"結婚23年目、35万円を渡した妻が持ち帰ったもの" 第8話
母の返事
をしてからほど経った頃、の実から話があった。が受話器を取ると、母親の声が聞こえてきた。
「、届いたって」
は私を見た。私はうなずき、隣の子に腰をろした。
母親は、を何度も読み返したと言った。父親のことをもっと話したかったとかれていたのが、特に嬉しかったらしい。
「あなたがそうってくれていたなんてらなかった。私も、あなたに話しておきたいことがまだたくさんあるよ」
話の向こうで、母親はゆっくり話した。の父親が、若い頃にどんな仕事をしていたか。娘がまれた、父親がにらせて回ったこと。がをした夜、父親がのを医者のまでったこと。
は、黙って聞いていた。々、「そうだったの」と声を漏らした。父親の話は、母親から聞いたことがないものばかりだった。
「お父さんは、あなたが結婚したも、とてもんでいたよ。でも、娘を放すのが寂しいとも言っていた」
母親の声がし揺れた。
「もっとく、そういう話を聞かせてくれればよかったのに」
が言うと、母親は「本当にそうだね」と答えた。
のには、い言えなかったことがあった。けれど、そのことを責める声はなかった。母親もも、互いに相をって、言葉をみ込んできたのだ。
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話を切ったあと、は受話器を置いたまま、しばらくかなかった。
「お父さん、私が結婚した、泣いていたんですって」
「そうか」
「母は気づかないふりをしたらしいわ。父は『しいで幸せに暮らせ』って言ったそうよ」
は笑おうとしたが、目には涙が浮かんでいた。私は彼女の肩にを置いた。彼女はそのに自分のをねた。
それから、私たちは帰省のを決めた。会社に休みを申請し、の母親にも伝えた。母親は「来てくれるなら、畑の野菜を用しておく」と言ったらしい。
は「そんなにたくさんはいらないわ」と答えたが、母親は聞かなかった。話の向こうで、が笑いう声がした。
そのの夜、私は息子にも連絡した。息子は仕事の予定を調べて、休みがえば緒にくと言った。
「ばあちゃんに会うの、ずいぶん久しぶりだな」
「そうだな。母さんもぶよ」
話を切った、は嬉しそうに息子の況を聞いた。私は、息子がさかった頃の話をした。運会で転んで泣いたこと。が作った弁当を、友達に自していたこと。は「そんなこともあったわね」と頷き、で笑った。
私たちは、これからくの順を図で確かめた。駅から母親のまで、どれくらいかかるのか。途にある堂がまだ営業しているか。は、昔の記憶をたどりながら話した。
「がし変わっているかもしれないわ」
「迷ったら聞けばいいさ」
「そうね。あなたがいれば丈夫ね」
その言葉が、私は嬉しかった。今まで、私はに頼られているとっていた。けれど本当は、彼女の方がずっとくのことを背負っていたのかもしれない。
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