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"借金3億の旅館を継いだ私を捨てた夫の誤算" 第4話

葬のたい計算

野駅からレンタカーをらせ、を抜けて『の宿』に辿り着いたのは、夕暮れだった。 黒りする欅のがり框、父が裏から切りして自作したの傘て、湯がりの客が腰掛ける子。子どもの頃と何も変わらない景のに、ただ、父の姿だけがなかった。 奥の広に置された父の遺体は、布のでらかに眠っているように見えた。 勇気は遺体の枕元に正座したまま、額を畳に擦り付けるようにして慟哭した。 「じいちゃん……ごめん……! 俺、も来なくてごめん……!」

通夜の席に、拓也の姿はなかった。 隣の温泉組の々や、何も通い詰めてくれた常連客たちが、々とをげて涙を流す、夫のを尋ねられるたび、私は「仕事の都で……」と嘘の言い訳を繰り返した。惨めで、けなくて、胸が張り裂けそうだった。

拓也がを運転してようやく現れたのは、曜の告別式の直だった。 喪を着崩し、葬の控でお茶を啜りながら、拓也が最初に私へ投げかけた言葉を、私は忘れることができない。

「おい真帆。典はいくら集まったんだ? ちゃんと数えておけよ。返礼品の代で赤字になったら目も当てられないからな」 祭壇の遺ので、父の骨が拾われるのを待つ控で、この男は計算の話をしたのだ。

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さらに、窓のの林を見つめながら、平然と言い放った。 「で、あのボロ宿のって、売ったらいくらぐらいになるんだ?」

隣のテーブルでお茶を淹れていた照子さんのが、ピシリと止まった。 「……拓也さん、今、そんな話をするじゃないでしょう」 「今しなくていつするんだよ。おはっ子なんだから、あのも建物も全部おのものになるんだろ。相続税対策も含めて、さっさと現化の続きを調べないと損するぞ」

葬での葬儀費用、計百万円。 父の個座が凍結されていたため、支払いは私の個の普通預からて替えた。結婚、自分のパートや正社員の料の端数から、拓也にられないようコツコツと貯めていた虎の子の貯だった。 その領収を見るなり、拓也はを押すように釘を刺してきた。 「おの親の葬式代なんだから、京の計座からは円もさないからな。で宿の遺産が入ったら、そこから自分の座に戻しておけよ」

骨壷を抱えて宿へ戻り、初の法を終えると、拓也は計をチラリと見てちがった。 「じゃ、俺は帰るわ。から仕事だし、勇気も学があるだろ」 父の遺に度もをわせず、私に「丈夫か」の言もかけず、男はへと乗り込んだ。 りるのテールランプを見送りながら、私は悟った。

このにとって、父のは劇ですらなく、ただ「という資産がに入るイベント」でしかなかったのだ。

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