みかん小説
本棚

"消された両親の席" 第5話

私たちは、まるで普段の休のように、穏やかなを過ごし始めました。

しばらくすると、式から慌ただしい音が聞こえてきました。

スタッフたちが、何やら血相を変えてき来しています。

変です。すぐ支配を」「オーナー様から直接……本当にそのような指示が?」

断片な会話が、ロビーまで届いてきました。

私と夫は顔を見わせました。

そして、また静かに微笑みました。

「始まりましたね」

私がさくつぶやくと、夫はく答えました。

「ああ」

計を見ると、ちょうど披宴が始まる刻でした。

からは、しずつざわめきがきくなっていきました。

華やかだった空気が、困惑へと変わっていく。

そんな気配が、ロビーにまで伝わってきました。

私は静かにお茶をに運びました。

温かさが喉を通り、胸の奥へ落ちていきます。

夫が、私のにそっと自分のねました。

丈夫だ」

そのの温もりが、に染みました。

私たちは違ったことをしているのではありません。

ただ、息子に切なことを教えようとしているだけ。

を見た目や肩きで判断してはいけない。

本当に切なものは、お位ではない。

それを忘れてしまった息子に、私たちは最の親としての役目を果たそうとしているのです。

やがて、披宴会の扉がきくきました。

広告

青ざめた支配が、麗華さんのお父様の元へ駆け寄るのが見えました。

お父様の表が、みるみる変わっていきました。

驚き。

困惑。

そして、恐怖。

健太郎と麗華さんも、何事かとづいていきます。

全体が、しんと静まり返りました。

夫ががりました。

「そろそろくとするか」

「ええ」

私は頷き、夫と並んで歩き始めました。

けれど、向かったのは式ではありません。

宴会の方でした。

宴会の入づくと、支配が顔を青くして麗華さんのお父様に説しているところでした。

変申し訳ございません。先ほどの様ですが……」

支配の声は震えていました。

麗華さんのお父様は、苛ったように言いました。

「ああ、もう帰ったでしょう。あんな違いなたちは、く帰ってもらって正解でしたよ」

「いいえ、その……実は、様は、このグループの……」

そこで、麗華さんのお父様の表が変わりました。

グループ? 何の話です?」

が、静かになっていきました。

支配げ、丁寧に続けました。

「全国に級ホテルとブライダル事業を展するグループの創業者であり、現会でいらっしゃいます」

内の空気が、瞬で凍りつきました。

麗華さんのお父様の顔から、血の気が引いていくのが分かりました。

広告

「何を言って……」

支配はさらに続けました。

「この式も、グループの傘でございます。つまり、がこのホテルのオーナーでいらっしゃるのです」

「嘘だ!」

健太郎が叫ぶように言いました。

「父さんは田舎ので、ただの……」

「それは退職の経歴かとじます」

支配は、あくまで丁寧な態度を崩しませんでした。

代でホテル・ブライダル事業を築きげられた方で、業界ではらぬ者はおりません。現も会として、グループ全体を統括していらっしゃいます」

麗華さんのお母様が、慌ててスマートフォンを取りしました。

震える指で検索し、画面を見た瞬、顔を変えました。

「あなた……これ……」

画面には、グループ会の記事が表示されていました。

全国展のホテルチェーン。

商数百億円規模の企業グループ。

その創業者として掲載されている夫の写真。

そこには、経済界の鎮たちと並んでつ貴の姿がありました。

内のゲストたちも、次々とスマートフォンを取りし始めました。

「本当だ」「グループって、あの?」「まさか、あの方が……」

ざわめきが波のように広がっていきました。

健太郎の顔が、みるみる青ざめていきます。

麗華さんが震える声で言いました。

「でも、お母様は、ただの陶芸って……」

支配は、私の方へ度丁寧にげてから続けました。

美智子様は、国宝に認定されている陶芸でいらっしゃいます」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: