"義両親をこき使う伯父に、嫁の私が反撃した日" 第20話
夜の話と、義母の凛とした決別の声
その週末、私と健太は再び義父母の実を訪れていた。 庭先では、義父が穏やかな顔で犀の枯れ枝を剪定しており、台所からは義母のとともに、甘辛い煮物の匂いが漂っていた。 「奈央ちゃん、いらっしゃい。今は美しい肉じゃがを作ったのよ」 義母の顔には、まとわりついていたがすっかり消えり、驚くほどるい笑顔が戻っていた。
居の座卓でお茶をいただきながら、穏やかなを過ごしていた午過ぎ。 黒話のけたたましいベルが鳴り響いた。
義母が受話器を取る。 「はい、島でございます」 その直、義母の表がスッと引き締まった。受話器の隙から、キーキーとまくしてる甲い女性の声が漏れ聞こえてくる。美代子叔母さんからだった。
『典子さん! ちょっと聞いてちょうだいよ! 先の法事の件だけどね、私、本当に返済が終わってたなんてらなかったのよ!』 話の美代子叔母さんは、猛烈な勢いで言い訳を並べてていた。 『うちのがずっと「俺があのを養ってやってる」って言うから、てっきりまだお世話になってるのかとってたの! 私だって騙されてた被害者なのよ! それなのに、あんな親戚ので恥をかかされるなんてあんまりじゃない! あなただって、もっとく言ってくれればよかったのに!』
すべてを夫のせいにし、自分は悪くないと主張する浅ましい自己保。
広告
私はわず受話器を奪い取りそうになったが、隣の健太が私のをそっと握って制した。 義母の背を見ろ、と目で語りかけている。
義母は、しも取り乱していなかった。 美代子叔母さんが息継ぎのために言葉を途切らせた瞬、静かに、だが徹な声で告げた。
「美代子さん」
『え……?』
「らなかったのなら、お伺いしますが――らなかったからといって、私にお皿をげさせ、お茶を汲ませ、親戚ので『おの管理もできないダメな嫁』と笑いものにしていい理由になりますか?」
受話器の向こうが、息を呑んで絶句した。
「あなたが私を見し、召使いのように扱ってきたのは、国男さんがどう言っていたかとは関係ありません。あなたご自の志で、私を踏み躙ってきたのです。報をらなかったことと、の尊厳を傷つけて優越に浸っていたことは、全く別の問題です」
『そ……それは……』
「私はもう、あなたたちの顔を伺って笑いをするのは輪際やめます。これからは、ご自分のお茶はご自分で淹れてくださいね。それでは、失礼いたします」
ガチャリ。 義母は相の返事も待たず、静かに、だが確固たるつきで受話器を置いた。 さなプラスチックの衝突音が、居に誇らしげに響き渡った。
「……お義母さん、すごいです」 私がわず拍すると、義母はし照れたように笑い、それから胸にを当ててく息を吐いた。
「ふふ……がし震えちゃったわ。でもね、胸の奥が、すうっと軽くなったわよ」
窓ので剪定鋏をかしていた義父が、縁側から顔を覗かせ、妻に向かって優しく微笑みかけていた。 自らのでち、自らの言葉で理尽を拒絶した義母の姿は、誰よりも気く、美しかった。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
離婚翌日、父と食事中の私を「また金持ちに寄生か」と笑った元夫の末路
結婚生活のすべてを一円単位で折半しながら、家事だけは妻に押しつけていた夫・亮介。「お前は寄生虫だ」と離婚を突きつけられた綾乃は、静かに別れを受け入れた。 その翌日、実父と高級ホテルで食事をしていると、偶然現れた亮介と不倫相手が「もう次の金持ちを捕まえたのか」と嘲笑する。因果応報|夫婦|真実|金銭問題|修羅場|不倫1.9万字5 2 -
完結第12話
大家だった姑の逆転
