"龍神窟に眠る約束" 第3話
美咲は拳を握った。
拒絶されることは予していた。
けれど、あの沈黙はただ忘れたいというものではなかった。
何かを隠している沈黙だった。
公民館のにると、塀にもたれて煙を吸っている男がいた。
「お、美咲だろ」
男は煙のをもみ消し、づいてきた。
「俺だよ。佐藤哲也」
美咲はし目を見いた。
幼なじみの哲也だった。子どもの頃、港で緒に遊んだは、に焼けた顔の漁師になっていた。
「哲也……久しぶり」
「連絡もなしに帰ってくるとはな。撮か?」
哲也はるく笑い、美咲の肩を軽く叩いた。
その仕は昔と変わらなかった。
美咲はしだけ緊張を解いた。
「20のことを調べてるの」
哲也は周囲を度見回し、声をくした。
「このの連は、あの事件の話になるとを閉ざす。のイメージが悪くなるのを嫌がってるんだろう」
「それだけ?」
美咲が問い返すと、哲也は瞬だけ言葉に詰まった。
しかしすぐに笑った。
「何か必なら俺に言えよ。できる限り伝う」
その言葉は優しかった。
けれど、美咲は哲也の目の奥に、わずかな怯えのを見た気がした。
翌、美咲の携帯話が鳴った。
画面にはらない番号が表示されていた。
「菊池美咲ディレクターでいらっしゃいますか。漁業組のが、度お会いしたいと申しております」
話の声は、の秘だった。
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美咲は港が望できる建物へ向かった。最階にあるの事務所は、の規模には釣りいなほど豪華だった。分い絨毯、きな革張りのソファ、壁には価そうな絵が掛けられている。
は窓際にっていた。
20、港で腕を組んでいた男の面はあったが、今はさらに太り、顔には欲望と権力が染みついていた。
「よく来たな。美咲ディレクターと言ったか」
はゆっくり振り返り、笑った。
その笑みには温かさがなかった。
「まあ、座れ。茶でもめ」
美咲はソファに座ったが、差しされた湯呑みにはをつけなかった。
はそれを見て、で笑った。
「でいろいろ嗅ぎ回っているそうだな」
「ドキュメンタリーを制作しています」
「20の事故なら、もう終わった話だ」
は湯呑みを置き、い声で続けた。
「になし。きているは、きていかなきゃならん。おもこののだ。にを塗るような真似をしてどうする」
美咲はまっすぐを見た。
「私は、ただ真実がりたいだけです」
「真実?」
はの端を歪めた。
「真実は20にらかになっている。運な事故だった。それだけだ」
その声には、結論を変える気はないという圧力があった。
美咲は黙っていた。
は子の背にもたれ、目を細めた。
「藪をつついて蛇をすような真似はするな。
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これは、おのために言っている。最の忠告だ」
美咲は何も答えず、静かにちがった。
事務所をる、背にの線をじた。
宿に戻った美咲は、20の流データと気象記録を広げた。事故当の潮の流れ、向き、嵐の発刻。何度も照らしわせるうちに、赤いペンがある点で止まった。
龍神窟の2キロ点。
公式の捜索範囲から、わずかにれた所だった。
「ここだ」
美咲は図を見つめ、そう呟いた。
翌朝、借りていた型ボートを確認しに港へ向かった。ところがボートのには黒い液体が広がっていた。
「エンジンオイル……?」
美咲がしゃがみ込んだ、背から哲也の声がした。
「美咲、こんな朝くにどうした」
「ボートのエンジンからオイルが漏れてるの」
哲也は具を取りにり、慣れた様子でエンジンカバーをけた。
「オイルホースが古くなって切れてるな。配するな。俺が直してやる」
1、哲也は額の汗を拭いながらちがった。
「よし、これで丈夫だ」
「ありがとう、哲也。あなたがいなかったら変だった」
美咲はほっと息をついた。
しかしその夜、哲也は暗いでの秘と会っていた。
「美咲は、龍神窟のへきそうだ」
哲也は煙を吸いながら、い声で報告した。
秘はたい目で哲也を見た。
「余計なことは考えるな。
言われた通りにけ」
哲也は唇を噛み、何も言い返せなかった。
翌、美咲はの事務所ビルを撮するふりをして、望レンズを向けた。
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