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"同窓会で「席はない」と笑われた私に、若女将が一礼" 第10話

あのと本当の所

針が落ちても聞こえるほどの静まり返った広ので、先が静かにをいた。

「みんな、覚えているかな。の、あのの卒業式を」

先の澄んだ声に、何かの同級がハッと顔をげた。

「卒業代表として、川さんが読んだ答辞のことを。……あの、川さんは、い答辞の結びのに、こうき記したんだ」

先は目を細め、いあのを慈しむように、言言を噛み締めて語り始めた。

『私は、の席を、黙って用できるになりたいといます』

広のあちこちから、息を呑む微かな気配が漏れた。

隣に座る友子は、すでにハンカチを目元にく押し当て、肩を震わせて泣いていた。

「野さん」先は子から、をじっと見つめた。「君は、本当にそういうになったね。自分の柄を誇ることもなく、誰かを押し退けることもなく。ただ座るの幸せを願い、誰にも言わずに温かい席を用し続けてきた。、この宿で君が守り続けてきたは、まさにあの答辞の言葉そのものだ」

「……先」

の瞳から、筋の涙が静かに頬を伝った。

「国語の教師だからね。教え子が命を吹き込んだ美しい言葉は、半世紀経っても決して忘れはしないさ」

先はそこで、マイクを握ったままを向いて直している麗子へと、ゆっくりと線を移した。

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「それから、さん」

「……っ、はい」

麗子の喉から、掠れた嗚咽のような返事が漏れた。

「あの卒業式の答辞はね、君の作文も最まで候補に残っていたんだよ。君のいた文章も、気品があり、堂々としていて、実に派だった。……けれどね、私が最に川さんを選んだのは、あのがあったからなんだ。誰かのために自分の所を差しせるさを、あの文章のに見たからなんだよ」

麗子は両でマイクを落としそうになりながら、く、く項垂れた。

、自分が「先のひいきだ」と決めつけ、を妬み続けてきた根底にあったものが、今、完全にのに晒されたのだ。奪われたのではなかった。最初から、自分には見えていなかったのさが、そこにあっただけだった。

「さん……!」

同窓会の正夫が、畳のに両をついてくをげた。

「すまなかった……! グループのき込みを鵜呑みにして、君が困っているだなんて勝にい込んで……気の毒そうな顔をして接してしまった。本当に申し訳ない!」

正夫の言葉を皮切りに、あちこちの席から悔と謝罪の声が次々とがった。

「さん、ごめんなさい……!」 「何もらずに、く泊まれるなんてんでいた私たちが本当に恥ずかしいわ」 「お布団を運んでいたのを笑うなんて、として最だった……」

をげるかつての級友たちをに、は静かにちがり、柔らかな笑みを浮かべた。

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「皆さん、顔をげてください。謝る必なんて、何つありませんよ。こうして元気に歳を迎えられて、懐かしい皆さんと顔をわせられた。それだけで、私は胸がいっぱいなんです。……さあ、せっかくの温かいお料理がめてしまいますわ。先、乾杯のご発声をお願いできますでしょうか」

の澄み切った声が、広の空気をふわりと包み込んだ。

先は破顔し、杯をく掲げた。

「よし! それじゃあ、古希を迎えたがしき徒諸君の、これからの健やかな々に——乾杯!」

「乾杯!」

余名の声が、広いっぱいに響き渡った。

とりどりの料理に箸が伸び、あちこちで昔話のが咲き乱れる。友子は涙を拭いながら、の肩を何度も優しく叩いた。

「言ったでしょう、。絶対にあなたの隣に座るって」

「ええ、ありがとう、友子」

が微笑みう、座の麗子の隣に座っていた恵子の席は、いつのにか片付けられ、主を失ってぽっかりと空いていた。恥ずかしさに耐えかねて、途で席をって逃げしてしまったのだ。

麗子は、誰とも言葉を交わすこともできず、めきったお膳のに、さく縮こまるようにして座り続けていた。

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