みかん小説
本棚

"正月に八人で来る嫁へ、家は売りました" 第20話

さな部のきな自由

季節は巡り、がまったのある。 私の元に、さな段ボール箱が届いた。 差は、旧宅を買い取ってくれた塚誠さんごだった。

箱をけると、籾殻のに丁寧に詰められた、見事なの柿の実が個ほど入っていた。 添えられていたには、こうあった。 『川様。今も、お庭の柿のがたくさんの甘い実をつけてくれました。女が「のばあちゃんにお届けするんだ」と、張り切って収穫のお伝いをしてくれました。どうぞ、ご主様と共にお召しがりください』

私は柿の実をつに取り、掌で優しく撫でた。 つやつやと輝くその実は、かつて夫が丹精込めて育てていた頃と、まったく同じ甘いりを放っていた。 包丁で皮を剥き、切れを仏壇の皿に乗せて供える。 「お父さん。今も、あそこの柿が届いたわよ。……優しいご族が、切に育ててくれているわ」 遺ののさんは、満そうに目を細めて笑っていた。

仏壇の横の本棚には、あの紺の布張りの『正帳』が、静かに並んでいる。 夫が、そして私が半をき記した、がの魂の記録。 今の暮れには、しいページがかれるだろう。 そこには、きっとこう記されるはずだ。 『来た:リク、真央、直。午より。献:持ち寄りの惣菜と、お雑煮。

広告

頂いたもの:リクの。言:とても穏やかで、楽しいだった』

暮らした、あの広い軒を放したことに、悔は片もない。 夫が守りたかったのは、建物の坪数や、見栄のための広い座敷などではなかったのだ。 族が本当にを通わせ、温かな灯を囲むことのできる「暮らしの質」そのものだったのだ。 それならば、この部のさなマンションで、何つはない。

朝起きるも、夜眠るも、夕の献も、誰と会うかも、すべて私が自分で決めている。 のための犠牲としてきてきた半を脱ぎ捨て、私は今、自らの志で、自らのでっている。 をさく放したことで、私のの自由は、青空のようにどこまでも広く、どこまでもく広がっていったのだ。

の空が、美しい茜の夕焼けに染まっていく。 私は温かいお茶をすすりながら、づく並みを窓から見つめ、静かに、そして誇らしく微笑んだ。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: