みかん小説
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"正月に八人で来る嫁へ、家は売りました" 第12話

涛の着信と、湯がりの静寂

「嘘……でしょ……?」 美さんが両で元を覆い、ずさりした。 健さんは抱えていた酒の段ボール箱をドンと面にろし、険しい顔で固まっている。 子供たちは状況がみ込めず、たいので体を震わせ始めていた。 「パパ、寒い……」「おばあちゃん、どこにいるの……?」 「お母さん……どういうことなのよ……!?」 彩佳さんは狂乱したようにバッグを漁り、スマートフォンを引っ張りすと、私の番号を連打し始めた。

その頃、駅のしいマンションにいた私は、ちょうど湯がりの穏やかなを過ごしていた。 階の向きのリビングには、の優しいが満ち、窓のからはの乾いた青空が広がっている。 初詣でえた体をさな湯舟で温め、髪にタオルを巻いてリビングに戻った、テーブルので液晶画面が激しく滅を繰り返しているのに気づいた。

画面を覗き込み、私は静かに目を見張った。 着信履歴、件。 『男嫁・彩佳』から件。『息子・直』から件。 最初の着信は分。そこから数分のに、分おきの狂気のようなペースでかけ直されていた。

「……着いたのね」 胸の悸は、驚くほど静かだった。 パニックも、罪悪も湧かない。 私はコップ杯のをゆっくりとみ干し、本棚に並べられた紺の『正帳』に度だけ線を落とした。

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私は逃げたのではない。言わなければならないことは、すべて筋を通して伝えてきたのだ。

ので刻みに震えるスマートフォン。画面に再び『彩佳』の文字が浮かびがった。 午分。私は呼吸をつ落とし、通話ボタンをスワイプした。 「もしもし、頼子です」

『お母さんッ!! 体どうなってるんですかッ!?』 膜を突き破らんばかりの絶叫が炸裂した。 『に見らぬ男がんでるんですけど! 鍵も入らないし! これ、何の冗談なんですか!?』

「冗談ではありませんよ」 私は努めてく、静な声で返した。 「あのは売却しましたから」

『はあぁぁ!? 売却ぅ!? どうしてそんなこと黙ってたんですか!? なんで言ってくれなかったんですか!!』 ヒステリックに裏返る嫁の声。私は淡々と事実を並べた。

「直にはに直接、で伝えましたよ。机を取りに来たにね。あなたにも伝えるようにを押しました。……そして昨の午、あなたから話があったも、私、回言おうとしましたよね? そのたびに私の言葉を遮って、方に話を切ったのはあなたでしょう」

『だ、だからって……! わざと黙ってたんでしょ! 私に恥をかかせるために!』

「わざとなら、直にしいマンションの所をLINEで送りません。……直に話を代わりなさい」

受話器の向こうで荒い息遣いと、話を取りうような擦れの音が響いた。

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続いて聞こえてきたのは、けないほど震える息子の声だった。 『か、母さん……本当なのかよ……? 、本当に売っちまったのか……?』

「本当よ、直。あなた、に私の話を聞いていたでしょう? に駅のマンションへ引っ越すって、LINEも送ったわ。既読がついていたわよ」

話の向こうが、ピタリと静まり返った。 から聞いた話では、直はそので震える指で私のトーク履歴をいたのだという。 そこには、に送信された『内にを売却します。しい所は以の通りです』というメッセージと、晦の夕方に送られた『私はもう引っ越しています』という未読のメッセージが、酷な現実として残されていたのだ。

『ほ……本当だ……』 歳のの男から漏れたのは、歳の孫よりもけない、か細い呟きだった。

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