"赤城山に消えた幸" 第1話
2006428、群馬県の赤の麓にある古い廃荘で、リフォーム事がわれていた。
その荘は、かつて登客がち寄るさな宿泊施設だった。だが、所者の体調悪化によって5から営業を止し、建物はしずつ荒れていた。壁はあせ、庭には雑が伸び、窓ガラスにはいの汚れがこびりついていた。
作業員たちは朝から、老朽化した設備を確認していた。特に問題になっていたのは、敷の隅にある古い浄化槽だった。容量がさく、位置も悪かったため、しいものへ交換する予定だった。
午、作業員の1が浄化槽の蓋にをかけた。
鉄の蓋はく、いあいだけられていなかったせいで固くなっていた。男は同僚と力をわせ、ゆっくりと蓋をずらした。
その瞬、烈な悪臭が面のから噴きがった。
作業員たちはわず顔をそむけた。だが、次の瞬、1の男が浄化槽のをのぞき込み、きを止めた。
暗いのに、く乾いたようなものが見えた。
最初は物の骸かとった。のくでは、そうしたものが紛れ込むこともある。だが、目を凝らすにつれ、それが物ではないことが分かってきた。
の骨だった。
男はそのにへたり込んだ。に力が入らず、から声にならない息だけが漏れた。隣にいた同僚が異変に気づき、すぐに作業を止めた。
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現は瞬で騒然となった。
午1130分頃、通報を受けた警察官が荘に到着した。浄化槽のを確認した警察官たちの表は、すぐに険しくなった。
発見されたのは、1体の遺骨だった。
腐敗はかなりみ、が経過していることはらかだった。科学捜査班が呼ばれ、周辺の証拠品の収集が始まった。
遺骨とともに見つかったものがあった。
古びた登靴が1。
錆びた指輪が1つ。
そして、形が分からないほど損傷した携帯話。
そのらせを受けた群馬県警の鈴郎刑事は、すぐに現へ向かった。48歳の鈴刑事は、20の経験を持つベテランだった。
現にった瞬、彼の脳裏に1の未解決事件がよみがえった。
200535。
赤のきに参加し、に忽然と姿を消した52歳の女性。
幸。
警察と消防、民の岳救助隊まで加わり、72にわたって数百が捜索したにもかかわらず、跡1つ見つからなかった女性だった。
々は、彼女が奥のか崖のにいるのだろうとっていた。
しかし、彼女が見つかった所は、森のではなかった。
登から約2kmれた廃荘の浄化槽だった。
鈴刑事は、遺留品の登靴をじっと見つめた。
女性用の登靴。
サイズは24cm。
幸が履いていた靴のサイズと致していた。
さらに、の指輪にはさなアメジストがはめ込まれていた。
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鈴刑事はそので息をく吸い、携帯話を取りした。
確認しなければならない相がいた。
幸の姉、苗だった。
1の200535、曜の午5。
群馬県のマンションで、幸は目を覚ました。
52歳の彼女は、このを指折り数えて待っていた。岳会「青峰」のきがわれるだったからだ。
幸は7に婚して以来、1で暮らしていた。子どもはおらず、姉の苗が唯の族だった。
婚、しばらくはつらい期が続いた。仕事から帰っても部は静まり返り、休になっても誰かと話す予定はなかった。自分のがしずつ空っぽになっていくようにじていた。
その活が変わったのは、5に岳会へ入ってからだった。
登は、幸にとって単なる趣ではなかった。
唯の楽しみであり、きる理由にいものだった。
へくは、朝から気持ちが軽くなった。登靴を履き、リュックを背負い、々のを歩く。それだけで、自分がまだを向いてきているとえた。
幸はで撮った写真をアルバムにまとめていた。気の良い頂、のの尾根、葉の登。ページをめくるたびに、彼女の表はるくなった。
姉の苗にそのアルバムを見せることもあった。
「お姉ちゃん、私も丈夫だよ。が私を救ってくれたの」
幸はそう言って、照れたように笑った。
その言葉を聞くたび、苗はした。
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