みかん小説
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"昼寝ばかりの嫁が、潰れかけの餅屋を救うまで" 第9話

優しさで消えていた百万円

餅には、の付きいで払いを認めていた取引先が何軒もあった。町内会、料理、仕し、さな旅館、域の催事を扱う会社。文子は相が「今は苦しい」と言えば待ち、「来まとめて払う」と言えばまた待った。帳簿の隅には、か、半、と入されないまま残っている額が積みがっていた。

「これは、もうもらえないおだよ」。文子はそう言ったが、美穂は首を横に振った。「全部ではありません」。取引先の名の横には、丸、角、ばつの印が付けられていた。ばつは閉や事業止で、すぐ回収するのが難しいところ。角は連絡がつくが資繰りが厳しいところ。そして丸は、今も営業していて、最も注文や支払い実績があるところだった。

「丸が付いている件だけで、約百万円あります」

健が帳簿を覗き込んだ。「じゃあ、なんで今まで払ってもらってないんだ」。文子が目をそらす。美穂が代わりに答えた。「お母さんが待ってあげたんです。の付きいだから、今だけ苦しいから、来なら払えるから。そう言われるたびに」

文子はエプロンの裾を折り曲げた。「商売してたら、そういうこともある」。美穂は責めなかった。「あります。でも今は、お母さんのの方が先になくなりそうです」。その言で、文子のが止まった。

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美穂は件すべてへ連絡し、現の営業状況と支払いを確認していた。件からは今に計百万円を入れると返事があり、残りも括または分割で支払う方向で話がんでいる。「約束だけにしません。額を確認して、最初の入と分割なら回数を面にします」。伊藤も「相が債務額を認め、支払い予定を文にすれば、側も回収予定資として見やすくなる」と答えた。

文子は、売掛先のつである古い仕しの名を見て、「あそこは奥さんが病気で変だったんだよ」と言った。美穂は「事があるなら分割でいいんです」と返す。「問題は、払える額を決めないまま、ずっと待つことです」。相を追い詰める必はない。それでも、自分のを守る線引きは必だった。

「でも、お母さんが話したらだめです」

文子の眉がいた。「どうして」

「また待ってあげるからです」

林がわず線を落とした。健も真弓も何も言えなかった。文子の優しさが悪かったわけではない。けれど、誰かを待つたびにの現は減り、文子自の活が苦しくなっていった。助けた相のには、その優しさを当たりにしてしまったもいた。

美穂は健と真弓へ役割を分けた。健は倉庫の理と保証返還の類確認、真弓は取引先ごとの入と連絡記録、美穂はへ見せる資繰り表を作る。

文子には、今作れる分の餅だけを作ってもらう。

文子は満そうに「私は帳簿からされるのかい」と言った。美穂は答えた。「すんじゃありません。お母さんにしかできない仕事だけを残すんです」。文子はその言葉を聞き、よもぎを練る自分のを見た。数字を追うことまで全部抱えるより、を守ることに集する。それを「役目を減らされる」とじるか、「本当に必な役目を残される」とじるかで、見える景が変わる。

それは、文子が初めて聞く形の「主」だった。

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