"90件の着信とハワイの海" 第6話
私はもう関係ありませんから」 『待ってくれ、蒼太が……』 「蒼太君には申し訳ないとっています。でも私はもうお伝いできません。あなたたちが選んだですから」
きっぱりと告げました。孫のことは確かにが痛みますけれど、それは私の責任ではありません。
『母さん、お願いだから……』 「さようなら、直哉。元気でね」
話を切りました。がし震えていましたけれど、悔はありませんでした。むしろ胸の奥から清々しさが湧いてくるのを返します。
ベランダにると、いつも通り美しいが広がっていました。波の音がを落ち着けてくれます。夕が平線に沈みかけていました。「これで本当に終わった」とつぶやくと、肩の荷がりた気がしました。もう誰にも縛られない、誰にも振り回されない。この自由こそが、私がに入れたかったものなのです。
あの話から3ヶが経ちました。私のハワイでの活はますます充実しています。毎朝目覚めると同にじる解放。誰にも気を使わず、自分のベースで1を始められる幸せ。この覚は何者にも代えがたいものです。
今朝もいつものようにビーチを歩きました。朝が砂浜を照らし、波が優しく砂を撫でていきます。裸で歩く触がよく、の裏に伝わってきました。
「おはよう、クミさん」
広告
すれ違う々が笑顔で挨拶してくれます。ここには温かいコミュニティがあるのです。
午はウクレレのレッスンに参加しました。3ヶには触ったこともなかった楽器ですが、今では簡単な曲なら弾けるようになっています。「クミさん、達がいわね」と先が褒めてくれました。嬉しくて自然と笑顔がこぼれます。何かを学ぶび、しいことに挑戦する楽しさ、齢なんて関係ないのです。
昼はあき子さん、け子さん、みよこさんとお気に入りのレストランでランチです。
「クミさん、すっかりハワイのになったわね」とけ子さんが笑います。 「本当ね、もう本に戻る気はないでしょう」というみよこさんの言葉に、私は頷きました。 「ええ、ここが私の居所ですから」
会話のでふと本での活をいすことがありますけれど、それはい昔の来事のようにじられるのです。
午は本語ボランティアの活に参加しました。現のたちに本語を教える活です。
「クミ先、ありがとうございます!」
徒さんたちが笑顔でお礼を言ってくれます。誰かの役にてている実、尊されているび、これが本当の幸せなのだと気づかされます。
方、本の息子夫婦は今も苦労しているようです。共通のを通じて折り報が入ってきます。
広告
事代サービスを週3回利用しているそうですが、それでも追いつかず、は散らかったままで夫婦喧嘩も絶えないとか。蒼太は学で問題が増え、先から何度も呼びされ、庭環境について指摘されているとのこと。
経済にも厳しいようです。、事代費、シッター代で、に20万円以の支増です。
「あのたち、今頃悔してるでしょうね」と友からの報告を聞いて、あき子さんが言いました。 「自業自得よ」と私は静かに答えます。同する気持ちはありません。
親戚や友からの評判も良くないそうです。「お母さんを追いすなんて親孝ね」という声が周囲からがっているとか。社会信用も失いつつあるようです。でも、それは私のったことではありません。
夕方、ビーチに座ってサンセットを眺めました。空が青からオレンジ、そしてへとを変えていきます。この美しい景をに佇んでいられる幸せ。スマートフォンを取りして写真を撮りました。本の友たちに送ると、すぐに返信が届きます。
『素敵。私も老はそうしたいわ』 『羨ましい。クミさん、本当に幸せそうね』
そうです、私は本当に幸せなのです。部に戻ると、ベランダで夜に当たりながらこの3ヶを振り返りました。
あの配置の、「10お疲れ様でした」
と言われたとき、私ので何かが解放されたのです。それは「もう自由になっていいんだ」という許のようなものでした。
今、私は誰にも気を使いません。誰にも文句を言われません。ただ自分として自由にきています。これが本当の幸せです。
は1度きりです。族のため、誰かのためだけにきる必はありません。もちろん、から支えうことは素らしいことです。けれど、それが当然だとわれ、謝もされず、最にはたく追いされる。そんな理尽に屈する必はないのです。
自分のは自分のものです。幸せになる権利は誰にでもあります。理尽にち向かう勇気を持ってください。もしあなたも同じような状況にいるなら、1でし続ける必はありません。正当な権利を主張し、自分を守るを起こしてください。私のように、しいを選ぶ勇気を持ってください。
窓のから波の音が聞こえてきます。この音を聞きながら眠れる毎。もきっと素らしい1になる。そう確信しながら、私は目を閉じました。私の物語はここで終わりではありません。これからも自由で幸せな々が続いていくのです。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
昭和五十一年、消えた父の声を十八年後に聞いた
昭和51年、深夜番組の途中で言葉を止めたアナウンサー・孝一が、そのまま姿を消した。局から消えた200万円を持ち逃げしたと疑われ、家族には盗人という噂だけが残る。18年後、娘の奈津美は放送局の壁から、当夜の未放送音声を記録したテープを発見する。 調査の末、孝一はダム建設に伴う戸籍偽装と土地補償の不正を知り、死亡したことにされた女性の娘を守ろうとして町を離れたと判明する。200万円の受領書も局幹部による偽装だった。しかし危険が去った後も、孝一は家族に拒絶されることを恐れ、自ら帰らない年月を重ねていた。 奈津美たちは父と再会するが、すぐに昔の家族へ戻ろうとはしない。父の潔白だけでなく、その後の沈黙も記録に残し、それぞれの距離で関係を築き直す。資料館では途切れた放送と地域の声が保存され、孝一は新たな記録に《今度は、返事がなくても、自分から確かめる》と書き残した。昭和|ミステリー|真相|行方不明2.7万字5 122 -
完結第12話
ただいまの裏にあった10年
1985年8月15日、新潟県長岡市で、23歳の佐藤健一はいつものように工場を出たまま姿を消した。 自転車も、持ち物も、行き先も分からない。両親の誠とかず子は必死に息子を捜し続けたが、手掛かりは何ひとつ見つからなかった。 それから2年後、痩せ細った1人の男が佐藤家の玄関に立つ。 「ただいま」 失われた息子が帰ってきた――そう信じた両親は、彼を再び家族として迎え入れる。記憶を失っていても、生きて戻ってくれたならそれでいい。そう思いながら、佐藤家は少しずつ穏やかな日々を取り戻していった。 しかし10年後、差出人不明の小包が届く。 中に入っていたのは、小さな遺骨と、父が本物の健一に贈ったはずの腕時計。そして一枚の紙には、こう書かれていた。 「本物の息子さんをお返しします」 8年間、家族として暮らしてきた男は誰だったのか。 そして本物の健一は、あの日どこで何を奪われたのか。 失踪、偽りの帰還、そして名前を越えて残った家族の形を描く物語。ミステリー|行方不明1.7万字5 475 -
完結第13話
変な家
住宅情報サイトの編集者・森川直人のもとに、ある中古住宅の間取り図が届いた。埼玉県にある築28年の4LDK。一見ごく普通の家だが、洗面室と書斎の間には、どこからも入れない幅1メートルほどの「空白」がある。さらに、家族の生活動線から切り離された第二玄関、外からしか入れない物置、道路から見えない窓。現地を訪れた森川は、誰かを閉じ込めるための家ではないかと疑う。だが調査を進めると、別々の県に建つ2軒の家にも、まったく同じ奇妙な構造が見つかった。なぜ3人の男は、同じ「空白」を家の中に作ったのか。そして物置の奥から現れた金属扉の先には、28年間隠されてきたものが残されていた。ミステリー|真相|遺體発見|行方不明1.9万字5 277 -
完結第13話
7年目に開いた薬袋
昭和48年、広島県北部の小さな町で、誰からも慕われていた薬剤師・中村幸子が突然姿を消した。 彼女は「銀行へ行く」と言って薬局を出たまま戻らなかった。手には200万円の入った黒い鞄。けれど銀行には行っておらず、町の誰もその後の姿を見ていなかった。 真面目で優しく、患者一人ひとりに寄り添ってきた幸子。夫の哲夫は涙ながらに妻の帰りを待ち、町の人々も彼女の無事を信じ続けた。 しかし7年後、ある高齢女性の家から見つかった大量の薬が、止まっていた事件を再び動かす。 信頼されていた医師。閉ざされたままの薬局。消えた200万円。 幸子はなぜ、あの日すべてを終わらせようとしていたのか。 町の誰も疑わなかった“優しい人たち”の裏側に、7年間隠され続けた真実が眠っていた――。ミステリー|行方不明1.9万字5 1251 -
完結第11話
最終列車で消えた18歳
昭和63年、廃線前夜の最終列車に乗った18歳の娘が、途中で姿を消した。 終点に着いた車内には、旅行鞄と赤いマフラーだけが残されていた。 鞄の上には、駅長の父へ宛てた短い手紙。 《お父さんの決めた人生には戻りません》 娘は名古屋の短期大学へ進学する予定だったが、父は直前になって猛反対していた。 それから35年、娘の行方は分からないまま父は亡くなった。 翌年、解体中の旧駅で、伝言板の裏から薄い鉄箱が見つかる。 中には娘の受験票、12通の手紙、診断書、通帳、そして古い録音テープ。 受験票の裏には、失踪8日後の日付でこう記されていた。 《本人来校。入学辞退の意思なし》 ところが、その2日後には父の署名入りの辞退届が提出されていた。 さらに鉄箱から出てきた最終列車の切符には、改札鋏の痕が一つもなかった――。ミステリー|真相|行方不明1.6万字5 519 -
完結第11話
卒業3か月前に消えた娘
1995年11月、卒業まであと3か月だった富山大学4年生・大山蓮子が、突然消息を絶った。 家には財布も読みかけの本も残されていた。ところが、半年以上かけて集めた卒業論文の取材資料だけが、すべて消えていた。 蓮子は都市開発で土地を手放した住民たちを訪ね、補償金の記録を調べていた。失踪前、友人には「土地のお金を調べていたら、生きている人たちの話が出てきた」と漏らしている。 下宿に残された地図には、土地買収が行われた3つの地域を示す赤い丸。そして古い行政資料から浮かんだ担当者の名前は、失踪前夜に蓮子と口論していた叔父・達夫だった。 達夫には完璧なアリバイがあり、捜査はやがて縮小される。しかし6年後、赤い丸がつけられた土地の工事現場から、二重の袋で守られた2枚の書類が見つかった。 余白には蓮子の筆跡で、こう記されていた。 《単価に不自然な変更あり》 そして最後に――《担当者 大山達夫》。ミステリー|真相|行方不明1.6万字5 1151 -
完結第12話
消印は失踪の3日後
1996年、岐阜県北部の山あいの町で、配達中の女性郵便局員・小沢真紀が突然姿を消した。 郵便バイクは旧バス停のそばで見つかり、翌朝には河原で制服帽も発見された。警察は川への転落を疑ったが、真紀の姿はどこにもなかった。 それから25年後、閉鎖された旧郵便局の壁の中から、真紀の職員番号が書かれた郵便袋が見つかる。中には、亡くなったはずの人々に関する記録と、真紀が失踪3日後に投函した一通の手紙が残されていた。 そこに書かれていたのは、息子・拓海へ向けた不可解な指示。 「年賀状を全部調べて」 母は本当に川で消えたのか。なぜ死者の名前で年賀状が届き続けていたのか。そして父は、25年間何を隠していたのか。 届かなかった手紙が、長い沈黙の奥に封じられた真実を少しずつ暴いていく――。ミステリー|行方不明1.8万字5 320 -
完結第10話
27年後、娘は父の葬儀に帰ってきた
1995年、学校帰りの10歳の少女・美穂は、灰色の服を着た女に連れられ、そのまま姿を消した。 母・佐和子は27年間、娘の帰りを待ち続けた。だが夫の正人は、地域では「娘を捜し続ける父」として知られる一方で、どこか不自然な沈黙を守っていた。 そして27年後、正人の葬儀の日。 遺族席の佐和子の前に、見知らぬ大人の女性が現れる。彼女が差し出したのは、美穂が幼い頃になくしたはずの花形の髪留めだった。 「お母さん、迎えに来たよ」 再会のはずの言葉は、なぜか冷たかった。 娘はなぜ母を恨んでいたのか。失踪当日、母を学校から遠ざけた電話は何だったのか。そして、27年間隠され続けた手紙と書類が、家族の嘘を静かに暴き始める――。ミステリー|真相|行方不明1.5万字5 302 -
完結第8話
サービスエリアで消えた三人
大型サービスエリアで、36歳の母親と9歳の息子、6歳の娘が突然姿を消した。残された夫・修一はテレビに出演し続け、「妻と子供たちを見かけた人は連絡してください」と14年間訴え続けた。世間は彼を、家族の帰りを信じて待つ父親として記憶していた。ところが事件から14年後、100キロ近く離れた古い貸倉庫の床下から黒い旅行鞄が発見される。中に入っていたのは、失踪した妻の財布と、息子が旅行当日に履いていた片方のスニーカー。そして、その倉庫の過去を調べると、夫がかつて関係を持っていた女性の名前が浮かび上がる。14年間誰も疑わなかった「3人はサービスエリアで消えた」という前提が、そこから静かに崩れ始める。ミステリー|真相|遺體発見|行方不明1.1万字5 254 -
完結第11話
1億8400万円の夜逃げ
2016年、8000万円の借金を抱えていた28歳の高橋健人は、ロト1等・1億8400万円を受け取った直後、忽然と姿を消した。 部屋からはパスポートと衣類の一部がなくなり、本人名義でフィリピンへ出国した記録も残っていた。警察も家族も、彼は借金から逃れるため海外へ消えたのだと考えた。 しかし9年後、麻布の再開発工事中、かつて健人が暮らしていたアパートの地下から、コンクリートに埋められた旅行鞄が見つかる。 中にあったのは、ひとりの男性の骨と、黒縁眼鏡。 さらに、当時見過ごされていたノートパソコンから、不審な検索履歴が浮かび上がる。 本当にロト1等に当たったのは誰だったのか。 そして、9年前に海外へ消えたはずの男は、何を隠していたのか。 1枚の宝くじが、親友同士の運命を大きく狂わせていく――。ミステリー|行方不明1.6万字5 399