"録音機が暴いた義実家" 第16話
そうやって親戚たちを方につけて、君を精神に追い詰め、自分たちからを引くように仕向ける。それが狙いなんだろう」
私が先週、キッチンのでち聞きした次の計画が、いよいよ実に移されようとしていたのだ。孤児である弓から全財産を絞り取り、用済みになればボロ雑巾のように捨てる。そして、持ちの娘をしい嫁に迎えて、さらなる甘い汁を吸う。自分たちの欲望と見栄のためなら、のをどこまでも踏みにじれる化け物たち。 「弓、怖いいをさせて、本当に申し訳ない。でも、これは好都でもあるんだ」
私は弓の目を見つめて、はっきりと告げた。 「親戚の集まりに、部者であるさゆりさんを呼んで、君に接待させる。この異常な状況は、あいつらが君に対して『いじめ』、いや、権侵害をっているという、何よりの証になる。それに、現を求するこのLINEも、恐の決定な証拠だ」
私はすぐに伊藤弁護士に連絡を取り、義母から送られてきたLINEのスクリーンショットを転送した。伊藤弁護士からは、 『言語断です。完全な恐であり、法為の極みです。当、もしお母様たちがしでも奥様に危害を加えるような素振りを見せたら、私がすぐに警察に通報できるよう、別で待しておきます。準備された類の効力も完璧です』 という、い返信があった。
広告
祝いの席の、私が仕事から帰ると、のには段ボール箱がいくつか積みげられていた。 「弓、お疲れ様。荷造り、順調か?」 「うん。切な類と、ナナのやおもちゃ、絵本は全部まとめたよ」
弓は額の汗を拭いながら、しだけホッとしたような笑顔を見せた。実はこの2週のに、私は産を回り、実からも今のからもくれた隣の県に、しいマンションを借りていたのだ。
の祝いが終われば、私と弓はそのまま実と切の縁を切る。度とあの実にはづかないし、今のにも戻らない。母たちが鍵を使ってに押しかけてくる能性を完全に絶つため、の朝、業者が残りの財具をすべて運びし、居へと移送する筈になっていた。つまり、の宴が、私たちがこので過ごす最の1になるのだ。 「本当にいいの……? たかし君が頑張って買ったおなのに……」
弓が申し訳なさそうに私を見げてくる。 「いいんだよ。君とナナが、して眠れないなんて、何のもない。あいつらの記憶が染みついた所は全部捨てて、3でしくやり直そう」
私がそう言うと、弓は「ありがとう」と涙ぐみ、私の胸に顔を埋めた。もう1で、夜に洗面所で泣く必はない。で、すべてが終わるのだ。
そして迎えた、運命の古希の祝い当。
広告
空にはひとつない青空が広がっていた。
私と弓は、ナナを連れてしだけお洒落をしてをた。弓が着ているのは、5に私が誕にプレゼントした、紺のシンプルなワンピースだった。本当はもっと華やかなドレスを買ってやりたかったが、弓の預は母たちに搾取され、活費から捻する余裕もなかった。弓は「これが番のお気に入りだから」と笑ってくれたが、その健気さが、私の義族への憎悪をさらにくした。
会となるのは、駅にある老舗の級料亭だ。な構えの玄関をくぐり、仲居さんに案内されてい廊をむ。 「たかし君……」
弓がそうに、私のスーツの袖をギュッと握りしめた。彼女の指先は、刻みに震えている。 「丈夫だ。俺の背に隠れていればいい。何か言われても、俺が全部答えるから」
私は弓のをく握り返し、きく呼吸をした。胸ポケットには、あの録音とスマートフォン、そして伊藤弁護士が作成した分い類の束が入っている。 「こちらのお部でございます」
仲居さんが、広の襖を静かにけた。その瞬、部のから、どっと賑やかな笑い声が溢れしてきた。すでに30い親戚たちが集まり、お茶をみながら談笑している。主役である父の雄は、座で嫌に親戚たちと杯を交わしていた。
