みかん小説
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"昼寝ばかりの嫁が、潰れかけの餅屋を救うまで" 第11話

壁に貼られていたメモ

美穂の部のドアはしいていた。文子が指で押すと、机の横の壁が見えた。そこには、付順に何枚ものメモが貼られている。《売れば売るほど損が増える仕組み》《種類のうち、本当に利益がるのは種類》《は変えない。見つけてもらう方法だけ変える》。それだけなら、の再建計画だと分かる。

だが、そのには別のが続いていた。《文子さんがに作れる量》《膝が痛いは割減らす》《午までに閉する》《午に起きるのをやめる》《午から仕込み》《よもぎ豆餅の作り方は絶対に変えない》。文子は枚ずつ目を追い、最ののでを止めた。

《お母さんの餅を変えない。く残る方法だけ変える。》

文子はその文を指でなぞった。自分でも気づかないうちに、膝の痛みやち続けられるまで、美穂は見ていた。文子は、を救うとは売を戻すことだとっていた。美穂にとっては、文子が倒れずにを続けられることまで含めて「再建」だった。

机のには、もっと細かな記録があった。文子が腰へを当てる回数、午になると作業速度が落ちる、餅の来が番定する仕込み量。美穂はを数字に変えることを嫌って会社を辞めたのに、今度は数字をを守るために使っていた。文子はそれを見て、胸の奥がくなった。

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階段からスリッパの音がして、美穂が戻ってきた。部の入で文子を見つけると、ち止まる。文子は壁からをせなかった。「私は、あなたがこのに何の興もないとってた」。美穂は静かに答えた。「興がなかったわけじゃありません」

「じゃあ、どうして最初から言わなかったの」

「お母さんが、私の話を聞けるまで待っていました」

文子の目が番のメモへ向いた。「最初から種類を減らせって言われたら、私はどうしてたとう?」。美穂はし考え、「たぶん、私をから追いしていたといます」と言った。文子はしばらく美穂を見て、やがてさく頷いた。「追いしてたね」

のに、初めて敵のない沈黙が流れた。文子は最のメモをもう度見た。「これからは、あなたの話を先に聞くことにする」。美穂はしだけ笑った。「掛け売りをやめるだけでも半分成功です」

「それは、もうし考える」

「じゃあ、まだ半分にはいですね」

文子はを鳴らし、部をていった。美穂がベッドへ向かうと、そこにつの旅鞄が置かれていた。、真弓が「どうせにはをる」とのへした、美穂の古い鞄だった。の付いていた輪は拭かれ、半分いていたファスナーも閉まっている。持ちのには、の鍵が置かれていた。

文子は「悪かった」

とは言わなかった。美穂も、謝罪を求めなかった。ただ鍵を掌へ載せると、属がし温かくじられた。に嫁いできてから、初めて「このにいていい」と言われたような気がした。それでも美穂はげさに泣いたり、文子へ抱きついたりしない。鍵を机の引きしへ入れ、いつものように膝掛けを畳んだ。

文子は部をる、机のに置かれた鉛のさにも気づいた。美穂は何もしていなかったわけではない。に見えないところで何度も数字をき、消し、考え直していたのだ。働いている姿だけを仕事だとい込んでいた自分には、その静かな作業がずっと見えていなかった。

それが、ので交わされた最初の解だった。

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