「10年間、お疲れ様でした」 息子夫婦からそう告げられ、68歳の長沼クミは家を出るよう求められた。 孫の世話、家事、食事、掃除――結婚以来10年間、息子家族のために尽くしてきた日々。けれど、感謝の言葉はいつしか消え、最後に残ったのは“もう必要ない”という冷たい宣告だった。 しかし、クミは泣かなかった。 なぜなら彼女は、ずっと前からこの日が来ることを予感していたから。 翌朝、荷物はすでにまとめられていた。息子夫婦が呆然と見つめる中、クミは静かに家を去る。そして1ヶ月後、彼女は日本ではなく、青い海の広がるハワイにいた。 その頃、息子からの着信は90件。 だが、クミが再び振り返ることはなかった――。