"赤城山に消えた幸" 第5話
警察、消防、民の岳救助隊が加わり、計80以が赤帯に投入された。警察犬もし、幸のから持ってきた類の匂いを覚えさせて追跡を始した。
警察犬はをたどり、林と流する分岐点のあたりで突然を止めた。
そこから先の痕跡が途絶えていた。
捜査員たちは首をひねった。
まるでその点で、幸が空に消えてしまったかのようだった。
ヘリコプターも投入された。空から、崖、険しい斜面を確認した。だが、何も発見されなかった。
2目、3目になっても状況は変わらなかった。
72にわたって数百が投入されたが、跡も、の切れ端も、所持品も見つからなかった。
苗は捜索隊についてを歩き、声が枯れるまで妹の名を呼んだ。
「幸! いたら返事をして!」
返ってくるのは、に響くこだまだけだった。
救助隊員が彼女を止めた。
「今はもうしましょう」
しかし苗は首を横に振った。
「私が探さなかったら、誰が探すんですか」
その言葉に、誰もすぐには返事ができなかった。
捜索が続く方で、警察は本格な捜査に入った。
担当となったのは、群馬県警捜査課の鈴郎刑事だった。
鈴刑事はまず、幸の活を調べた。幸は7に婚して以来、で1暮らしをしていた。貿易会社で経理として働き、静かに暮らしていた。
広告
特別なみを買うような関係はなかった。
銭問題もなかった。
借もなく、誰かに額のを貸していた形跡もなかった。婚の財産分与も、特に問題なく終わっていた。
次に、鈴刑事は岳会の会員を1ずつ調べた。
そので最もだったのは、最に幸と緒にいた田健だった。
取調で向かいった田は、落ち着いていた。質問にはよどみなく答え、目をそらす様子も、揺する様子もなかった。
「の途、林と流する分岐点のくで別れました」
田は静かに言った。
「彼女が先にりると言ったので、そのままかせました。に慣れているですから、配はしていませんでした」
鈴刑事はを計算した。
林の分岐点から堂までは、通常の登を歩いて最でも40分ほどかかる。田は午630分に堂へ到着していた。の会員より約1遅れていた。
田は首を痛めたと言っていた。
しかし、堂に到着した、彼がを引きずっていたと証言した会員はいなかった。
汗だらけの顔。
についた。
1の遅刻。
そして、幸は消えたまま。
鈴刑事は胸のに違を抱いた。
だが、それだけではりなかった。
疑いは証拠ではない。
の会員たちの証言も、決定なものではなかった。に田と幸が遅れていたのは見たが、それ以のおかしな点はない。
広告
2が話しているように見えただけだ。
警察はやがて、滑落事故の能性にきを置き始めた。
赤には危険な所がいくつかあった。コースの部には、崖にい急斜面もあった。もし幸が別のをり、を滑らせたなら、遺体がすぐに見つからない能性もあった。
いや藪に埋もれているかもしれない。
だが、72以の捜索でも、何もなかった。
携帯話の基局追跡も試みられた。だが2005当の技術では、正確な位置の特定は難しかった。
最の信号は赤帯で確認され、そのは完全に途絶えた。
源が切られたのか。
壊れたのか。
波の届かない所にあるのか。
それ以は分からなかった。
監カメラの確認も難しかった。2005当、赤帯には監カメラがほとんどなかった。駐にも登の入にも、現のような防犯カメラは設置されていなかった。
捜査は壁にぶつかった。
1かが過ぎた。
捜索隊の規模は縮され、マスコミの関もれていった。しい事件が起こるたび、幸の名は報の片隅へ追いやられていった。
公式な捜査は、やがて打ち切られた。
事件のファイルは、未解決のまま引きしの奥にしまわれた。
鈴刑事は苦いいを拭えなかった。
何かを見落としている。
そうじていた。
田健への疑いも、完全には消えなかった。
しかし、証拠がなかった。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
「寄付は千円ぽっち」笑われた老夫婦の30年の秘密
町内会の夏祭りで、寄付が千円しかないと笑われた68歳の静子。古い自転車に乗り、夫の勉と慎ましく暮らす彼女は、婦人会長から「ケチな人」と見下され、記念式典の受付役まで外されてしまう。それでも静子は言い返さない。夫婦には、30年間、毎月15日に欠かさず続けてきた秘密の約束があった。やがて婦人会の記念式典に、育英基金の支援で大学を卒業した青年が現れる。青年が大切に持っていた一通の手紙をきっかけに、会場の空気が思いがけない方向へ変わり始める。人生逆転|夫婦|真実|金銭問題1.9万字5 692 -
完結第10話
腎臓をあげた私に離婚届――夫の隣には若い女
