"初孫の誕生日に締め出された私、翌朝すべての援助をやめた" 第10話
空になった
引っ越して、健はようやく私たちのへ来た。のまで何度話してもつながらず、メッセージにも返事がなかった。話番号にかけると、「現使われておりません」という案内が流れたという。
のに着いた健は、表札がされているのを見て、しばらくからりられなかったそうだ。窓にはカーテンがなく、郵便受けも空だった。誰もんでいないのように見えた。
隣の奥さんがてくると、健は息を切らして尋ねた。
「うちの両親は、どこへったんですか?」
奥さんは、困ったように眉を寄せた。
「引っ越したわよ」
「どこにですか?」
「それは聞いていないの」
「母さんたち、何も言ってなかったんですか?」
「あなたには伝えないでほしいと頼まれたの。ごめんなさいね」
健は、そので言葉を失ったという。所のが居所をらないのではなく、っていても教えてくれないのだと、ようやく気づいたらしい。
数、健のに通の内容証郵便が届いた。差は彦だった。
「これまで預けていた鍵を返してください」
い文面だった。話番号も、しい所もいていない。封筒には、の鍵を返すための返信用封筒が同封されていた。
由美子は、封筒をにしたまま、しばらく黙っていた。テーブルにはから届いた類が置かれている。
広告
毎振り込まれていた保育料や活援助が、止になったことをらせるものだった。
「どういうことなの?」
由美子が尋ねた。健は答えられなかった。
「お母さんたち、何も言わずにいなくなったの?」
「たぶん、そうだ」
「でも、保育料のことはどうするの? 今だって支払いがあるのに」
「俺が何とかする」
健はそう答えたが、どうすればいいのか分からなかった。今までは、りない分を両親が補ってくれるものだとっていた。毎の振り込みは、頼めば続けてもらえる。そう考えていた。
その夜、健は私の兄に話をした。兄は、初めは話を聞いていたが、やがて声をめた。
「お、自分が何をしたか分かってるのか?」
「何って……」
「お母さんたちは、おたちのためにどれだけ通ったとってるんだ。悠斗の誕会で締めしたって、本当なのか?」
健は、何も言えなかった。誰が話したのかは分からない。由美子が言ったのか、所のから伝わったのか。けれど、親戚にはすでにられていた。
「母さんがるのは当然だ。をもらえなくなったから困るって言うに、まず謝れ」
兄はそう言って、話を切った。
健は、スマートフォンを握ったまま、しばらくけなかった。族に何が起きたのかではなく、自分が何をしたのか。ようやく、その問いが胸に浮かんだ。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
戸籍の中のもう一人の妻
海外赴任中の夫・健太に頼まれ、横浜の区役所を訪れた結衣。ところが戸籍の配偶者欄には、見知らぬ女性の名前があった。しかも婚姻日は、結衣が入院した母の看病に追われていた去年の夏。七年間信じてきた夫は、イギリスで別の女性と暮らしながら、日本では何食わぬ顔で優しい夫を演じ続けていた。さらに、二人で貯めたお金まで使われていたことが分かる。結衣は夫を問い詰めず、静かに証拠を集め始めた。夫が積み重ねてきた嘘を、彼女はどう暴いていくのか。人生逆転|裏切られた|夫婦|絶縁|不倫1.3万字5 450 -
完結第12話
義母が倒れたと伝えたら、義兄嫁は葬儀を楽しみにした
山あいの村で農業を営む金田のぞみは、夫と義母、息子と穏やかに暮らしていた。ところが、農家を見下す義兄嫁の美香が、夏休みの間、二人の子どもを突然預けてくる。忙しい収穫期に子どもの世話まで重なり、無理を続けた義母は熱中症で倒れてしまう。 慌てて連絡したのぞみに、美香は心配するどころか、葬儀になれば仕事を休めると笑い出した。翌日、旅行気分で義実家を訪れるという美香。これまで我慢を重ねてきたのぞみは、ある決意を固める。嫁姑|夫婦|絶縁1.3万字5 302 -
