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"昭和53年、満員の始発を止めた運転手――その後、坂道で起きた悲劇" 第22話

分の約束

がづいたある朝、丘線の始発に清徳は庫へ入った。計はまだ半を指していた。運転の仕事には慣れているはずなのに、最は勤するたびに最初のをいす。発しなかったバス、る客、握りつぶされそうになった連絡のメモ。そして坂に落ちていた、赤い糸のついたさな靴。

庫の角では、使用できなくなった号がかぬまま置かれていた。側の扉は閉じ、古い線名がく残っている。備員がこのの扱いについて会社と話しっていると聞いた。清徳は度も『懐かしいだから残してほしい』とは言わなかった。には世話になったいがある。だがいだけで、危険を抱えたを客のへ戻す理由にはならない。

今の担当は、側の乗を備えた型だった。方向指示器は正常で、扉は滑らかに閉する。清徳は庫の確認をつずつめ、気になる箇所があれば備員へ聞いた。昔なら自分で見て済ませたところも、で確かめる。全確認のための数分を『余計な』と呼ぶ者は、以よりなくなっていた。

苗が事務所からてきた。には更した運案内がある。「丘丁目のしい乗所、案内の文字をもうしきくしました」。清徳が受け取ると、苗は付け加えた。

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「今朝、比嘉さんのところから話がありました。浩君が学の帰りにバスを見に来るそうです」。清徳は瞬、言葉を失った。「乗るのかい」。苗は首を振った。「まだ決めていないそうです。ただ、見たいって」。

になると、乗客が、またと集まってきた。朝の仕事へ向かう女性、荷物を抱えた男性、顔なじみの老。にはに清徳へったもいる。今は皆、何事もなかったように切符を用していた。何事もなかったわけではない。それでも活は、いつまでもの来事だけに止まっていられないのだ。

発分、が内へ顔をした。「無理するなよ」。清徳は苦笑した。「はくせと言っていたのに」。も笑った。「どちらも言いすぎたな」。はく言葉を交わし、運表を確認した。会社にはまだ直さなければならないことがある。欠便で便をかけた客もおり、事故への対応も終わっていない。それでも今の分については、確認すべきことを確認して発できる。

分。清徳は内を見渡し、乗客が座ったことを確かめた。扉を閉め、周囲の全を確認してから、バスをゆっくりかした。しい側線へ入る、ハンドルを握るにはまだ慎さが残っている。それは悪いことではなかった。々のは慣れれば消える危険だけでできているわけではない。

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丘丁目へづくと、歩の向こうにのがっていた。片をかばうようにして、父親のを握っている。浩だった。はづいてくるバスを見げ、体の側にあるきな扉を確かめた。清徳は決められた所へまり、無理に急がず扉をいた。浩は乗らなかった。ただ、いた扉と歩をじっと見ていた。

勝がさくをげた。清徳も運転席からをげ返した。はをげ、控えめに振った。清徳は胸の奥がくなるのをじながら、それを顔にさないようにした。今ここでがバスに乗らないことも、切な選択なのだとった。乗れるようになるを、運転の都で決めることはできない。

扉を閉める、清徳はミラー越しに歩をもう度確かめた。浩と父親は、まだその所にっている。全に発できるまで待ち、それからへんだ。運転にとって当たりの作だったが、の朝とは違うさを持っていた。しいは、り始めた瞬に完成するのではない。そこを使うがずつ、確かめながら覚えていくのである。

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