そこまでは、どこの庭にもある普通のめでたい席の景だった。
しかし、私の線は、父のすぐ隣の席――本来ならば、男である私とその妻である弓が座るべき所に釘付けになった。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
福嫁の逆転茶屋
江戸の日本橋にある茶屋「泡雪屋」の若旦那・宗介は、店の立て直しのため、評判の商人・泉屋五兵衛の娘を妻に迎えることになる。 宗介が望んでいたのは、江戸でも噂になるほど美しい姉・お花だった。美しい女将がいれば、傾きかけた店にも客が戻る。そう信じていたからだ。 しかし、五兵衛が宗介に差し出したのは、お花ではなく、ふくよかで目立たない妹・福だった。 祝言の日、客たちは陰で笑い、宗介自身も心のどこかで落胆を隠せなかった。だが、福が作る菓子と入れる茶は、少しずつ泡雪屋の空気を変えていく。 派手ではないのに忘れられない味。人の心の奥にしまわれた記憶を呼び起こす菓子。福は、宗介が見落としていた“商いで本当に大切なもの”を静かに見せていく。 やがて泡雪屋は、思いがけない形で評判を取り戻していく。 なぜ、泉屋五兵衛は美しい姉ではなく、福を宗介に嫁がせたのか。 そして若旦那が、かつて落胆した嫁に深く頭を下げることになった理由とは――。嫁姑|夫婦1.9萬字5 23 -
完結第14話
35万円の空冷蔵庫
大晦日、妻の弓が35万円かけて用意した正月料理が、冷蔵庫から一つ残らず消えていた。 持ち去ったのは、夫・健一の母と弟。松阪牛、タラバガニ、有名料亭のおせちまで奪いながら、彼らは笑ってこう言い残す。 「明日はカップ麺でも食べてなさい」 20年間、“長男の嫁”として姑に尽くし続けてきた弓。いつか本当の家族として認めてもらえると信じ、理不尽な仕打ちにも耐えてきた。 しかし、その夜、健一は知ってしまう。食材を奪っただけでは終わらない、母と弟が5年前から隠し続けていた金の秘密を。 元日の新年会。食卓に並んだのは、豪華な料理ではなく一箱のうどんだけ。 だが、襖の向こうには親戚たちが集まり、20年間隠されてきた佐藤家の本性を静かに聞いていた――。兄弟姉妹|夫婦2.1萬字5 1391 -
完結第13話
十六歳の毒薬花嫁
江戸中期、奥州郡山の大店・高野家には、余命三月と告げられた若旦那・湊がいた。 歩くこともままならず、医者からは「春までもたぬ」と見放された男。誰も嫁ぎ手など現れないと思われたその家の門を、ある冬の朝、十六歳の娘・凛が一人で叩く。 「三月なら三月、三日なら三日でも構いません」 そう言って自ら若旦那の嫁になった凛だったが、彼女には誰にも明かしていない目的があった。 苦くないはずのない薬。帳簿に増え続ける不自然な数字。井戸へ捨てられた父の形見。 病とされていた若旦那の命、罪人にされた父の名、そして大店に二十一年隠されてきた嘘。 十六歳の娘が嫁いだ本当の理由が明らかになる時、高野家の運命は大きく変わり始める。夫婦2.0萬字5 17 -
完結第14話
銀行にいた偽妻
60歳の斎藤かよ子は、夫・剣一を大阪出張へ送り出したはずだった。 しかし午前11時17分、銀行から一本の電話が入る。 「ご主人が、奥様と同じ名前の若い女性と一緒に来店されています」 その女性は、かよ子の名前を名乗り、住所や生年月日、家族の情報まで正確に答えていた。しかも夫は、その女を自分の妻として銀行に紹介し、かよ子名義の資産に関わる重要な手続きを進めようとしていた。 ただの浮気ではない。夫は、かよ子の服装、癖、署名、人生の記録までも利用し、“もう1人の妻”を作り上げていた。 37年間信じてきた夫が、本当に奪おうとしていたものは財産だけだったのか。 そして、何も知らない妻を演じ続けたかよ子が、最後に銀行で見せた反撃とは――。人生逆転|夫婦2.1萬字5 660 -
完結第10話
消された妻の逆転乾杯
夫の昇進祝いの宴席で、佐木美和は信じられない光景を目にする。 35年間連れ添ってきた夫・孝志が、120人の招待客の前で、若い愛人を「妻です」と紹介したのだ。 本当の妻である美和は、会場の端の席に座らされ、まるで無関係な招待客の一人のように扱われていた。夫からは事前に「今日だけは黙っていろ」と言われていた。 けれど、美和は怒鳴らなかった。 ただ静かにグラスを持ち上げ、夫と愛人に向かって乾杯した。 なぜなら彼女は、17年間にわたって夫が奪い続けてきた功績、不正に使われた経費、そして自分の名前を消された証拠を、すでに会長へ渡していたからだ。 祝福の拍手が響く中、会長がゆっくりと立ち上がる。 「佐木君。今の紹介で、最後の確認が取れた」 その一言で、夫の栄光の夜は、崩壊の始まりへと変わっていく――。夫婦|第二の人生|不倫1.4萬字5 895 -
完結第14話
身代わり妻の逆転帰還
夫の代わりに罪を被り、2年間刑務所で耐え続けた佐藤由美。 亡き父が残した会社を守るため、そして夫・健一を信じるために、彼女はすべてを背負った。だが出所の日、ようやく帰った家で待っていたのは、姑の平手打ちと、夫から投げつけられた離婚届、そして若い愛人の勝ち誇った笑みだった。 「前科者のくせに、まだうちの息子と暮らす気なの?」 すべてを失ったように見えた由美は、泣き崩れることなく、ただ一本の電話をかける。 刑務所で出会った一人の女性。亡き父が残していた最後の言葉。仏壇の下に隠されたUSBメモリ。 2年前の事件は、本当に由美の罪だったのか。 翌日から、夫と愛人、そして由美を切り捨てた家族の嘘が、静かに崩れ始める――。嫁姑|夫婦2.1萬字5 362 -
完結第10話
「子なし」離婚の大誤算
離婚届に署名した日、木村さゆのお腹には、まだ誰にも知られていない3か月の命があった。 夫・渡辺健二は初恋の女性との再婚に夢中で、離婚協議書には「婚姻中の子なし」と記されていた。さゆは妊娠を告げることなく、静かに名前を書き、夫の前から姿を消す。 それから10年。 さゆは一人で息子・陸を育てながら、写真館「時」を成功させ、母としても写真家としても自分の人生を築いていた。 しかし、陸の卒業式の日、思いがけず健二と再会する。 壇上で花束を渡す陸の顔を見た瞬間、健二は凍りついた。目元、鼻筋、横顔――そこには、10年前に自分が切り捨てたはずの結婚の答えがあった。 失われた10年は、金で取り戻せるのか。 父親を名乗る資格とは何か。 初恋を選んだ男が、初めて自分の過ちと向き合う時、さゆと陸が選ぶ未来とは――。人生逆転|夫婦1.5萬字5 193 -
完結第12話
午前3時の離婚届
午前3時17分。夫・俊介は帰ってこなかった。 その夜、日本へ戻ってきていたのは、夫の“初恋の女性”だと思っていた田中雪。彼女のSNSには、高層ホテルの夜景、二つのワイングラス、そして私が夫に贈ったはずの腕時計が写っていた。 3年間、木村家の嫁として髪も服も仕事も変え、良い妻になろうとしてきた私。けれど夫が本当に優しくしていた相手は、私ではなかったのかもしれない。 そう思った朝、私は義母に離婚届を差し出し、1億2000万円を受け取って家を出た。 だが数日後、夫は離婚届を握りしめ、泣きながら私を捜し始める。 初恋の女性、隠された写真、失くしたはずのブレスレット。 私たちの結婚は、本当に嘘から始まっていたのか――。嫁姑|不倫1.8萬字5 511