みかん小説
本棚

"誕生日に姪を選んだ夫、3年後の再会で絶句" 第12話

剥きしの狂気と崩壊する族

「違う! 違う違う違う! 全部でたらめよ!」

百が突然、を抱えて切り声をげた。

休のフードコートに響き渡るその異常な絶叫に、周囲でうどんやハンバーガーをべていた族連れたちが斉に箸を止め、ぎょっとしてこちらを凝した。

百は血った目で尾を睨みつけ、唾をばしながら喚き散らした。

「あんたもあんたよ! ここまで妻が馬鹿にされてるのに、なんで黙って突っってんのよ! 男のくせに、しは言い返したらどうなの!?」

「な、何言ってるんだよ! 元はと言えば、おがの男に目使ったからだろ! 俺という夫がいながら、で恥ずかしくないのか!」

「はあ!? 夫ぉ!? 笑わせないでよ! この数でブクブク太って禿げ散らかしたあんたのどこが夫なのよ! 今のあんたなんて、ただのしがないのATMじゃないの!」

「え、ATM……!?」

尾はまるで平打ちでもらったかのように、よろよろと、歩退った。

エリートの自分に惚れ込み、運命をじて略奪してきたはずの若い妻。その本音が「顔が変わって太った男は、ただののどころに過ぎない」という酷な侮蔑だったことに、尾は初めて気づいたのだ。

だが、百の狂気はそれだけでは止まらなかった。

彼女は焦点の定まらない虚ろな目を宙に彷徨わせ、ブツブツと壊れたレコードのように呟き始めた。

広告

「私は悪くない……私は何にも悪くないの……。私はただ、幸せになりたいだけ……。本物の馬の王子様と結婚して、誰よりもキラキラした特別なプリンセスになりたいだけなのに……なんでよ……なんでこんななオバさんが幸せになって、私がこんな目に遭わなきゃいけないのよ……!」

爪を噛み、髪を振り乱してぶつぶつと妄執を吐きす百。

その姿は、かつて周囲からチヤホヤされていた美女の面など微もなく、ただ自分の欲望と見栄に押し潰されたれな怪物のようだった。

周囲からの好奇と軽蔑の線に耐えかねた尾が、青ざめた顔で私にすがるように両を伸ばしてきた。

「ひ、陽菜子……! 頼む、どうにかしてくれ! こいつはおの姪だろ!? 俺だっておの夫だった男じゃないか! このをなんとか収めてくれたら、俺の実にもおの悪を言わないように取り計らってやるから……!」

その浅ましい言いに、私は底から呆れ果て、たい溜め息をつ落とした。

「必ありません」

「え……?」

「私はすでに、実の両親にもお兄ちゃん夫婦にも、あなたたちから受けた仕打ちのすべてを話して、族公認であの子との縁は完全に切ってありますから」

尾は息を呑んだ。

「私とあなたは、のあの誕で完全にになりました。この女を選んで私を捨てたのは、の誰でもない、あなた自よ。

広告

自分の選んだ現実なんだから、責任を持って自分で連れて帰りなさい」

私の凛としたに、尾はぐうの音もず、真っな顔でち尽くした。

ざわめく混みから逃げすように、尾は狂乱状態の百の腕を乱暴に引っ張り、にちっていった。

がったあと、テーブルの脇には、ベビーカーと、そこにぽつんと取り残された髪の歳の女の子——『シンデレラ』が残されていた。

両親の醜い罵りいをで見せつけられたその子は、泣くこともできず、ただ怯えたように肩を縮こまらせ、きな瞳からポロポロと涙をこぼしていた。

私はしゃがみ込み、そのさな肩をそっと抱き寄せた。

「……怖かったね。もう丈夫だよ。すぐにおじいちゃんとおばあちゃんを呼んであげるからね」

私が優しく語りかけると、女の子は張り詰めていた糸が切れたように、私の胸に顔を埋めて声をげて泣きじゃくった。

勉くんが双子のベビーカーを見守りながら、静かに私のスマートフォンを渡してくれた。

私は迷うことなく、兄の携帯番号をタップした。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: