"ハワイへ消えた母" 第4話
けれど、今からは誰かのために朝を作る必はありません。着替えてビーチにると、朝が昇り始めていました。
オレンジに染まる空、キラキラと輝く波。こんなに美しい朝を見るのは何ぶりでしょうか。裸で砂浜を歩きます。波が元に寄せては返し、砂を撫でていきました。折、朝のジョギングをするとすれ違います。みんな笑顔で「グッドモーニング!」と挨拶してくれるのです。この放、この自由、胸がいっぱいになりました。
午はあき子さんたちがカルチャーセンターに連れてってくれました。フラダンスの体験レッスンです。
「クミさん、緒にやりましょう!」
音楽にわせてゆっくりと体をかします。うまくできなくても誰も責めません。みんな楽しそうに笑っているのです。「初めてとはえないわね」と先が褒めてくれました。嬉しくて自然と笑顔がこぼれます。
ウクレレ教も覗いてみました。さな楽器から優しい音が響きます。「これ、習ってみたいわ」と言うと、すぐに申し込み用を渡してくれました。やりたいことをやりたいにできる。この自由がこんなにも幸せなのです。
お昼は沿いのカフェでランチです。テラス席に座り、波の音を聞きながら事をいただきます。
「このガーリックシュリンプ、絶品なのよ!」
広告
みよこさんの言う通り、本当に美しい。鮮なエビの甘みとガーリックのばしさがいっぱいに広がりました。
「毎こうして違うレストランにくのよ。お気に入りの所を見つけるのも楽しいの」とけ子さんが教えてくれます。会話も弾みます。本での経験、族のこと、これからの、みんなそれぞれの物語を持っていました。
「私も息子夫婦と同居していたの。でももう限界だとってね」とあき子さんが自分の経験を話してくれます。「わかるわ。私もそうだった」とけ子さんも頷きました。「でも今はこんなに自由で幸せよ」というみよこさんの言葉に、4で笑いいます。
ここには同じような経験をしてしいを選んだたちがいる。お互いに支えい、尊しえる関係です。
午は部でゆっくりと読をしました。誰にも邪魔されない静かな。ベランダから吹き込むがよくページをめくっていきます。途で昼寝もしました。誰に文句を言われることもありません。起きたいに起き、眠りたいに眠る。当たりのことがこんなにも贅沢にじられるのです。
夕方、サンセットを見にビーチへました。空が青からオレンジ、そしてへとを変えていきます。「綺麗……」とわず声がました。この美しい夕を見ていると、本での10がい昔のことのようにじられます。
広告
あの窮屈な々、気を使い続けた、謝されることのなかった献、すべて終わったのです。これからは私の。そうつぶやくと、の底かららぎが湧いてきて、い眠りに落ちていきました。
ハワイでの活が始まって1ヶが経ちました。毎朝のビーチウォーク、友たちとのランチ、午の読、そしてサンセット鑑賞。この穏やかなリズムが私のしい常になっていたのです。
そのもいつものようにビーチで本を読んでいました。波の音を聞きながらゆったりとしたが流れていきます。その、スマートフォンが振しました。画面を見ると、表示されているのは「直哉」の文字です。移してから初めての着信でした。私は画面を見つめたまま、指をかしませんでした。る気にはなれなかったのです。
着信音が止まり、静寂が戻ってきます。けれどそれは束ののことでした。再びスマートフォンが鳴りしました。また直哉からです。無しました。10分、また鳴ります。今度は2回連続です。午だけで着信は5回になりました。すべて無しました。
「クミさん、本から話みたいね」
隣で本を読んでいたあき子さんが配そうに声をかけてくれます。
「息子からです。でもる気はありませんから」 「そう。無理しなくていいのよ」
優しい言葉が胸に染み渡りました。午になると着信はさらに増えていきます。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
18年間閉ざされた納屋
31歳の美咲は、博士課程を修了したその日、18年間会えずにいた兄・直のことを確かめるため実家へ向かった。両親からはずっと「兄は施設で暮らしている」「会えば不安定になる」と聞かされ、施設名も住所も教えられていなかった。ところが帰り道、近所の女性から思いがけない一言を聞く。「直君、まだ裏の納屋にいるんだと思ってた」。実家へ駆け戻ると、古い納屋の扉には外側から2つの南京錠。窓は布で覆われ、食器と電気コードには最近まで使われた痕跡が残っていた。そして美咲が「お兄ちゃん」と呼びかけると、扉の向こうから2度、確かな音が返ってきた。18年間、両親は何を隠してきたのか――。兄弟姉妹|親子関係2.2万字5 102 -
完結第15話
妊娠中の娘が逃げ帰った夜、大富豪の母が動いた
妊娠8か月の娘・はるかが、顔に傷を負い、母エリコの家へ逃げ帰ってきた。病院では新しい肋骨の骨折に加え、以前の骨折痕も見つかる。夫・匠による暴力は、一度きりではなかった。 匠は巨大企業グループの創業家の一員。だがエリコはその地位にひるまず、娘の安全を確保し、診断書を残す。同時に信頼する会計士へ調査を頼むと、匠一家が関わる財団に巨額の不正な資金移動の疑いが浮かび上がった。 報道を受けても疑惑を否定し続けた匠は、緊急会見の最中、はるかへの傷害容疑で逮捕される。さらにグループの資金問題にも捜査が及び、権力を盾にしてきた一族は追い詰められていく。 母の行動が事態を動かす一方、すべての始まりにあったのは、はるかが自分とお腹の子を守るため、あの家から逃げ出した決断だった。因果応報|人生逆転|嫁姑|絶縁|親子関係|修羅場2.3万字5 667 -
完結第15話
介護で表彰される嫁――私は認知症に仕立てられた
手首を骨折し、息子夫婦の家へ身を寄せた68歳の文江。嫁・沙耶香は、物忘れが進んだ姑を献身的に介護しているように見せ、日常を動画で配信していた。 だが文江は認知症ではなかった。砂糖と塩を入れ替え、スマートフォンを隠し、同じ質問を繰り返すよう指示する――すべては再生数と広告収入を得るための演出だった。しかも息子も、その事実を知りながら黙認していた。 沙耶香が「献身的な嫁」として表彰される当日、巨大スクリーンに流れたのは感動映像ではなく、撮影前に姑へ演技を命じる未編集動画だった。そして文江は車椅子を使わず、自分の足で壇上へ向かう。 家族に病気も財産も人生も利用された女性が、自らの声と尊厳、そして「撮られない権利」を取り戻していく逆転と再生の物語。因果応報|嫁姑|認知症2.2万字5 713 -
完結第15話
正月、娘に熱汁を浴びせた義兄へ110番
娘がグラスを1つ割っただけで、義兄は笑いながら熱い汁物を8歳の娘へ浴びせた。 しかも泣き叫ぶ娘を前に、義母も親族も止めるどころか「正月から大げさ」と笑っていた。 夫まで兄を庇い、「今日は丸く収めよう」と私に黙るよう求めてきた。 私は娘の腕を流水で冷やしながら、警察署長を務める実兄へ電話した。 「お兄ちゃん、今度はもう手加減しないで」 だが兄が私に命じたのは、身内の力を使うことではなく、「今すぐ110番して、証拠を全部残せ」ということだった。 その言葉で私は、義実家の天井に防犯カメラがあることを思い出した。 警察が映像を確認した直後、それまで「手が滑っただけ」と笑っていた義兄の顔色が一変する。 そして夫まで知らなかった“決定的な場面”が映っていたことで、あの正月に笑っていた全員の立場がひっくり返り始めた。怒り|嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 2064 -
完結第12話
入学式の日、愛人を選んだ夫への「お祝い」
娘・美香の入学式当日、夫・健吾は姿を見せなかった。電話をかけると、「愛人と離婚届を出しに来ている」と笑いながら告げ、妻子を捨てて新生活を始めると宣言する。 泣きそうになるカナからスマートフォンを受け取った義母・富美子は、取り乱すどころか静かに微笑んだ。「本当におめでたい日ね。盛大にお祝いしなくちゃ」。その夜、帰宅した健吾を待っていたのは、白いリボンが掛けられた巨大なケーキだった。 しかしケーキの中には、健吾が大切にしていた高級時計や愛人との品々が隠されていた。自らそれらを切り刻んだ健吾へ、富美子は不倫と会社経費の私的流用を示す証拠を突きつけ、カナは離婚条件を記した書類を差し出す。 娘の晴れの日に家族を裏切った男がすべてを失う一方、血のつながらない嫁と孫を守り抜いた義母。三世代の女性が本当の家族として、新しい幸福を築いていく痛快な逆転物語。夫婦|親子関係1.8万字5 992 -
完結第12話
夜勤明け、鍵を替えられた私の静かな反撃
30時間の夜勤を終えて帰宅した看護師・南を待っていたのは、義母によって交換された玄関の鍵だった。「反省したら土下座しに来なさい」という連絡に、南は「そうですか。では、さようなら」とだけ返信する。 だが、義母と無職の夫は知らなかった。その高級マンションは、南の勤務先が契約する借り上げ社宅であり、家賃も生活費もすべて南の収入で支えられていたのだ。 南は騒がず、締め出しを自白したSNS投稿を保存。社宅の退去手続き、電気・水道・ガスの解約、弁護士への離婚依頼を淡々と進める。月曜日の午後5時、部屋の明かりが消え、管理会社と警察が玄関に現れた。 自分を家政婦のように扱った家族との関係を断ち切り、誇りある仕事と人生を取り戻す女性の、静かで痛快な逆転物語。因果応報|人生逆転|嫁姑|親子関係1.9万字5 4730