"トランクの中の9年" 第4話
5歳の子どもが、自分でトランクに入り、自分で閉じることはできない。
誰かが、匠をそこに入れた。
そしてその、最に匠と緒にいたのは、父親の岡田悟だった。
警察はをさらに詳しく調べた。
トランクの内張りのから、とのサンプルが見つかった。分析の結果、その部は、匠が消えた熊本央公園周辺のと植物の特徴に致した。
悟の話は崩れた。
息子は公園で消えたのではない。
あの、公園のくで、トランクに入れられた能性がかった。
ニュースは全国に広がった。
テレビでは、幼い匠の笑顔と、から引きげられる錆びたトヨタの映像が並べて放送された。
「9方だった、父親の内で発見」
その見しは、本に衝撃を与えた。
熊本央公園には、や子ども向けのおもちゃが置かれるようになった。砂のそばは、自然発な追悼の所になった。
警察にとって最もつらい仕事は、母親の美咲へ事実を伝えることだった。
彼女は今、さな沿いの町で暮らし、図館で働いていた。2の刑事がを訪ねると、美咲はドアのにつ彼らの顔を見ただけで、何かを悟った。
9、彼女は細い希望にすがっていた。
もし誰かに連れられていたなら。
もしどこかできているなら。
いつか、匠が帰ってくるかもしれない。
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その希望は、その、完全に消えた。
刑事たちは、のこと、トランクのこと、ミッキーマウスのぬいぐるみのことを伝えた。
美咲の世界は、2度目に崩れた。
そして今、警察の目は1つになった。
岡田悟を見つけること。
彼はもはや、ただの方者ではなかった。自分の息子のに関わった最容疑者だった。
警察は特別捜査本部を設置した。
悟の写真は駅や郵便局、ニュース番組にされた。そこに写っていたのは、9の若い父親ではない。監カメラに映った、痩せ、疲れ、目に濁ったを宿した男だった。
捜査員たちは、悟の最の数週を調べた。
彼は逃の準備をしていた。
失踪の1ヶ、座からほぼ全額を引きしていた。具やを匿名のオンライン取引で売り、携帯話を使わなくなり、SNSアカウントも削除していた。
アパートには、記もも残されていなかった。
ただ、根裏の隅に、古い聞記事の切り抜きが束になって隠されていた。
すべて、匠の失踪に関する記事だった。
1目、2目、5目。
悟はずっと、自分の嘘が世でどう扱われているかを見続けていた。
捜索は数週続いた。
目撃報は全国から寄せられた。で見た、カフェで見た、駅で似た男を見た。警察は1つずつ確認したが、すべて空振りだった。
岡田悟は、まるで空気に溶けたように消えていた。
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突破は、いがけない所から来た。
福岡のさな宿を経営する配の男から、警察に話が入った。
約1ヶ、偽名を名乗る静かな男が部を借りたという。2ヶ分の賃を現で払い、ほとんどにず、誰とも話さなかった。
宿の主は、テレビで指名配の写真を見るまで、気に留めていなかった。
だが、写真の男は、自分の宿にいる客に違いないとじた。
警察はすぐにいた。
宿の周囲は封鎖され、部のには警察官が配置された。何度もドアを叩き、けるよう命じた。
返事はなかった。
い協議の、ドアは破られた。
部は狭く、ほとんど空だった。にはい布団、さなテーブル、閉じられた窓があるだけだった。
布団のに、男が横たわっていた。
警察官が慎に体を確認した。
それは岡田悟だった。
彼はすでにんでいた。
医師は、から数が経っていると判断した。体に暴力の痕跡はなかった。布団のそばには、い眠薬の空の包装が落ちていた。
自殺だった。
9、秘密を隠し続けた男は、それがるみにたあと、そのさに耐えられなかった。
さなテーブルのには、ノートから破った1枚のが置かれていた。空ののボトルの隣で、はわずかに曲がっていた。
そこにかれていたのは、謝罪でも、告でも、許しを求める言葉でもなかった。
震える文字で、たった3つの言葉が残されていた。
「忘れようとした」
それが、岡田匠事件に残された最の言葉だった。
悟は、あの公園で何が起こったのかを説しなかった。
事故だったのか。
衝な犯だったのか。
匠はトランクに入れられるにくなっていたのか、それともで命を落としたのか。
その疑問に答える者は、もういなかった。
数週、匠の葬儀がわれた。
美咲は9を経て、ようやく息子を埋葬することができた。さな棺のそばには、あせたミッキーマウスのぬいぐるみが置かれた。
参列者の誰も、簡単な慰めの言葉をにできなかった。
事件は、法には終わった。
遺体は見つかり、容疑者はし、ファイルは閉じられた。
けれど、それは誰かを救う終わりではなかった。
熊本央公園の砂には、今もが供えられることがある。
そこには、遊びから逃げたのではなかったの記憶が残っている。
そして、古いのトランクに秘密を隠したまま、9き続けた父親の記憶も。
最に残ったのは、にかれたい言葉だけだった。
忘れようとした。
けれど、どれほどが流れても、真実は消えなかった。
― 完 ―
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