夫を亡くしてから、息子を育てながら八世帯のアパートを守ってきた私。四十歳の息子が迎えた若い嫁は、「お母さんを支えたい」と同居を望んだ。ところが結婚後、私は台所にも立てず、夕食は寝室で一人。ついには「年金暮らしの無職は邪魔。出て行って」と言い放たれる。嫁が信じていたのは、息子がアパートの大家だという嘘だった。本当の所有者が私だと知っても、息子夫婦は名義を譲るよう要求してくる。私は静かに承諾した。しかし、二人が欲しがったアパートには、まだ知らない重大な問題が隠されていた。親不孝|裡の顔|絶縁|親子関係|退職金|金銭問題1.6万字5 0 -
完結第18話
4億円の私の家を義弟に譲る義母――夫の一言で凍りついた古希祝い
義父母が住む場所を失った十五年前、黒田彩は自分名義の家を無償で貸した。ところが義母・文子の古希祝いで、突然「あの家は次男の公平に譲る」と宣言される。親族が賛同する中、普段は母親に逆らえない夫が立ち上がり、衝撃の事実を告げた。しかし義母は、彩が昔書いた一通の手紙を持ち出して反論。因果応報|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|相続|裡の顔|金銭問題2.0万字5 61 -
完結第22話
空の米びつと一合の嘘
昭和二十三年、大阪の小さな米屋で、女将のフミが配給米を一合ずつ少なく渡しているという噂が広まった。怒った住民たちが店へ押しかけ、米を隠しているはずの台所を調べると、そこにあったのは空っぽの米びつと薄い麦粥だけだった。なぜ客の米を減らしながら、自分の子どもにさえ白いご飯を食べさせられないのか。母の沈黙を不審に思った長男・勇一は、配給帳と運送記録を調べ始める。やがて浮かび上がったのは、途中で姿を消す米袋、受け取っていないのに押された印、そして二年前に亡くなった父の署名だった。時代|歴史|昭和|兄弟姉妹2.8万字5 20 -
完結第10話
亡霊の専属運転手
かつて海外の特殊部隊で「ファントム」と恐れられた神代美央は、戦場を離れ、平穏な人生を求めて大企業の会長専属運転手に応募した。しかし最終面接で待っていたのは、「女に会長を守れるわけがない」と嘲笑する副社長と、十一人の屈強な男たち。美央だけが、彼らのスーツの下に隠された拳銃に気づいていた。やがて現れた鷹司会長は、美央の履歴書を見た途端、激しく震え始める。職場逆転|真実|真相|第二の人生1.5万字5 146 -
完結第20話
消された十六番目の席
六十二歳の高田かず子は、亡き夫と二人で建てた家で、息子夫婦と暮らしていた。家事も生活費も負担し、家の中で自分の居場所を失いながらも、家族のために我慢を重ねてきた。ところが正月、十五人の親戚をもてなした末に、息子から「母さんの席はないから留守番で」と告げられる。嫁には「身内だけで楽しみたい」と笑われ、帰宅後の布団の準備まで押し付けられた。そんなかず子に、老舗寿司屋の大将から一本の電話が入る。因果応報|人生逆転|裡切られた|夫婦|親不孝|親子関係|修羅場2.6万字5 407 -
完結第20話
玄関のピンクのウサギ
六十歳の元教師・田島美香は、息子夫婦を助けるため、三年間にわたり孫の世話をしてきた。久しぶりに夫を驚かせようと自宅へ戻ると、玄関の暗証番号が変わり、見知らぬピンクのスリッパが置かれていた。台所から現れたのは、夫と二年近く暮らしていたという女性。さらに調べるうち、夫婦の貯金から消えた百五十万円、売られていた母の形見、そして自宅をめぐる恐ろしい計画が明らかになる。夫婦|裡の顔|第二の人生|修羅場2.8万字5 273 -
完結第10話
機内で私を叩いた息子の愛人、空港で知った私の正体
新氏グループの会長・玉金は、息子への株式譲渡を決意し、予定を早めて帰国する。ところが機内で、息子の婚約者を名乗る若い女に席を譲れと迫られ、頬を叩かれてしまう。しかも女の腕には、かつて玉金が息子の正妻・寄舟に贈った家宝の翡翠があった。息子に電話をかけても、返ってきたのは母を侮辱する言葉ばかり。怒りを抑えて空港に降り立った玉金を待っていたのは、愛人が用意した警備員たちだった。しかし、そこへ現れた寄舟の一言が事態を一変させる。裡切られた|嫁姑|第二の人生|親子関係|修羅場1.4万字5 258