みかん小説
本棚

"夫の知らない家" 第8話

そして、さくげました。

その仕に、私は言葉を失いました。

隠そうとしていたの態度ではありませんでした。

むしろ、ずっと何かを抱えたまま、いつかこのが来るのを分かっていたの顔でした。

奥から、さな音が聞こえました。

ぱたぱたと軽い音。

私は反射にそちらを見ました。

そして、あの男の子が現れました。

青いコップを持ったまま。

男の子は也を見ると、嬉しそうに笑いました。

けれど、そのあと私を見ると、を止めました。

らないを見る目でした。

当然です。

私は、そのさな顔を見つめたまま、けませんでした。

也が静かに言いました。

「航」

男の子が也を見げました。

「このは?」

也はしだけを置きました。

そして、い声で言いました。

「おじさんの、事な

その言葉を聞いた瞬、胸の奥がし痛みました。

妻、とは言わなかった。

でも、嘘でもありませんでした。

航はまだよく分かっていない顔で、私を見ていました。

私はしゃがみ込み、できるだけ静かに言いました。

「こんにちは」

航はし迷ってから、さくげました。

その姿は、どこにでもいる普通の子供でした。

私は急に苦しくなりました。

この子は何も悪くない。

何もらない。

それなのに私は、この子のを疑い、怖がっていた。

その事実が、胸の奥にく落ちました。

玄関の向こうから、配の女のが静かに言いました。

「どうぞ」

私はその声に導かれるように、初めてあのを踏み入れました。

そこには、私のらないがありました。

也が黙って通い続けた理由。

誰にも言えなかった事

そして、私がこれから向きわなければならない現実。

そのすべてが、このらないにありました。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: