"箱根の盲点" 第10話
ビソプロロールを用していたの体内からジギタリスがれば、それは部から投与されたことをします」
応接が静まり返った。
計の音だけが続いている。
「私は――」と宮原がをいた。
「あなたを選んだのは、あなたが優秀だからです」
「優秀な探偵が自分のそばにいたという事実が、あなたのアリバイを化する。ということですか?」
「探偵が同していて何も気づかなかった。それが最もい証になる。警察が来ても、保険会社が来ても、『あの夜は探偵と緒にいた』と言えば、誰もそれ以追求しない」。
宮原はようやく樋の目を見た。
「先の名と実績が、私の潔を保証してくれるはずだった」
宮原はコーヒーカップに目を落とした。
すでにめているだろうコーヒーをしばらく見つめていた。
「戸田さんは善良でした。それは違いありません。ただ1の老が100億円の事業を止めている。雇用の面も、税収も、老朽化したインフラの更も、全てが止まっている。戸田さんの理は美しいが、現実には期限がある。それはあなたが判断することではない」
「ええ、分かっています。だから私は自分がやったことのさも分かっているつもりです」
宮原の声はどこまでも静かだった。
反省でもき直りでもない。
すでに覚悟を終えたの声だった。
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樋はちがった。
「宮原さん、2つの選択肢があります。自ら警察にするか。私が戸田真帆さんと共に捜査関に報を提するか。どちらを選んでも司法解剖はわれるでしょう」
宮原は答えなかった。
窓のを見つめたまま、い沈黙が続いた。
樋は応接をた。
エレベーターで1階にり、青の通りにた。
1のがたかった。
コートの襟をて、歩き始めた。
くの自販売で缶コーヒーを買った。
温かい缶を両で包みながらんだ。
帳をいた。
12の記録が並んでいる。
自分の字で正確にかれた記録。
その正確さが、犯の具になっていた。
樋は探偵として記録することを仕事にしている。
見たものをき、聞いたものをき、をき、所をく。
その記録が真実にづくための段だと信じてきた。
だが記録は事実を残すだけだ。
事実のは、記録したが理解しなければ何も語らない。
2118分に駐へ向かったことは事実だ。
2130分に異常がなかったことも事実だ。
しかし、その事実の裏で何が起きていたのか、樋は見ていなかった。
見ようとしなかった。
依頼を信じていたからだ。
信じることと、見ることは違う。
樋はそのことを宮原亮介という男から学んだ。
3つの事件を経験してきた。
覚を、習慣を、を。
は無識のうちに信じている。
その信頼の隙に犯罪は入り込む。
だが今回利用されたのはの覚ではなかった。
樋自の信頼だった。
依頼を信じるという探偵の職業な提そのものが盲点になった。
これまでの事件では、樋は常に側から盲点を指摘するにいた。
今回初めて、自分が盲点の内側にいた。
缶コーヒーがえていく。
樋はそれを最までみ、空き缶をゴミ箱に捨てた。
携帯話を取りし、戸田真帆の番号を呼びした。
「真帆さん、樋です。お話ししたいことがあります」
青の通りを、の差しがく照らしていた。
樋は話をに当てたまま歩き始めた。
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