"録音機が暴いた義実家" 第23話
「……警察?」 親戚たちのから、どよめきと鳴ががる。 「伊藤先」
私がく呼ぶと、伊藤弁護士は静かに頷き、広のへとを踏み入れた。 「たかしさんから事にご相談を受け、私が警察の方に事を説して、別で待しておりました。先ほどの接触禁止のへのサインまでは、民事の範疇として見守るつもりでしたが、奥様に危害を加えようとした暴未遂、そして『をめちゃくちゃにしてやる』というたな脅迫。これらは確な刑事事件です」
警察官の1が、鋭い取りで母の目のまで歩み寄った。 「サチ子さんですね。先ほどから別で、あなた方の会話と録音データはすべて聴かせていただいていました。ゆみさんに対する約300万円の恐、及び暴未遂の容疑で同願います」 「……同?」
母はにへたり込んだまま、顔面を気にしてずさった。 「違うの! これは誤解です! 族のちょっとした喧嘩で……そうよ、お嫁さんのしつけの環で、ちょっと脅かしただけで……!」 「300万円もの現を脅し取り、首を絞めようとびかかることを、『しつけ』とは呼びません」
警察官のたく、事務な声が、母の見苦しい言い訳を刀両断にした。 「すでに被害者であるご主からは、通帳の履歴やLINEの脅迫メッセージなど、分な証拠が提されています。
広告
任同に応じないは、現犯としてこので逮捕することになりますが、どうしますか?」
逮捕――その文字がた瞬、母の体から完全に力が抜け、そのに崩れ落ちた。
町内会でも顔が広く、親戚のでも「派な奥様」として振るってきた彼女にとって、級料亭の宴の席から警察に連されるなど、このない屈辱であり、完全な社会をしていた。 「嫌……嫌よ! お父さん、お父さん助けて!」
母はいつくばって父の雄を見げたが、父は氷のようにたい目で母を見ろすだけだった。 「連れてってやってください、お巡りさん。私の族は、とっくににました」
父のその決定な絶縁の言葉に、母は「ああああ……」と絶望の声を漏らし、ついに目を剥かんばかりの表で畳に突っ伏した。
その隙を突いて、部の隅から逃げそうとしたがあった。妹の美穂だ。 「私、関係ない! 私、何もやってない!」
美穂は震えるで、こっそりと廊へようとした。しかし、そのくを、腕を組んだ叔父の修が仁王ちになって遮った。 「……どこへくつもりだ、美穂」
修おじさんの、の底から響くような声に、美穂はひっと息を呑んだ。 「おも同罪だろう。ゆみさんのおで買ったその5万円のドレスを着て、警察の取り調べでたっぷりと絞られてこい」
もう1の警察官が美穂にづくと、美穂はついに完全に発狂したように泣き叫び始めた。
広告
「嫌だ! やめて! 私、お母さんに言れた通りにしただけなの! お母さんがあの子からおを巻きげようって言いしたのよ! 私は悪くない、お母さんを逮捕してよ!!」
実の母親を平気で売りばし、保のために泣き叫ぶ30代の娘。母のサチ子は、錠をかけられる恐怖に怯えながら、信じられないという目で美穂を見つめ返した。 「あんた、自分から『ブランドバッグを買わせよう』って言ったじゃない!」 「言ってない! お母さんの嘘つき! のせいにする最の親!」
料亭の美しい広の真んで、実の母と娘がお互いの罪をなすりつけい、醜く罵りっている。
親戚たちは誰として助けようとせず、ただ汚物を見るようなややかな目で、が警察官に両脇を抱えられて連されていくのを見送っていた。 「して! 私は町内会の娘さんをお嫁にもらう予定の、派な母親なのよ!」 「ママのせいだ! ママのせいで私の終わりじゃない!!」
廊の奥へと消えていくの醜い絶叫は、料亭のたい夜の空気のに吸い込まれ、やがてパトカーのサイレンの音と共に掻き消されていった。
静まり返った広。破壊された宴の席の央で、父の雄はまるで魂が抜けたように座り込んでいた。親戚たちも言葉を失い、苦しい沈黙だけが部を支配している。
私は、ずっと私の背のろでさく震えながら、私の背広の袖をギュッと握りしめていた弓の方を振り返った。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
福嫁の逆転茶屋
江戸の日本橋にある茶屋「泡雪屋」の若旦那・宗介は、店の立て直しのため、評判の商人・泉屋五兵衛の娘を妻に迎えることになる。 宗介が望んでいたのは、江戸でも噂になるほど美しい姉・お花だった。美しい女将がいれば、傾きかけた店にも客が戻る。そう信じていたからだ。 しかし、五兵衛が宗介に差し出したのは、お花ではなく、ふくよかで目立たない妹・福だった。 祝言の日、客たちは陰で笑い、宗介自身も心のどこかで落胆を隠せなかった。だが、福が作る菓子と入れる茶は、少しずつ泡雪屋の空気を変えていく。 派手ではないのに忘れられない味。人の心の奥にしまわれた記憶を呼び起こす菓子。福は、宗介が見落としていた“商いで本当に大切なもの”を静かに見せていく。 やがて泡雪屋は、思いがけない形で評判を取り戻していく。 なぜ、泉屋五兵衛は美しい姉ではなく、福を宗介に嫁がせたのか。 そして若旦那が、かつて落胆した嫁に深く頭を下げることになった理由とは――。嫁姑|夫婦1.9萬字5 23 -
完結第14話
35万円の空冷蔵庫
大晦日、妻の弓が35万円かけて用意した正月料理が、冷蔵庫から一つ残らず消えていた。 持ち去ったのは、夫・健一の母と弟。松阪牛、タラバガニ、有名料亭のおせちまで奪いながら、彼らは笑ってこう言い残す。 「明日はカップ麺でも食べてなさい」 20年間、“長男の嫁”として姑に尽くし続けてきた弓。いつか本当の家族として認めてもらえると信じ、理不尽な仕打ちにも耐えてきた。 しかし、その夜、健一は知ってしまう。食材を奪っただけでは終わらない、母と弟が5年前から隠し続けていた金の秘密を。 元日の新年会。食卓に並んだのは、豪華な料理ではなく一箱のうどんだけ。 だが、襖の向こうには親戚たちが集まり、20年間隠されてきた佐藤家の本性を静かに聞いていた――。兄弟姉妹|夫婦2.1萬字5 1391 -
完結第13話
十六歳の毒薬花嫁
江戸中期、奥州郡山の大店・高野家には、余命三月と告げられた若旦那・湊がいた。 歩くこともままならず、医者からは「春までもたぬ」と見放された男。誰も嫁ぎ手など現れないと思われたその家の門を、ある冬の朝、十六歳の娘・凛が一人で叩く。 「三月なら三月、三日なら三日でも構いません」 そう言って自ら若旦那の嫁になった凛だったが、彼女には誰にも明かしていない目的があった。 苦くないはずのない薬。帳簿に増え続ける不自然な数字。井戸へ捨てられた父の形見。 病とされていた若旦那の命、罪人にされた父の名、そして大店に二十一年隠されてきた嘘。 十六歳の娘が嫁いだ本当の理由が明らかになる時、高野家の運命は大きく変わり始める。夫婦2.0萬字5 17 -
完結第14話
銀行にいた偽妻
60歳の斎藤かよ子は、夫・剣一を大阪出張へ送り出したはずだった。 しかし午前11時17分、銀行から一本の電話が入る。 「ご主人が、奥様と同じ名前の若い女性と一緒に来店されています」 その女性は、かよ子の名前を名乗り、住所や生年月日、家族の情報まで正確に答えていた。しかも夫は、その女を自分の妻として銀行に紹介し、かよ子名義の資産に関わる重要な手続きを進めようとしていた。 ただの浮気ではない。夫は、かよ子の服装、癖、署名、人生の記録までも利用し、“もう1人の妻”を作り上げていた。 37年間信じてきた夫が、本当に奪おうとしていたものは財産だけだったのか。 そして、何も知らない妻を演じ続けたかよ子が、最後に銀行で見せた反撃とは――。人生逆転|夫婦2.1萬字5 660 -
完結第10話
消された妻の逆転乾杯
夫の昇進祝いの宴席で、佐木美和は信じられない光景を目にする。 35年間連れ添ってきた夫・孝志が、120人の招待客の前で、若い愛人を「妻です」と紹介したのだ。 本当の妻である美和は、会場の端の席に座らされ、まるで無関係な招待客の一人のように扱われていた。夫からは事前に「今日だけは黙っていろ」と言われていた。 けれど、美和は怒鳴らなかった。 ただ静かにグラスを持ち上げ、夫と愛人に向かって乾杯した。 なぜなら彼女は、17年間にわたって夫が奪い続けてきた功績、不正に使われた経費、そして自分の名前を消された証拠を、すでに会長へ渡していたからだ。 祝福の拍手が響く中、会長がゆっくりと立ち上がる。 「佐木君。今の紹介で、最後の確認が取れた」 その一言で、夫の栄光の夜は、崩壊の始まりへと変わっていく――。夫婦|第二の人生|不倫1.4萬字5 895 -
完結第14話
身代わり妻の逆転帰還
夫の代わりに罪を被り、2年間刑務所で耐え続けた佐藤由美。 亡き父が残した会社を守るため、そして夫・健一を信じるために、彼女はすべてを背負った。だが出所の日、ようやく帰った家で待っていたのは、姑の平手打ちと、夫から投げつけられた離婚届、そして若い愛人の勝ち誇った笑みだった。 「前科者のくせに、まだうちの息子と暮らす気なの?」 すべてを失ったように見えた由美は、泣き崩れることなく、ただ一本の電話をかける。 刑務所で出会った一人の女性。亡き父が残していた最後の言葉。仏壇の下に隠されたUSBメモリ。 2年前の事件は、本当に由美の罪だったのか。 翌日から、夫と愛人、そして由美を切り捨てた家族の嘘が、静かに崩れ始める――。嫁姑|夫婦2.1萬字5 362 -
完結第10話
「子なし」離婚の大誤算
離婚届に署名した日、木村さゆのお腹には、まだ誰にも知られていない3か月の命があった。 夫・渡辺健二は初恋の女性との再婚に夢中で、離婚協議書には「婚姻中の子なし」と記されていた。さゆは妊娠を告げることなく、静かに名前を書き、夫の前から姿を消す。 それから10年。 さゆは一人で息子・陸を育てながら、写真館「時」を成功させ、母としても写真家としても自分の人生を築いていた。 しかし、陸の卒業式の日、思いがけず健二と再会する。 壇上で花束を渡す陸の顔を見た瞬間、健二は凍りついた。目元、鼻筋、横顔――そこには、10年前に自分が切り捨てたはずの結婚の答えがあった。 失われた10年は、金で取り戻せるのか。 父親を名乗る資格とは何か。 初恋を選んだ男が、初めて自分の過ちと向き合う時、さゆと陸が選ぶ未来とは――。人生逆転|夫婦1.5萬字5 193 -
完結第12話
午前3時の離婚届
午前3時17分。夫・俊介は帰ってこなかった。 その夜、日本へ戻ってきていたのは、夫の“初恋の女性”だと思っていた田中雪。彼女のSNSには、高層ホテルの夜景、二つのワイングラス、そして私が夫に贈ったはずの腕時計が写っていた。 3年間、木村家の嫁として髪も服も仕事も変え、良い妻になろうとしてきた私。けれど夫が本当に優しくしていた相手は、私ではなかったのかもしれない。 そう思った朝、私は義母に離婚届を差し出し、1億2000万円を受け取って家を出た。 だが数日後、夫は離婚届を握りしめ、泣きながら私を捜し始める。 初恋の女性、隠された写真、失くしたはずのブレスレット。 私たちの結婚は、本当に嘘から始まっていたのか――。嫁姑|不倫1.8萬字5 511