みかん小説
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"昼寝ばかりの嫁が、潰れかけの餅屋を救うまで" 第7話

のにできた列

ガラス戸の鈴が、何度も鳴った。先の女性は「朝、画を見ました」と言い、よもぎ豆餅を箱求めた。そのろの客も、同じ画をスマートフォンで見せた。の話まで鳴り始め、真弓が反射に受話器を取る。「はい、餅です。……よもぎ豆餅の予約ですか?」。話を切った直、また次の話が鳴った。

文子はショーケースのにち尽くしていた。朝から売れなかったよもぎ豆餅が、分もしないうちに次々なくなる。美穂は自分のスマートフォンを机へ置き、朝投稿した画を再した。そこには借の話も、閉危もない。だから助けてほしいという言葉もない。ただ、午の暗い作業と、蒸籠からがる湯気、よもぎを扱う文子のだけが映っていた。

画面のにはコメントが増えていた。《祖母のをいした》《こんな餅がまだ残っているんですね》《派じゃないのに、べてみたくなる》《が覚えているって、こういうことかもしれない》。真弓は画を最初から見直し、「これだけで、みんな来たの?」と呟いた。

「が悪くて売れなかったんじゃないんです」

美穂はの列を見た。「ここに、このがあることを、誰もらなかったんです」

客のくは、豪華な箱を求めていなかった。画で見たが作った餅を、そのままの箱で持ち帰りたがった。

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真弓が「贈答用なら引を付けますか」と聞いても、「このままでいいです」と答えるがい。文子が「見栄えが悪い」とっていた無の箱を、客はむしろ素朴でいいと言った。売る側が価値だとっていたものと、買う側が欲しかったものが、ずれていたのである。

もしないうちに、そのの分は売り切れた。予約も週先まで埋まり、真弓は興奮して「もっと作ろう。今なら全部売れる」と言った。ところが美穂は首を横に振った。「今作れる分までです。これ以は来週へ回してください」。真弓は話を指差した。「こんなに注文が来てるのよ。全部おじゃない」

美穂は作業を見た。文子は汗を拭きながら腰を伸ばし、ほんの瞬だけ作業台へをついた。「欲張ったらと同じになります。百万円売って、万円損したでしょう。それに、売れれば売れるほどお母さんが働かなきゃいけない仕組みなら、最初に壊れるのはじゃなくて、お母さんです」

真弓も作業を見た。文子の背は、朝よりさく見えた。真弓はしばらく黙り、予約票のへい線を引いた。次の話を取る。「申し訳ありません。今の分は終わりました。次は来週曜から予約を受けます」。同じ言葉を何度も繰り返すうち、真弓の声は落ち着いていった。

午、最の客が帰ると、文子は空になったショーケースを見つめた。

端に箱だけ残っている。売り物ではなく、族でを確かめるための箱だった。包装には、文子自のきの言葉が印刷されていた。《毎、私たち族が先にべてから、おに並べています。》

美穂はを変えなかった。派な箱も作らなかった。文子がかけて積みげたもののから、誰にも見えていなかった価値だけをへ向けたのだ。文子は包装の文字を指でなぞり、「こんな字、誰が見るんだとってた」と呟いた。美穂は「見てくれるに届けば、それで分です」と答えた。

だが、のに列ができたことと、千万円を用できることは別の話だった。伊藤が静かに言った。「ここからが、本当に必なおの話ですね」

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