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"大正11年、幕開けの土下座から始まった女優の再起" 第4話

破れた約束

そのの夕方、黒川が見つかった。港のれの貸し倉庫で、荷物をまとめていたのである。見つけたのは惣太だった。煙を買いにた帰り、黒川が荷へ鞄を積む姿を偶然見かけ、って旅館へらせた。宗と志乃が駆けつけると、黒川は逃げずにを待った。ところがその顔には殴られた跡ではなく、寝ていない者特の黒い隈があった。

「はどこだ」と宗が詰め寄る。黒川は胸元から契約をした。「がないわけじゃない。弥が握っているんだ」。座の演料は、福栄座の売り収入と当収入のから支払われる取り決めになっていた。ただし劇使用料と宣伝代を先に差し引く。志乃がを読むと、余に『旧債務精算まで残保留』という文句がきされ、相良の印が押してある。黒川はそれを指さして言った。「昔の借を、この興の売げから取ると言いした」

宗は目を見張った。「座には関係のない借だろう」。黒川は線をそらした。「そのつもりだった」。黒川は、別の興で相良からを借りていた。芝居の改修に支払った職代の部をて替えてもらったのだという。借用の付は残っているが、元と利息の勘定について両者の言い分が違う。相良は今回の興を始めるからその返済を求めていた。

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「それをっていて、俺たちを連れてきたのか」。宗の声が震えた。黒川は答えた。「最初のが満員なら払えるとった。福栄座の客入りは確かだったから」。志乃はわず言った。「あなたは私たちのを、当たるかれるかの芝居の賭けにしたんですね」。黒川は反論しなかった。何度も方を回して座の仕事をつないだ男だったが、この町では自分の借を取り返すために役者の収入を使ってしまったのだ。

黒川は続けた。「弥はの夜、港の商会の余興を入れるつもりだ。今夜に座から止の届をさせれば、あいつには都がいい」。宗は契約を取りげた。「それなら俺たちで興をやる」。黒川は笑いもしなかった。「を借りるはどうする。町で番付を刷るりいはいるか。売りを返す算段は?」。宗が黙ると、志乃が言った。「つずつ探します。今のままでは、何も始まりません」

旅館でいた座の相談は夜半まで続いた。やめて帰郷したい者、次の町へ移りたい者、相良へをげてでも装を返してもらいたい者。伊之助は畳を指で叩き、「役者に勘定をさせたら芝居は終わりだ」と言った。志乃は彼を見た。「勘定を見なかったから、今ここにいるんでしょう」。伊之助は苦い顔をしたが、言い返さなかった。

最に宗は決めた。

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朝、劇主に向いて装と具の返還を求める。そので町の印刷所と別の会を探す。の興を取り戻すことはできなくとも、度は客ので芝居をやり直す。そう決めた、旅館の女将お鶴が襖をけた。「お客さんです」。そこには相良の番がっていた。差しされた封筒には『朝座御同』と達でかれていた。

黒川を問い詰めた、宗はひとりで港を歩いた。黒川とは以の付きいがあり、のる町で客がしか来ない興も、の祭りでが満員になった夜も緒だった。だから信用した。信用という言葉に甘えて、預けたを何度も確かめなかった。宗はそのことを役者にどう言えばよいか考えた。失敗を認めれば座の威厳はなくなるだろうか。だが威厳のために黙っていれば、今夜と同じことが別の町でも起こる。元へ打ち寄せるを見ながら、宗は初めて自分の帳面を役者たちのにそうと決めた。

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