曜なら、まだありますよね」。族には、それさえ呑気な言にしか聞こえなかった。

だが美穂が持っていったのは、番しい帳簿ではなかった。売のいでもなく、赤字のだけでもない。からの仕入れ、廃棄、配達、包装、掛け売りが番細かくかれた冊だった。階の部でページをいた美穂は、最初の数分だけ数字をき写した。やがて鉛を置き、目を閉じた。眠ったのではない。ので、族が続けたの「どこからが抜けているか」をつずつ並べ始めていた。

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