"赤飯を炊いた朝" 第11話
母のろ
「女のろについて来いと言うとやな」
昭吉の言葉に、私は首を振った。
「違う。佐伯品が、しい仕事を始めるんよ。職業訓練に通うたちへ、昼の弁当を納めることになった。配達の準備や、空箱を洗う仕事を伝うを探しよる」
「俺に弁当箱を洗えってか」
「嫌なら嫌でよか。でも、どんな仕事か見もせんで断らんで」
昭吉はを私に返した。
「俺は、まだ決めん」
それきり話は終わった。私は夫に返事を急がせなかった。あのの赤飯で、自分が何を違えたか、しはわかってきたからだ。
翌週、佐伯品ではしい注文の準備が始まった。訓練所へ運ぶ弁当は、毎決まった刻に届けなければならない。数も献も事に決まるが、休むがいればその分の注文は減る。はを何枚も並べ、を抱えていた。
「松尾さん。堂をしていたころ、急に数が変わったらどうしていました?」
「あるもので作り直しました。でも、じゃ同じことはできませんよね」
「そうなんです。材料は先に仕入れますから」
私はし考え、訓練所への午までに数をらせてもらえないか聞いた。佐伯は「それはもう頼んでいます」と答えた。私は余計なことを言ったとい、を閉じた。
ところが佐伯は続けた。
「問題は、急に休むがたときです。うちも余った分を全部捨てるわけにはいきません」
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「それなら、くの事業所に予備の注文を取れませんか。数はなくても、余った分を引き受けてくれるところがあれば」
「すぐには無理でしょうね。でも、聞いてみる価値はあります」
佐伯は帳面にき込んだ。私の提案は、そののうちに採用されたわけではなかった。翌週、営業担当がか所回って、ようやくか所だけ話を聞いてもらえた。それでも、私には嬉しかった。
で働き始めてか。初めて、をしていた経験が役にった気がした。
半ば、昭吉が突然に来た。朝の作業が終わったころ、守のに呼ばれてへると、夫が背広を着てっていた。普段はめったに着ないで、袖がしくなっていた。
「見に来た」
「何を」
「仕事たい」
私は佐伯に事を話した。佐伯は昭吉を作業のから案内し、配達の箱や洗浄を見せた。
「い物を持つ仕事もあります。は丈夫ですか」
「膝がし悪いですが、できることはあります」
昭吉はまっすぐ答えた。佐伯は類を見せた。
「今、必なのは箱の洗浄と数の確認です。朝がく、ち仕事です。試しに半やってみますか」
昭吉は私を見なかった。
「お願いします」
試しの仕事は、うようにいかなかった。昭吉はい箱を運ぶとき膝をかばい、洗いでも何度かを止めた。佐伯は昼に作業を切りげてもらい、休憩で話をした。
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「今の体では、毎続けるのは難しいといます」
昭吉はうなずいた。私がを挟もうとすると、夫はさくをげて止めた。
「わかりました。無理を言ってすみません」
作業からてきた昭吉のは、久しぶりに炭ではなく鹸の匂いがした。私はそれに気づいたが、何も言わなかった。昭吉は靴を履き替えるとき、を伸ばしてしばらく座っていた。
佐伯は帰り際、私たちに言った。「今は仕事をお願いできませんでしたが、見に来てくださってよかったです。うちの父も、の仕事を始めたころは何もわからなかったそうです」。昭吉はくをげた。
をると、夫は「おの職は、きれいかところやな」と言った。私は笑った。「きれいにしとらんとられるんよ」。昭吉は「坑内も同じたい」と答えた。その言だけは、昔の夫の声だった。
をたあと、昭吉は駅まで黙って歩いた。私は隣に並んだ。
「残やったね」
「俺は、箱も洗えん男になったとやな」
「そうじゃない。膝が治ってから、また考えよう」
「おはいつも、先に考えるな」
昭吉はち止まった。
「俺は今まで、坑内で若い連に仕事を教えとった。今は歳そこそこの娘さんに、箱の置き方を教わった。腹がったんじゃなか。けなかったんよ」
私は何も言わなかった。恵美に参の切り方を教わったのことをいした。
「私も最初はそうやった。今でも、らんことばっかりよ」
昭吉は驚いた顔をした。
「おでもか」
「当たりやろ。堂とは違うけん」
でし笑った。駅のうどんに入り、久しぶりに向かいって昼飯をべた。昭吉は箸を持ちながら、壁の献札をじっと見ていた。
「この、昼だけでも忙しかな」
「そうやね」
「客がいのに、洗い物をでしよる」
私は夫の顔を見た。昭吉はうどんをすすり、何でもないように言った。
「、ここへ聞きに来てみようか」
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