みかん小説
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"正月に八人で来る嫁へ、家は売りました" 第4話

増殖する客と、消えた産

なぜ、あのきっぱりと断らなかったのか。 今振り返れば、自分自ののさと、染みついた「庭を守る主婦」としての呪縛が原因だったとう。 の面倒な交渉や決断はすべて夫が引き受け、のの細々とした苦労は私が黙ってみ込む。それが私たちの夫婦の形だった。 夫をくした直の私にとって、「正に誰もこのに帰ってこなくなること」は、夫が紡いできた歴史を私の代で断絶させてしまうような、耐え難い恐怖だったのだ。 直に苦言を呈したところで、返ってくる言葉は目に見えていた。 『母さんがすれば丸く収まるんだから、いいじゃん。お正くらいさ』 息子は昔から、自分がをかぶらず、誰かが苦労を引き受けてくれる側に当たりのように座るだった。 そして彩佳さんは、その息子の無関の隙に、実にしたたかに居座るだった。

の夜、私は夫の『正帳』を本棚から取りした。 夫の几帳面な文字が回分並んだの、真っなしい見きページ。 そこに、震えるで初めて私の文字を刻んだ。 『来た:直、彩佳さん、リク、真央。買いし:万千円。お遣い:リクと真央に万円ずつ』 そして、『頂いたもの』の欄にペン先を置いた、が止まった。

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過分のページをめくれば、親戚の銘菓、所のが届けてくれた干し柿、婚当初の彩佳さんが持参した座の焼き菓子など、必ず何かしらの記載があった。 だが、今の欄にくべきものは、何つしなかった。 私は唇を噛み締め、そこに『なし』とだけいた。 最の言の欄は、どうしても言葉が見つからず、空のままノートを閉じた。

悪は、翌の暮れにさらに加速した。 令の、彩佳さんから再び話が入った。 『お母さん、今もきまーす。あ、それと妹の族もくまで来るんで、寄らせますね!』 相談ではなく、決定事項の通告。 元の午、がの狭い玄関に、靴が気に増えた。 彩佳さんの歳の妹・美(みさ)さん、その夫の野健(けんじ)さん、学の男・湊(みなと)君、歳の女・杏(あん)ちゃん。

「すみません、急にお邪魔してしまって……すぐに失礼しますので」 妹の夫である健さんは、玄関で恐縮したように々とをげる、数のない真面目そうな男性だった。 しかし、「すぐ失礼する」と言ったはずのは、夕の寿司桶がテーブルに並ぶまで、居のこたつから歩もかなかった。 美さんはスマホで画を見せる子供たちの横で、彩佳さんと緒にお茶をみながら世話にを咲かせている。

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私は台所で追加の雑煮を作り、煮物を温め直し、さな子供たちのためにたいジュースを買いに所の自販売まで坂をって往復した。

『お母さーん、お寿司りないんで、もう桶取ってもらえます? うちの子たち、イクラとサーモンしかべないんでー』 注文の話をかけ、玄関で届いた寿司の代を財布から万円札をして支払ったのも、すべて私だった。 孫のリクと真央にお玉を渡す際、妹の子供である湊君と杏ちゃんが、羨ましそうにじっと私の元を見つめていた。子供の目ので差別をするような真似は、私には到底できなかった。 私は奥の仏へき、急いで予備のポチ袋に千円札を枚入れ、のさなに握らせた。 健さんは「そんな、滅相もありません! 頂けません!」と青くなって辞退しようとしたが、彩佳さんが横から『いいのいいの、お母さんのお気持ちなんだから!』と引に奪い取った。

そのの正帳には、こう記した。 『買いし:万千円。お玉:万円。頂いたもの:なし』 言の欄は、やはり埋めることができなかった。

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