三歳の娘を育てる裕子は、重い腎臓病になった夫・英司を救うため、自分の腎臓を一つ提供した。ところが手術後、体調を崩した裕子を待っていたのは、夫からの暴言と冷たい仕打ちだった。やがて英司は、若い女との新生活を理由に離婚届を突きつけ、娘まで奪おうとする。そんな裕子の味方になったのは、意外にも義母だった。命を救ってくれた妻を平然と捨てようとする夫。すべてを失いかけた裕子は、娘と自分の人生を守るため、反撃を決意する。夫婦|真実|裏の顔|真相|第二の人生1.4万字5 1097 -
完結第15話
「柿の木だけは切るな」――庭から出た四人の遺骨
2024年、東京・品川の古い屋敷で、樹齢70年の柿の木が引き抜かれた。その根元から見つかったのは、大人一人と子ども三人の遺骨。20年前、この屋敷では住み込みの家政婦と三人の娘が姿を消し、家主である元校長は「金を盗んで夜逃げした」と説明していた。なぜ彼は、柿の木だけは絶対に切るなと家族に言い残していたのか。捜査を進める刑事・渡辺は、町の人々から尊敬されてきた元校長の過去と、20年間隠されてきた母娘の失踪の真相を追い始める。ミステリー|真実|真相1.7万字5 89 -
完結第15話
「このおばあちゃん、危ない」六歳の孫が見たもの
六十八歳の静子は、夫を亡くしてから一人暮らしをしている。近所の蛇田さんは、毎日のようにお菓子を配って歩く親切なおばあさん。ところが、六歳の孫・小春だけは、なぜか彼女を避けていた。 ある日、三人でスーパーへ出かけると、小春が突然、静子の手を引いて言った。 「ばあば、このおばあちゃん、あぶない」 その直後、店員に呼び止められた蛇田さん。小春はいったい何に気づいたのか。お菓子に隠された秘密と、一人暮らしの老人たちが抱える寂しさを描く物語。人生逆転|祖父母と孫|真実|真相1.6万字5 175 -
完結第12話
最後の伝書鳩
昭和19年、南方の山地。撤退を命じられた部隊は、谷に残された九人の兵士と連絡が取れなくなっていた。 通信兵の関谷清一伍長は、彼らが「未帰還」の一言で片づけられることに納得できない。しかし、無線は故障し、残された伝書鳩は最後の一羽だけ。報告書が敵の手に渡れば、百人以上の仲間まで危険にさらされる。 命令を守るか、九人の居場所を知らせるか。関谷は報告書の裏に、九人の名前と谷の場所を書き込んだ。 戦場で一枚の報告書と一羽の鳩に、九人の命を託した通信兵の物語。時代|歴史|昭和|真実2.3万字5 94 -
完結第12話
毎朝「出ていけ」と怒鳴る隣人、測量の日に顔色が変わった
「引っ越しなさい!」毎朝七時、向かいの家の奥さんに怒鳴られる六十八歳のしず子。生まれ育った家を手放す気はないが、理由のない嫌がらせは日に日にひどくなり、相手の夫まで引っ越しを勧めてくる。しず子は言い返す代わりに、毎日の出来事をノートに書き留めていた。そんなある日、隣人の土地売却をきっかけに境界の測量が行われる。測量士が示した一本の線と、亡き祖父が残した古い封筒。そこには、長年の隣人関係を覆す意外な約束が隠されていた。怒り|真実|修羅場1.3万字5 524 -
完結第12話
フクと小さなおにぎり
ペットショップの隅で「特価品」の札をつけられていた猫、フク。以前の飼い主に一度迎えられながら、すぐに店へ戻された過去があった。幼い娘ゆいに心を動かされ、フクを家族に迎えた俺と妻の由佳。少しずつ新しい家に慣れていくフクだったが、なぜか人前では決してご飯を食べようとしない。その理由を知った俺たちは、無理をさせずに見守り続ける。迎えてから約一年が過ぎたある夜、二歳になったゆいが小さな椅子を運んできた。娘の何気ない行動が、フクの心を少しずつ変えていく、家族の温かな物語。感動|真実1.1万字5 946 -
完結第10話
消えた卵の秘密
茜の家では、父の再婚相手・美津江が届けてくれる卵が、なぜか毎回なくなっていた。夜中につまみ食いをする夫の陽斗を疑っていた茜だったが、ある日、卵をこっそり持ち出す小学一年生の娘・凛を目撃する。「急に卵が嫌いになった」と泣く娘。しかし、いつもは素直な凛の様子はどこかおかしかった。そんな中、美津江から再び大量の卵が届く。茜は娘のために手作りプリンを用意するが、それを食べた美津江は、材料を聞いた途端に顔色を変えてしまう。娘が必死に隠していた秘密とは、いったい何だったのか。祖父母と孫|真実|真相|第二の人生1.4万字5 779 -
完結第12話
五歳の母ちゃん
両親を事故で亡くしたシンジは、五歳の妹・楓を育てながら、昼も夜も働いていた。そんなある日、楓が「母ちゃんが来た」と言って連れてきたのは、同じ保育園に通う五歳の少女・リサだった。ところが彼女は、家族しか知らない昔の出来事を次々に話し、シンジを息子のように気遣う。信じられない再会に戸惑いながらも、兄妹は少しずつ彼女に心を開いていく。しかし、リサ自身の記憶が薄れていくという異変が起こり始める。もう一度母に会いたかった兄妹が、大切なものを守るために選ぶ道とは。兄弟姉妹|真実|真相|第二の人生1.2万字5 269