"写真のない履歴書" 第12話
制を脱いだあと
仕事を始めてからほどが過ぎたころ、私は職で会ったと結婚した。庭を持つことになるとは、応募したころには考えていなかった。仕事を続けながら暮らしの形が変わり、やがて子どもを授かった。産をに、私はいったん仕事を辞めることにした。
制を返す、ロッカーのを片づけながら、ここで過ごしたをい返した。初めてんだ。お客さまに声をかけるのに緊張した。同期と失敗を笑いった。輩に「丈夫」と声をかけた。
「また会えるよね」
同期が言った。
「会えるよ。今度はでね」
そう答えたものの、職をるときにはが止まった。空港の音も、体のそばをき交うの姿も、しばらく見られなくなる。寂しくないと言えば嘘になる。
に帰ると、母が「い、お疲れさま」と迎えてくれた。
「みんなに助けてもらったよ」
「あなたが頑張ったからだよ」
私は、締め切りのに写真のない履歴を持って事務所へったことをいした。あのとき、写真がないからと帰っていたら、今の暮らしはなかったかもしれない。
子どもがまれてからは、毎が慌ただしく過ぎた。初めてのことばかりで、仕事とは違う変さがあった。のでお客さまを迎えていたころとは、の流れも違う。
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それでも、仕事を辞めたことを悔はしていなかった。族と過ごす々にも、仕事に打ち込んだ々にも、それぞれ切なものがあった。
数、私は訓練所で働くことになった。今度はから入ってくるたちに、仕事を教えるだった。初めて会ったたちは、緊張した顔でこちらを見ていた。私は、その表を見て昔の自分をいした。
「最初は分からなくて当たりだよ。ひとつずつ覚えていきましょう」
そう声をかけると、みんなの肩からし力が抜けた。今度は私が、誰かのを軽くする番だった。
訓練所では、歩き方やお辞儀、お盆の持ち方を教えた。本をに載せて歩く練習を見ると、昔の自分たちの姿が浮かぶ。を入れたコップをお盆に載せ、子を並べた通をむ。最初からうまくできるはいない。
「急がなくていいよ。まずは落ち着いて」
私はそう声をかけ、本を見せた。たちは失敗するたび申し訳なさそうな顔をする。私は、失敗したから向いていないと決まるわけではないと伝えた。事なのは、次にどうすればいいか考えること。分からないままにせず、周りに聞くこと。仲と声をかけうこと。私たちも、そうやって仕事を覚えてきた。
教える仕事はほど続いた。客で働いた期とわせると、本航空に籍したのはになる。
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振り返れば、私の始まりはずいぶん慌ただしかった。募集をったのは締め切りの。写真はにわず、履歴を持って事務所へ駆け込んだ。の事を話し、料がよさそうだから働きたいと伝えた。の仕事について、ほとんど何もらなかった。
けれど、あのの応募が、私をたくさんのに会わせてくれた。の仲と訓練を受け、初めて空へがり、お客さまを迎えた。結婚し、子どもを育て、今度は輩たちに仕事を伝えた。
訓練所をれるころ、教えていたたちが私のところへ来てくれた。
「今までありがとうございました」
「こちらこそ。みんなと緒に働けてよかった」
そう答えると、胸の奥がじんわり温かくなった。私が教えたたちも、また次に入ってくるを支えていくのだろう。仕事は、目ののから次のへとつながっていく。
締め切りの、写真のない履歴を持ってち止まった私。あのとき歩を踏みしたから、ここまで来られたのだとう。
当は、に乗る仕事がどんなものか、誰もよくらなかった。私たちも会社のたちも、ひとつずつ考え、試しながら仕事の形を作っていった。最初は料を求めて応募した私も、最には輩たちに仕事を教えていた。
で始めたは、そのに続くたちへつながっていった。
制を着て初めて空へがったのことを、私は今もよく覚えている。窓のに広がっていた空は、あのと同じようにく、青かった。
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