"レモングラスの下の悪臭" 第9話
「あの財産は僕が受け取るべきものだった。僕はあので踏みにじられてきた。取り戻して何が悪い」
「じゃあ私は何だったの?」
彼は角をげた。
「全な投資先だった。清らかな妻、問題のない職、頼れる親族もない。僕に完璧な庭の印象を与えてくれるだった」
喉の奥が焼けるようだった。
「度も私をしたことはなかったの?」
しを置いて、彼は無関に答えた。
「していたよ。僕の都にぴったりう君の姿を」
母が激しくもがいた。
裕さんは棚のくにあったポリ容器を持ちげた。の液体がチャプチャプと音をてる。ガソリンの刺激臭がくなった。
「何をするつもりなの?」
彼は蓋をけ、にガソリンをまき始めた。
「古い倉庫、古い薬品、災事故。言い訳はいくらでもある。おとおの母親はになる」
私は必にを稼いだ。
「いつから計画していたの?」
「この世には2種類のしかいない。を踏みつけると、踏みつけられる。僕はもう者ではきないと決めたからだ」
「義父を殺し、義母を殺し、私まで殺そうとしているのね」
彼は笑った。
「義父はぬべきだった。義母は代償を払うべきだった。そして君は、りすぎた」
その瞬、から拡声器の声が響いた。
「裕、おは包囲されている。ライターを捨て、両をげろ」
広告
裕さんの顔がりで歪んだ。
彼はのライターにをつけた。
「やめて!」
私の叫びが倉庫に響いた。
けれど、彼はライターを薬品容器の方へ投げた。
乾いた音の、炎が赤い獣のように広がった。爆発音が倉庫を揺らし、黒煙がちのぼった。警察官がなだれ込み、消器のいがった。
私は誰かに引き倒された。田弁護士だった。母の縄が切られ、救助されるのが煙の向こうに見えた。
裕さんは警察官2に制圧されていた。シャツの裾が燃え、腕と肩にが移っていた。っていた顔は炎と憎しみで歪んでいた。
々が褒めた完璧な男の姿は、もうどこにも残っていなかった。
あの夜、燃えたのは古い倉庫だけではなかった。裕さんがかぶっていた仮面も、完全に燃え落ちた。
私は煙を吸ったため病院で検査を受けた。母もショックと煙の吸入で晩酸素マスクをつけることになった。裕さんはき残ったが、顔の片側と腕にい傷を負い、厳な監で治療を受けた。
その、警察の捜査が始まった。
義母のマットレスのと裕さんの斎から見つかったいは、義母の血液から検された成分と致した。毒物検査の結果、ずれの写真、義母の帳、引に作られた遺言、私名義の額保険契約、州きの航空券、そして倉庫での録音。
広告
すべての証拠が、網の目のように彼を締めつけていった。
私は事聴取の途で何度も言葉に詰まった。彼を同してではない。自分の結婚活の3が、最初から計画の部だったという事実が苦しかった。
義母は治療の末、危を脱した。ずれが治るにはいが必だったが、薬の響が抜けるにつれ、識は以よりはっきりした。
見いにった、佳さんは痩せたで私のを握った。
「おには、すまなかったね。私がくて、のの悪を見ても、その名を呼ぶことができなかった」
私はすべてを許すとは言えなかった。けれど、く罪悪のできてきたに、さらにを投げる気にもなれなかった。
「自分の罪は、自分で責任を負うべきです。佳さんはき延びました。それで、まだできることがあります」
佳さんはその、捜査に協力した。義父のに関する沈黙、息子への恐怖、財産類が悪用された経緯。すべてを話す決をした。
遺言は無効となり、裕さんが狙っていた財産は訴訟に凍結された。
裕さんは、義母への殺未遂、私への殺害計画、保険詐欺未遂、監禁、脅迫、証拠隠滅を目とした放、その複数の罪で起訴された。裁判の末、い刑がされた。
私は続きが終わると、すぐに婚届を提した。署名するは震えなかった。
私のの最の震えは、あの古い倉庫で燃え尽きていた。
その、私は母と緒に田舎へ戻った。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
離婚半年後、元義母が私の新居を奪いに来た
離婚から半年。十歳の娘ユアと新居で暮らし始めたゆいのもとへ、元義母の智恵子が引っ越しトラックを連れて現れた。「今日から同居ね」と一番広い部屋を使おうとする智恵子は、その家を息子が買ったものだと信じ込んでいた。実際には、ゆいが自分の収入で購入した家だった。離婚の事実を告げても引き下がらず、今度は不倫を疑い始める元義母。さらに、元夫が隠していた裏切りまで明らかになり、ようやく手に入れた母娘の平穏な暮らしが脅かされていく。嫁姑|裏の顔|絶縁|金銭問題|不倫2.0万字5 1161 -
完結第15話
正月、娘を家政婦扱いした義実家――私が下した決断
