みかん小説
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"生活費を奪って消えた母、20年後の再会で私が頼んだもの" 第6話

母のいないの音

母がいなくなってから、がのは急に広くなったようにじられました。

音や話し声が、壁に当たってさく反響するのです。 朝、目を覚ましても、台所から母の呼ぶ声や、が聞こえてくることは度とありませんでした。

父はへるを分め、毎朝私のために朝ご飯を用してから勤するようになりました。 パンをトースターで焼き、マーガリンを端まで丁寧に塗り、ガラスのコップに牛乳を注ぐ。 それだけの簡単な朝でしたが、父は毎朝「これでりるか?」「お腹すかないか?」と配そうに尋ねてきました。

「お母さんみたいに、温かい卵焼きやお噌汁じゃなくてごめんな」 を掻きながら申し訳なさそうに笑う父に、私は笑顔で首を振りました。

「ううん、私、トースト好きだから丈夫だよ」

父にこれ以、しい顔をさせたくありませんでした。 私はマーガリンの染みたパンをずつよく噛み、美しそうに平らげてみせました。

学へけば、友達や先の目がどうしても気になりました。 ある、担任の先から渡された連絡帳に、『庭訪問について、お母様と連絡がつきません』という付箋が貼られていました。 私はその連絡帳を父に見せるのが怖くて、ランドセルの底の奥くに隠してしまいました。

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けれど、父は夜になると、私のランドセルから連絡帳をそっと取りしました。 そして、その付箋を見て、静かに言いました。

「学には、お父さんから話を入れておくよ。配しなくていい」

「……お父さん、私、何か悪いことしたのかな」 俯く私に、父はしゃがみ込んで私の両を包み込みました。

「美咲は何も悪くない。ひとつも悪くないよ」

父の言葉は温かく、力いものでした。 けれど、幼い私の胸の奥に巣った暗いは、簡単にはれませんでした。

(私がもっとお母さんの言うことを聞いていれば、ていかなかったのかな) (テストでいい点を取って、お伝いをたくさんしていれば、今もにいてくれたのかな)

子どもの浅はかない込みは、自分を責める刃となってをチクチクと刺し続けました。 父は私の曇った表を見つめ、静かに言葉を継ぎました。

「美咲。のした勝を、自分のせいにするんじゃないぞ」

父の瞳は、真っ直ぐに私のを見透かしていました。

「がしたことは、の責任だ。子どもが背負うものじゃない。 おはただ、元気に笑って、ご飯をべて、学へけばいいんだ」

その夜、父はスーパーで買ってきた売りの根を煮物にしました。 包丁を握るつきはぎこちなく、根の角は揃いで、し筋が残っていました。

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それでも、父はの染みた真んの柔らかい部分を、私の鉢にばかりたくさんよそってくれました。

「お父さんは? お父さんの分、これっぽっちしかないよ」

「俺は昼にがっつりったからな。根は美咲が全部べろ」 いつもの台でした。

私は自分の鉢から、番きくて柔らかい根をつ、箸でつまんで父のお皿に移しました。

「半分こじゃないと、美しくないもん」 父は困ったように眉をの字にげ、それから無言で根をに運びました。

夕の、で並んで流し台にちました。 父が洗剤の泡で器を洗い、私が乾いた布巾で滴を拭き取って棚へしまう。 カチャリ、カチャリとさく鳴る皿の音が、静まり返ったのによく響いていました。

洗濯の使い方、いシャツと柄物を分けて洗うこと、靴の揃え方。 器用な父がひとつずつ事を覚えていく姿を見つめながら、私はいました。

母はいなくなったけれど、私のはなくなっていない。 ここには、私を全力で守ろうとしてくれる父がいるのだと。

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