"退職金より重い家計簿" 第2話
40のが、たった言で値切られた。
夫婦の歴史は、隆にとってその程度のものだったのだ。
麻美は玄関の取っにをかけた。
「隆さん、しばらく1で暮らしてください」
「戻ってこい。朝飯はどうするんだ」
「ご自分で考えてください」
麻美は振り返らなかった。
玄関の扉を閉めた瞬、の空気が頬に刺さった。たいはずなのに、議と息がしやすかった。
ののには、まだ朝の静けさが残っていた。所のの庭から、洗濯物を干す音が聞こえる。いつもなら慌ただしく朝の片づけをしているに、麻美はさなカバンを持って歩きしていた。
向かった先は、くなった母が残してくれたさな平だった。
そこは古いだった。広くもなければ、便利でもない。畳はし焼けし、台所の窓枠にもの跡があった。
それでも、鍵をけてに入った瞬、麻美は胸の奥がしだけ緩むのをじた。
「ただいま、お母さん」
誰もいない部に、そう声をかけた。
返事はない。
けれど、静かな空気が麻美を受け止めてくれているようだった。
麻美はカバンを畳のに置き、押し入れの奥へ向かった。そこには、何もから切にしまっていた茶の封筒があった。
隆が度も気に留めなかったもの。
麻美が1で守り続けてきた記録だった。
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麻美は畳のに正座し、茶の封筒を膝のに置いた。
を伸ばした、指先がし震えた。りのせいなのか、のせいなのか、自分でも分からなかった。
封筒のには、通帳の控え、固定資産税の通、自宅の登記類、そして古い計簿が入っていた。
「丈夫。ちゃんと残してある」
麻美は自分に言い聞かせるように呟いた。
まずいたのは、自宅の登記類だった。
所者欄には、はっきりと「麻美」の名が記されていた。
あのを買った頃、隆はのローンと仕事の付きいでがいっぱいだった。休もゴルフやみ会にかけ、の続きのことなどほとんど見ようとしなかった。
「名義なんて任せる。夫婦なら同じだろう」
隆は当、そう軽く言った。
麻美はその言葉を覚えている。だから続きをめ、自分の貯と母から受け継いだおを使ってをした。活費がりないも、しずつ返済を続けた。
次に確認したのは、老用に積みててきた定期預だった。
名義は、麻美。
隆が度も見ようとしなかった通帳だった。
隆はずっと、自分が稼いできただけでが回っているとっていた。けれど実際には、み会代、検代、急な修理費、娘の学費、の買い替え、親戚付きいの費。りないたびに、麻美が内職代や母の残したおで補っていた。
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麻美は古い計簿をいた。
赤い印がついたがいくつも並んでいる。
「活費 3万円補填」
「検代 12万円 麻美座より」
「娘の教材費 4万円 内職代より」
「根修理費 部母の遺産より」
数字は淡々としていた。
けれど、その数字のつつに、麻美のと夫と眠れない夜が詰まっていた。
「私、何もしてこなかったわけじゃない」
声にした途端、涙が粒だけ計簿の端に落ちた。
泣くつもりはなかった。
昨夜も、今朝も、泣かなかった。
けれど、類のに残された自分のを見た、麻美は初めて、自分がどれほど踏ん張ってきたのかをった。
その、携帯話が震えた。
画面には隆の名がていた。
麻美はし迷ってから話にた。
「おい、通帳はどこだ。印鑑も見当たらんぞ」
予通りの声だった。
麻美は計簿を閉じた。
「確認してからお話しします」
「何を確認するんだ。の通帳を持ちしたのか」
「通帳の名義です」
「名義なんか関係ない。が俺のなら俺の物だ」
麻美は目を閉じ、く息を吸った。
「では、名義が誰かもらずに、今まで私を責めていたのね」
話の向こうで、隆の呼吸が荒くなった。
「屁理屈を言うな」
「、話しましょう」
麻美は初めて、自分から話を切った。
はまだし震えていた。
けれど、議と怖くはなかった。
類は嘘をつかない。
そして麻美は、ようやく自分が守ってきたもののさをったのだった。
その頃、隆は自宅での引きしをけていた。
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