みかん小説
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"昼寝ばかりの嫁が、潰れかけの餅屋を救うまで" 第2話

百万円の注文

翌朝、のかりがついた。文子はもち米を研ぎ、健は蒸籠を運び、真弓は注文表と包装資材を広げた。餅は昔から、作る品数のさを自にしていた。よもぎ餅、豆福、きなこ餅、餅、黒ごま餅、祝い餅、季節の餅まで、壁の札には種類が並んでいる。文子は「何でも揃うだから続いた」と信じていたし、真弓も「種類を減らしたら客が逃げる」と疑わなかった。

しかし実際には、種類すべてが同じように売れているわけではない。朝から作っても夕方まで残り、翌に回せず処分するものもかった。文子は「品切れで帰すより、し余る方がまし」と言い、残った餅を自宅でべたり所へ配ったりしてきた。続けた習慣は、族ので疑う対象にならなかった。

午、美穂はようやく階からりてきた。朝昼兼用のご飯をべ、自分の皿を洗うと、また折り畳み子へ向かって膝掛けをかぶった。馴染み客がその姿を見て、文子へ「お嫁さんは気楽でいいわね」と笑う。文子は笑い返せず、真弓は「昼寝できるのも才能みたいですよ」と言った。健だけが、し気まずそうに目をそらした。

午、その空気をひっくり返す話が入った。内できな宴会や式典を扱う会社から、週末の催事用に餅百箱を注文したいという話だった。

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額は百万円を超える。真弓は受話器を置くなり声を弾ませ、「お母さん、これでしは何とかなるよ。あと何件か同じ注文を取れば千万円にづく」と言った。文子の顔にも、久しぶりにが戻った。

契約条件はファクスで送られてきた。級包装を必須とすること、配送費は負担、購入者につきさなおまけを付けること、催事終の未封品は返品能とすること。真弓は「なんだからこれくらい当然」と言ったが、子で寝ていた美穂が起きがり、契約をに取った。赤い通よりもく読み、つの条件に線を止める。

「この注文、受けない方がいいといます」

真弓は契約を取り返した。「餅のことを何もらないが、百万円の注文を断れって言うの?」。文子も「今、を差すようなことを言わないで」と続けた。美穂は声を荒らげず、包装費と配送条件のを指した。「売れば売るほど損が増える条件が付いています。なくとも、箱当たりの本当の原価をしてから返事をした方がいいです」

美穂は簡単な計算だけでもいいから、とを枚求めた。もち米、餡、豆の材料費だけではなく、箱、引、配送、臨員、返品分まで入れる必があると説した。だが真弓は「そんな細かいことをしているはない」と遮った。

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文子も、期限が週しかない焦りから、百万円という数字を逃したくなかった。

結局、文子は契約に判を押した。美穂はそれ以止めなかった。「決めるのはお母さんですから」とだけ言い、また子へ戻った。真弓は勝ち誇ったように「商売は机のだけじゃ分からないの」と言ったが、美穂は目を閉じたままだった。

その晩から、のかりはほとんど消えなかった。文子と健はほどしか眠らず、真弓は級箱を組みて続けた。指定の包装がりず、似たで代用したため、催事会社からは値げを求められた。配送用のも追加で借り、も当だけ雇った。おまけの費用まで積みがったが、それでも真弓は入額を見て「ほら、商売ってこういうことよ」と笑った。

夜、健が領収を並べて計算を始めた。材料費、包装費、のレンタル代、臨の件費、値げ分、おまけ代。何度計算しても同じ数字がた。真弓は「そんなはずない」と自分のスマートフォンの卓まで使い、文子は帳簿の売欄を指でなぞった。

百万円以売ったはずなのに、には万円の赤字が残っていた。

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