みかん小説
本棚

"昼寝ばかりの嫁が、潰れかけの餅屋を救うまで" 第3話

売れば売るほど減る

健は計算の画面を見たままけなかった。真弓は「何か入れ違えたんじゃない?」と言って自分で数字を打ち直したが、結果は変わらない。文子は帳簿をき、入額と領収を何度も見比べた。「こんなに売ったのに、どうしておがないの」。声はっているというより、信じてきたものに裏切られたの声だった。

その、の隅で膝掛けがいた。美穂はゆっくり体を起こし、机へ来ると、百箱の契約を央へ置いた。その横に、包装資材、、臨員、値げ、景品に関する領収を種類ごとに並べる。「終わった注文は戻せません。でも、同じ仕組みをもう度繰り返すことは止められます」。昼のぼんやりした声とは違い、言葉には迷いがなかった。

美穂は箱当たりの数字を示した。級包装だけで販売価格のかなりの割を使い、無料配送は注文量が増えるほど両費を増やす。返品能という条件は、売れ残りの危険を側へ移している。さらに指定と異なる包装を理由に値げされ、おまけまで負担だった。「全部わせると、箱売るたびに約千百円ずつのおが減っています。百箱なら約万円です」

健はそので計算を叩いた。数字が致した。真弓は唇を噛み、「回当たったくらいで、全部分かったみたいに言わないで」

広告

と顔を背けた。美穂は責めなかった。「私が言いたいのは、売がきいことと、おが残ることは別だということだけです」。そう言って、文子の古い帳簿を冊持ち、階へがった。

翌、美穂は帳簿を抱えてへりると、壁に並ぶ種類の札のにった。分の販売数、材料費、仕込み、売れ残り数をつずつ確認し、札をし始める。つ、つ、つ。つ目をしたところで真弓が腕をつかんだ。「何してるの。これ全部、お母さんが何も作ってきた商品よ」

美穂は帳簿をいた。「だからこそ見ています。この種類は、作るほどおが減っています」。真弓は数字のさに目を滑らせた。文子は空いていく壁を見て顔をこわばらせる。「あの彩り餅は、健たちののたびに作った。こっちはお父さんが好きだった。客にもう度作ってと言われるたび、名を増やしてきたの」。分の記憶を枚ずつ剥がされるようだった。

美穂はした札を捨てなかった。古い「彩り餅」の札を文子のに戻す。「を消すわけじゃありません。売り物として常に作るのをやめるだけです。今は種類を全部作るために、お母さんが午から働いて、その半分くが夜に残っています。残った餅は捨てられても、米代も豆代も、お母さんのも戻りません」

広告

文子は何か言い返そうとしたが、美穂は帳簿の別のページをいた。売れ残りだけではない。種類を作るため、材料を量ずつ別々に仕入れるため単価がくなり、具の洗浄や段取り替えにもがかかっていた。朝から働くがあるのに、件費を自分たちの労働として計していないため、帳簿のだけでは「利益があるように見える商品」まであった。

「お母さんたちが無でく働くことを提にして、やっと黒字に見える商品があります。もしのを雇って同じを働いてもらったら、その点で赤字です」

文子は初めて、数字ではなく自分のを見た。指の節は太くなり、でも仕事でひび割れていた。自分のに値段を付けたことなどなかった。

最終に残したのは種類だった。よもぎ豆餅、豆福、餅、黒ごま餅、きなこ餅、祝い餅。さらに美穂はしいを貼った。「無料配達はやめます。掛け売りは原則やめます。まとまった注文は予約を半分いただきます」

文子は震える声で言った。「餅をまともに作ったこともないあなたが、私のを作り替えるの?」

美穂は壁の計を見た。「だけ、数字で判断してください」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: