"4億円の私の家を義弟に譲る義母――夫の一言で凍りついた古希祝い" 第6話
百万円の方
夜をし過ぎた頃、孝志が帰宅した。義母は午から度も帰らず、リビングのソファに座ったまま息子を待っていた。昼の勢いはれ、膝ので組んだだけが落ち着きなくいている。
事を聞いた孝志は、私が用していた古い通帳をに取った。
「母さん。父さんが根の修理代をした話だよな」
「そうよ。百万円もしたのよ。だったら、あのに私たちの権利があって当然でしょう」
「最まで聞いてくれ」
孝志はページをき、つの記録を指した。
事からか、私の座から義父の座へ百万円が送されている。摘欄には「根修繕替返済」と残っていた。
義母は通帳を奪うようににし、何度も付と数字を見比べた。
「らない……こんなの聞いてない」
「父さんは母さんに配させたくなくて言わなかったのかもしれない。でもは返してもらってる。俺も当、父さんから聞いた」
「だったら台所は? 庭は? 私だっておを使ってきたわ」
「それは母さんがむために使った費用だろ」
孝志の声は静だった。
「彩は、賃を円も取っていない。固定資産税もきな修繕費も彩が負担してきた。母さんがみやすくするために自分のおを使ったからって、それでの持ち主になるわけじゃない」
広告
義母は何度もをきかけたが、もうしい言葉が見つからなかった。
やがてちがり、乱暴に鞄を掴んだ。
「私があのを取ったみたいな言い方、やめてちょうだい」
「取ったとは言ってません」
私は静かに答えた。
「最初から私のだと言っているだけです」
義母は振り返らなかった。
玄関の扉が閉まった、孝志はく息を吐いた。
「母さん、本当に返のことらなかったのかな」
「分からないわ。って、自分に都のいい部分だけを記憶に残すこともあるから」
それでも、私は引っかかっていた。
義母がただくみ続けたいだけなら、なぜ公平に譲るなどと言いしたのだろう。公平へ所権が移れば、むしろ義母自のは定になる能性がある。
さらに、義母はまで自分が所者ではないことを理解していた。
それなのに、なぜ親族全員ので「公平に譲る」と宣言したのか。
、その答えにつながる話が来た。
画面に表示された名は、公平だった。
「姉さん、今話せますか」
彼の声はひどくかった。
「丈夫です。どうしました?」
「母さんのことで、話しておかなきゃいけないことがあります」
しが空いた。
「兄貴にはまだ言わないで、度俺と会ってもらえませんか」
翌の午、私は駅の古い喫茶へ向かった。公平は番奥の席で、をつけていないコーヒーをに俯いていた。
私が座ると、彼は挨拶より先にくをげた。
「本当にすみません」
「何がですか」
公平は顔をげられないまま言った。
「母さんが、あのを俺にやるって言っていたこと……実は俺、半からってたんです」
古希祝いで青ざめていた男の告は、そこから始まった。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
離婚翌日、父と食事中の私を「また金持ちに寄生か」と笑った元夫の末路
結婚生活のすべてを一円単位で折半しながら、家事だけは妻に押しつけていた夫・亮介。「お前は寄生虫だ」と離婚を突きつけられた綾乃は、静かに別れを受け入れた。 その翌日、実父と高級ホテルで食事をしていると、偶然現れた亮介と不倫相手が「もう次の金持ちを捕まえたのか」と嘲笑する。因果応報|夫婦|真実|金銭問題|修羅場|不倫1.9万字5 2 -
完結第23話
昭和53年、満員の始発を止めた運転手――その後、坂道で起きた悲劇
昭和53年7月30日。沖縄の交通が右側通行から左側通行へ切り替わった朝、55歳のバス運転手・新垣清徳は、32人の乗客を前に始発の発車を拒んだ。用意された旧型バスは、乗降口が車道側に開く危険な車両だったのだ。しかし欠便を恐れる主任は、若い運転手にその車を出すよう命じてしまう。やがて坂下から届いたのは、一人の少年が負傷したという知らせ。なぜ危険だと分かっていたバスが走ったのか。清徳は息子や同僚たちとともに、事故の責任と、誰も気づかなかった道路の危険に向き合っていく。職場逆転|時代|歴史|昭和|裡の顔3.0万字5 0 -
完結第21話
赤ペンで消した夫
四十一歳の黒沢洋子は、出版社で腕を認められるベテラン校正者。編集長として出世した夫・和也を支え、七年間、穏やかな結婚生活を送ってきた。ところがある夜、夫から頼まれた若い女性作家の原稿に、見覚えのある文章を発見する。それは、かつて夫が洋子だけに囁いた愛の言葉だった。疑念を抱いた洋子が調べ始めると、原稿の裏には夫の不倫だけでは済まない重大な秘密が隠されていた。やがて和也は、女性作家との十日間の執筆合宿へ出発する。何も知らず帰宅を楽しみにする夫に、洋子は静かに最後の準備を進めていた。夫婦|真実|修羅場|不倫2.3万字5 2 -
完結第10話
産後七日目の決別
帝王切開からわずか七日。傷の痛みと貧血に苦しむ真帆に、夫の直人は「産んだ人が自分で育てればいい」と冷たく言い放った。生まれたばかりの娘を守るため、真帆は実家へ避難する。ところが直人と義母は、彼女を「産後うつで勝手に家出した妻」に仕立て上げ、親族に嘘を広め始めた。追い詰められた真帆は弁護士に相談し、あの日の暴言が記された助産師の記録を手に入れる。そして、夫の勤務先から届いた一通の回答書が、直人の主張を根底から覆そうとしていた――。夫婦|裡の顔|修羅場|不倫1.9万字5 5 -
完結第12話
大家だった姑の逆転
夫を亡くしてから、息子を育てながら八世帯のアパートを守ってきた私。四十歳の息子が迎えた若い嫁は、「お母さんを支えたい」と同居を望んだ。ところが結婚後、私は台所にも立てず、夕食は寝室で一人。ついには「年金暮らしの無職は邪魔。出て行って」と言い放たれる。嫁が信じていたのは、息子がアパートの大家だという嘘だった。本当の所有者が私だと知っても、息子夫婦は名義を譲るよう要求してくる。私は静かに承諾した。しかし、二人が欲しがったアパートには、まだ知らない重大な問題が隠されていた。親不孝|裡の顔|絶縁|親子関係|退職金|金銭問題1.6万字5 0 -
完結第14話
夫のいない四日間
人気ミステリー作家の安田里美は、無職の夫・博之と七歳の娘を養いながら、仕事も家事も一人でこなしていた。ある深夜、夫のスマートフォンに届いたメッセージから、博之が高校時代からの親友・裕子と不倫していることを知る。しかも二人の豪遊費は、里美の書斎から盗まれたクレジットカードで支払われていた。娘を思って離婚をためらう里美だったが、七歳の美香が口にした言葉で決意を固める。そして夫が裕子と沖縄へ旅立った朝、里美はカード会社と引っ越し業者に電話をかけた。さらに、夫の荷物には思いがけない届け先が指定されていた――。夫婦|親子関係|不倫2.0万字5 59