43歳のゆり子は、13歳の娘・美咲を連れて再婚した。しかし、結婚前は優しかった夫の賢二は、家事を押しつけ、娘の食事まで平気で奪うようになる。 迎えた初めての正月。夫の実家へ帰省した母娘を待っていたのは、休む間もない家事と姑からの冷たい仕打ちだった。さらに元旦、親戚の子どもたちがお年玉をもらう中、美咲だけが「他人だから」と仲間外れにされてしまう。人生逆転|嫁姑|夫婦|第二の人生|絶縁|親子関係1.9万字5 783 -
完結第15話
義母の老人ホーム代120万円を勝手に約束した夫
医療機器メーカーで働く結衣は、結婚以来、夫の翔太と義母の幸子に頼まれるまま、家電の買い替えや旅行代を負担してきた。月7万円の仕送りも、半分出すと約束した夫は一円も払わない。それでも家庭を壊したくない一心で我慢していたが、義母はついに結衣の勤務先へ送金を催促する電話をかけてくる。さらに夫は、義母が希望する高級老人ホームの入居金120万円まで、結衣に無断で支払う約束をしていた。夫のスマホに届いた一通のLINEをきっかけに、結衣は自分の人生を取り戻す決意をする。人生逆転|嫁姑|夫婦|絶縁|介護|金銭問題2.7万字5 1836 -
完結第15話
15年無給で働いた若女将を追い出した老舗旅館の末路
老舗温泉旅館「鶴の湯」に嫁いで15年。若女将の美里は一度も給料を受け取らず、料理から接客まで休む間もなく働いてきた。ところがある日、義母と夫はSNSで人気を集める若い女性を新しい若女将に迎え、美里を「時代遅れ」と追い出してしまう。長年守ってきた味も、常連客との約束も、彼らには何の価値もなかった。しかし、美里が去った翌朝から、旅館では思わぬ問題が次々と起こり始める。15年間、あの宿を本当に支えていたのは誰だったのか。職場逆転|人生逆転|嫁姑|第二の人生2.2万字5 491 -
完結第13話
産後の私に義母の世話を押しつけた夫の絶縁宣言
二人目を出産したばかりのレナは、母に二週間だけ家事と長男の送迎を頼んでいた。ところが夫の悠人は、相談もなくその約束を断り、代わりに自分の母親を呼んでしまう。手伝いに来たはずの義母は食事も洗濯もレナ任せ。夫に訴えても「家族なんだから」と取り合ってもらえない。とうとう子ども二人を連れて実家へ帰ったレナに、悠人は「母さんとは縁を切る」と宣言する。しかし、その言葉を聞いたレナが夫に求めたのは、思いがけないことだった。嫁姑|第二の人生|絶縁|親子関係1.3万字5 895 -
完結第15話
夫の出張中に義両親が居座った――電話で判明した正体
夫の海外出張中、蒼井の家に突然やってきたのは、十年ぶりに顔を合わせる義両親だった。「息子から同居の許可をもらった」と言い張る二人は、家の料理を食べ尽くし、蒼井や娘のメイの服まで勝手に着て破いてしまう。追い出そうとしても、二人は居座るばかり。頼みの夫は電波の届かない場所にいて、連絡も取れない。そんな中、ようやく夫から電話がかかってくる。ところが、蒼井の訴えを聞いた夫は、思いもよらないことを口にした。厚かましい訪問者に振り回された母娘の、騒がしくも痛快な逆転劇。嫁姑|夫婦|絶縁|修羅場1.4万字5 668 -
完結第15話
高齢女性を後回しにした受付――絵を替える女性の正体
町の内科クリニックに長年通う68歳の静子は、知人の山田さんが何度も診察の順番を飛ばされていることに気づく。受付の沼田は、特定の患者ばかりを優先し、理由を尋ねる山田さんには冷たい態度を取っていた。やがて山田さんは、受診することさえ怖くなってしまう。心配した静子が付き添った日、山田さんの顔色が急に悪くなるが、受付は取り合おうとしない。そんなとき、待合室で絵を掛け替えていた一人の女性が口を開く。その何気ない一言から、長年見過ごされてきた受付の問題が明らかになり始める。人生逆転|介護|金銭問題1.4万字5 345 -
完結第15話
認知症の父を「逮捕しろ」と叫ぶ姑――孫の一言で形勢逆転
夫を突然亡くした佳苗は、幼い二人の子どもを育てながら、認知症になった父の介護も引き受けることになった。心身ともに限界を迎えるなか、支えになってくれたのは小学六年生の息子・亮太だった。家族で父の実家へ引っ越し、ようやく穏やかな暮らしを取り戻したかに思えたが、何かにつけて佳苗を責める姑が、またもや騒ぎを起こす。ある日、仕事中の佳苗に亮太から緊急の電話が入った。急いで帰宅すると、家の前にはパトカーが。家の中でいったい何が起きたのか。姑の言い分に対し、亮太が語り始めたのは……。祖父母と孫|嫁姑|絶縁|親子関係|介護|認知症1.6万字5 425