完結第15話
母が泊まらない理由
念願の一戸建てを購入した直は、離れて暮らす母・かず子のために、二階で一番日当たりのいい部屋を客間にした。ところが、初めて遊びに来た母は、夕食を終えるなり「そろそろ帰るわね」と言い出す。布団まで用意したのに、なぜ泊まってくれないのか。納得できない直は、何度誘っても断る母の態度に苛立ちを募らせる。一方、妻の咲には、毎日使いたくても使えない部屋があった。良かれと思ってした親孝行。その陰で、直が見落としていたものとは。嫁姑|夫婦|親子関係1.5万字5 0 -
完結第12話
150万円を払わせたママ友、次は寿司300万円
夫の昇進祝いで家族とレストランを訪れたひまり。楽しい食事の最後に告げられた会計は、なんと150万円。原因は、顔見知り程度のママ友・ぽて子一家が大量の料理を注文し、勝手にひまりへ支払いを押しつけたことだった。仕方なく立て替えたものの、返金を求めると渡されたのは、まさかのポテトチップスの空袋。しかも数日後、ぽて子は高級寿司店で新たな計画を立て始める。「ママ友なんだから払って当然」と言い張る一家に、ひまりが取った行動とは?因果応報|夫婦|真相|親子関係|金銭問題|修羅場1.2万字5 792 -
完結第10話
父の葬儀中「飯を作れ」と怒鳴った夫に、参列者が…
父の葬儀で喪主を務める美穂のもとに、夫・健一から何度も電話がかかってきた。用件は「今すぐ帰って飯を作れ」という身勝手な要求だった。二十年間、夫の暴言と厳しい金銭管理に耐えてきた美穂。父との最後の別れさえ邪魔され、ついに参列者の前で夫の怒声が響き渡る。すると、最後列に座っていた一人の男性が立ち上がった。その人物は亡き父の教え子で、健一とも思いがけないつながりがあった。因果応報|怒り|夫婦|親子関係|修羅場1.6万字5 1791 -
完結第12話
結婚23年目、35万円を渡した妻が持ち帰ったもの
結婚23年目、妻の三重が久しぶりに山あいの実家へ帰りたいと言い出した。夫は母親との時間を楽しんでほしくて、35万円を持たせて送り出す。数日後、三重が持ち帰ったのは、古い着物とアルバム、そして母親からの一通の手紙だった。封筒には「今まで言えなかったこと」と書かれていた。手紙を読み進めるうちに、夫は妻が長年胸にしまってきた思いを知る。何不自由なく暮らしていると思っていた23年間。人生逆転|夫婦|相続|第二の人生|親子関係1.2万字5 2944 -
完結第12話
雪道を走る父の約束
昭和46年12月。東京の運送会社で働く健造は、青森まで荷物を届ける長距離便に出発する。小学二年生の息子・誠に「明後日の晩には帰る」と約束し、手作りのお守りを胸ポケットに入れて、国道4号を北へ向かった。高速道路がなく、休む間も惜しんで走る運転手が多かった時代。雪の峠道、重いハンドル、厳しい納期に追われる健造は、深夜、激しい眠気に襲われる。早く荷物を届けたい。でも、家では息子が待っている。時代|歴史|昭和|親子関係1.1万字5 83 -
完結第12話
新幹線で母娘の席を奪った女、現れた女性を見て絶句
五歳の娘パニミと夏休みの帰省を楽しみにしていた、弁当店を営むシングルマザーのパニコ。新幹線の自由席でようやく親子並んで座れたものの、見知らぬ女性に突然コーヒーをこぼされてしまう。服を拭くため席を外したわずかな間に、その女性は荷物を床へ放り出し、二人の席を奪っていた。娘を守るため、悔しさをこらえてデッキへ向かったパニコ。そこで偶然、日頃から世話になっている立花会長と再会する。事情を聞いた会長が一緒に席へ戻ると、先ほどまで威張っていた女性の顔色が一変して……。怒り|真相|親子関係|修羅場1.2万字5 1014