みかん小説
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"正月に八人で来る嫁へ、家は売りました" 第10話

契約成と、完全なる沈黙

の半ば、がは正式に売りにされた。 そして、最初の週末の内覧で、運命な会いがあった。 訪れたのは、代半ばの穏やかなご夫婦と、歳と歳のらしい兄妹の族――塚誠(いしづか・まこと)さんごだった。 庭にた歳の女の子が、折れた枝の当てをされた柿のを見げ、「ママ! 柿の実がいっぱいってる!」と目を輝かせた。 「この柿の、毎実をつけるんですか?」と尋ねるご主に、私は笑顔で答えた。 「ええ、くなった夫が植えたです。今はし枝を落としましたが、甘くて美しい実がなりますよ」 奥様は、台所ののすり減った部分を見て、「ここで、ご族のためにたくさん美しいお料理を作ってこられたんですね」と、慈しむように微笑んでくれた。 このご族になら、夫と守ってきたこのを、して託すことができる。私はそので売却を決した。

、売買契約が締結された。 売却価格は千百万円。引き渡しは。 同、私は駅の階建てマンションを千百万円で購入する契約も結んだ。 引っ越しは、の曜に決定した。

翌の、曜の昼がり。 息子の直が、男リクの学学に備え、自分が子供の頃に使っていた学習机を引き取るために、で軽トラックに乗ってやってきた。

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机を荷台に積み終え、居のソファでスマホのゲームにする息子のに、私は湯呑みを置いた。

「直。事な話があるの」 「んー? 何?」直は画面から目をさず、を鳴らした。 「この、内に売ることにしたわ。に、駅のマンションへ引っ越すのよ」

直の指が、画面のでピクッと止まった。 「へえー、そうなんだ」 だが、それだけだった。 顔をげることすらなく、相槌を打つ声は、テレビの気予報を聞き流すのと何ら変わらなかった。 「しい所、でLINEで送っておくからね。彩佳さんにも、ちゃんと伝えておいてちょうだい。私からは直接言わないから」 「うん、分かった分かったー」 直はスマホの画面を見つめたまま、へらへらと笑っていた。 「机、ありがとなー。リクがぶわ」 荷台の机をポンと叩き、息子は軽トラックをらせてっていった。 母親が暮らしたを売り、でどこかへ引っ越すというな告に対し、息子がにしたのは机の礼だけだった。

その夜、私は直のLINEに、確な文字を打ち込んで送信した。 『内にを売却することにしました。に駅のマンションへ引っ越します。しい所は以の通りです』 詳細な所と部番号を添えて送信すると、数分に画面には『既読』の文字がついた。

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しかし――返信のメッセージは、翌も、その次のも、通たりとも届かなかった。

、私は予定通り引っ越しを完させた。 客用の敷布団組も、の皿も、寿司桶も、すべて用品回収業者に引き取ってもらった。 居は、階の向き。当たりが良く、駅まで平坦なを歩いて分。 階段をりりする必も、広すぎる廊を拭き掃除する必もない。 「なんて、体が軽くて楽なのかしら……」 さな湯舟に浸かりながら、私はわず涙をこぼした。

、の応接での引き渡し続きが完し、塚さんごに鍵を渡した。 塚さんは「入居に、防犯のために玄関の鍵シリンダーを最のものに交換しますね」とおっしゃっていた。

そして――運命の晦がやってきた。 居の台所で越しそばの準備をしていた午、あの話が鳴り響いたのだ。 『正は族で泊まりにきますw ご飯もお玉も用しといてくださいねw』

私の忠告をすべて無し、私の言葉を遮り、勝にの移を決定した彩佳さん。 話を切った、私は静かにスマホを置いた。 「ええ、どうぞいらっしゃい。……あのが、もう誰のものになっているか、その目で確かめるといいわ」

元の正午。 寒吹き荒れるあの旧宅の玄関で、自分たちの傲の報いを受けることになるの姿をい浮かべながら、私は、温かいほうじ茶をゆっくりとみ干したのだった。

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