みかん小説
本棚

"昼寝ばかりの嫁が、潰れかけの餅屋を救うまで" 第12話

真弓がつだけ残した箱

翌朝から、しい作業表がの壁に貼られた。文子は種類のとの産量を決める。健は仕込みの順番と配達、倉庫理。真弓は予約と包装、客への案内。美穂は週回だけ帳簿と利益を確認する。美穂の名は主の位置にはなく、文子の名が番に残されていた。

真弓は作業表を見て「あなた、週回だけ?」と聞いた。「分です」と美穂が答える。「じゃあのは?」「寝ます」。真弓はわず笑いそうになり、すぐ元を隠した。以なら苛った言葉なのに、今はし違って聞こえる。

その午、健と真弓は郊の倉庫へ向かった。扉をけると、古いと埃の匂いが流れす。棚には、昔の注文で余ったの箱や引が積まれ、名まで印刷された化粧箱が百個く残っていた。真弓は箱をつ持ちげ、の模様を指でなぞる。

「私、包装が派なら、餅までそうに見えるとってた」

健は黙って聞いた。

「でも、見せたかったのが餅だったのか、自分だったのか、分からなくなった」

真弓は、級箱を導入したのことをいしていた。商のがしい包装へ変えたのを見て、「うちも負けられない」と文子を説得したのは自分だった。実際には客単価がきくがったわけでもないのに、の箱を並べるとが派になった気がしていた。

広告

百箱の注文で指定をし値げされたも、箱の見栄えを守ることばかり考え、利益が残るかを見ていなかった。

そこへ美穂が空箱を持って現れた。真弓はし構え、「笑いに来たの?」と聞く。美穂は首を横に振り、箱を仕分け始めた。「昨の予約票、お姉さん、客の名と好みをほとんど覚えていましたよね」。真弓は「馴染みの客だから」と答える。

「私にはできません。誰がきなこ餅を好きか、どのがお盆に祝い餅を買うか、分からない。だから予約と案内は、お姉さんが番うまいといます」

真弓のが止まった。美穂は続ける。「際もいいです」。それ以の褒め言葉はなかった。それなのに、真弓はなぜか返事に困り、「もういいからをかして」と言って作業へ戻った。

美穂が数字の得な自分を偉く見せず、真弓にしかできないことを認めたことで、真弓のに残っていた対抗がしほどけた。自分は役にっていないとわれるのが怖くて、美穂を先に「役たず」と決めつけていたのかもしれない。そのことを言葉にする勇気はまだなかった。

廃棄する箱をまとめる、真弓はの化粧箱をつだけ棚の番へ戻した。「これは残す」。健が「なんで」と聞くと、「自分が何を違って見てたか、忘れないため」と答えた。

へ戻る頃には、真弓の美穂への態度がし変わっていた。

すぐには謝らないし、昼寝を見れば今でも呆れる。それでも、もう「何の役にもたない嫁」とは言わなくなった。

倉庫をる、真弓は棚ののの箱を度だけ振り返った。い包装そのものが悪いわけではない。ただ、誰のために、何を伝えるために使うのかを考えず、「派に見えるから」という理由だけで増やしたことが問題だった。真弓はへ戻ったら、無の箱に貼るさな予約シールをもっと見やすくしようと、自分から美穂へ相談するつもりになっていた。

そして真弓は、そのの予約話で初めて自分から言った。「本の分は終わりました。無理に増やさず、次回の予約でお願いします」。の彼女なら、絶対ににしなかった言葉だった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: