"海が隠した最後の写真" 第2話
落ち着いた頃、鈴は慎に尋ねた。
「お母さん、健太さんの遺品ので、何か参考になりそうなものは残っていますか」
芳は涙を拭い、奥の部へ向かった。そして古いタンスの引きしから、冊の記帳を取りした。
「健太が学代に使っていた記です。この、私は毎晩これを抱いて眠りました」
鈴は両で記を受け取った。最のページをくと、慌ててかれたような文が残っていた。
――桜の秘密。僕たちは、果たして耐えられるだろうか。
田刑事と鈴警部の線が交わった。
数、は父島にりった。港には臭い潮の匂いが漂い、カモメの鳴き声が空に響いていた。鈴は古い帳をき、のメモを確認した。
「かもめ荘は港から歩いて分ほどだ」
狭いをむと、ペンキの剥げた古い板が見えてきた。民宿のでは、代半に見える主の野が布団を干していた。
鈴が警察帳を見せると、野は瞬だけ目を細めた。
「のことですか。あの学さんたちのことですね」
「当の状況を覚えていますか」
田刑事が帳をすと、野はの良さそうな笑みを浮かべた。
「覚えていますとも。桜さんと健太さんは、本当に仲が良かったですよ。どこへくにもをつないで、互いをいっているようでした」
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鈴は黙って野の顔を見た。笑顔は柔らかいが、目の奥が笑っていなかった。
「当、に宿泊客はいましたか」
「京からで来たさんという方がいましたね」
午、捜査チームはに連絡を取った。話の向こうで、は驚いたように声をげた。
「あの学たちですか? いや、見た目は普通でしたけどね、夜になるとよく喧嘩していましたよ。うるさいくらいに」
野の証言とは正反対だった。
「何が原因か分かりますか」
「詳しくは分かりません。ただ女の方が男に鳴っていて、秘密がどうとか、そんな言葉が聞こえました」
鈴は受話器を置き、机のに線を落とした。
仲が良かったと語る民宿の主。喧嘩していたと語る宿泊客。健太の記に残された「桜の秘密」。
越しに、事件はしずつ別の顔を見せ始めていた。
翌、鈴警部と田刑事は、の捜査記録に「最の目撃者」として名が残っていた漁師、を訪ねた。は港の隅で網の入れをしていたが、警察だと分かるとを止め、目をそらした。
「の学たちのことかい」
「当の供述では、は見らぬ男と緒にを借り、夜釣りへかけたとあります」
田が記録を読みげると、は面倒くさそうにをかいた。
「さあな。昔のことだから記憶が曖昧でね」
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鈴は類を枚取りし、のに置いた。
「には、その男の相まで詳しく話しています。百センチほど、がっしりした体格だと」
の目が瞬揺れた。しかしすぐに首を振る。
「夜で暗かったから、顔なんてよく見えなかったよ」
鈴はそのさな揺を見逃さなかった。
「では、がどちらへ向かったかは覚えていますか」
「それも分からんね」
はそれきりを閉ざした。
そのの夕方、は当の交番所だった退職警察官、渡辺に会った。古びた堂で向かいうと、渡辺は焼酎のグラスを見つめながらいをいた。
「あの頃は、本当にどうしようもなかった。きちんと捜査したかったが、からの圧力がひどくてな」
「どのような圧力ですか」
鈴の声がくなる。
「観のイメージを損なうから、く片付けろという圧力だよ。証拠もないまま、滑落事故として処理してしまった。俺は罪だ」
渡辺はうなだれた。
「審な点はありましたか」
「審な点だらけだった。あの子たちが消えた、笠原の気はこれ以ないくらい良かった。もなく、波も鏡のようだった。を滑らせるようなじゃなかったんだ」
翌朝、田刑事が気象資料を持ってきた。
「1989815、笠原の気象状況です。、波0.5メートル。元所の話は正確でした」
鈴は黙って資料を見つめた。
民宿の主は仲が良かったと言い、宿泊客は喧嘩していたと言った。最の目撃者である漁師は、の供述を覆した。
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