"赤いリボンの手紙" 第3話
かつて鋭かったをそのまま残した男、斎藤輔だった。 斎藤は無言のままみさ子の向かいの席に腰掛け、差しされた黄い封筒と、の、そして暗い部の絵をじっと見つめた。
の文字を見た瞬、斎藤刑事の老いた顔が恐怖で張った。 「これは……あり得ない。奥さん、あり得ないことです」 みさ子はテーブルにを乗りし、老刑事の目をまっすぐに見つめた。 「どうしてですか? 刑事さん、あなた当、私に何かを隠していましたね」 斎藤は線を落とし、組んだ両に力を込めた。 「……あの、お嬢さんたちの燃えたカバンが見つかった、焦げていたのは表面だけで、のノートや教科はほとんど無事だったんです。まるで、誰かが事件に見せかけるために、図にカバンだけを燃やしたかのように」
みさ子の臓がドクドクとな音をてて波打った。 「さらに、咲ちゃんの学習ノートの央の数ページが、何者かによって急いで引きちぎられていた。そこに何がかれていたのか、私は突き止めることができなかった」 「なぜ、それを当私に教えてくれなかったんですか!」 みさ子が声を荒げると、斎藤はく項垂れた。 「命令がったんです。層部から、これ以の事件に入りするなと。……その命令を裏で署に頼み込んだのは、あなたのご主、先ですよ」
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世界が完全に止したかのように、みさ子はそので直した。 「夫が……そんなはずがないわ! なぜ夫がそんなことを!」 「先が自ら署に来られたのです。正確にどんな取引があったかは分かりません。しかし、そのを境に証拠品は処分され、記録は縮されました。……奥さん、ある種の真実は、らない方が幸せなこともある。もうすべてを忘れるんだ」 斎藤刑事は席をち、背を向けてへと歩きしたが、ドアので度だけち止まった。 「そのの文字は、確かにちゃんの跡だ。だが、とインクを見てみろ。それは23のものではなく、ごく最にかれたものだ」
刑事のった暗い内で、みさ子はもう度の質を指先で確かめた。確かに、23のを経たにしては、繊維のさが自然なほどに保たれている。 その、がのドアをガタガタと押しき、たい空気が元を吹き抜けた。 ふと見ると、みさ子のテーブルのに、いつのにかさないメモ用が置かれていた。 そこには、ただ言だけ、掠れた文字で所がき残されていた。 『町173番。1で来てください』
夜の10を過ぎた頃、みさ子はそのメモを固く握りしめたまま、へ向かう線バスの座席に揺られていた。 窓のに見える横浜の夜景は眩いで満ちていたが、彼女の目には何も入らなかった。
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バスは急な坂をエンジンを唸らせながら登り、館のち並ぶ古い宅へと入っていく。 バスをりると、灯の半分が消えかけた暗いが広がっていた。 みさ子は携帯話のライトを点灯させ、錆びついた扉や割れた窓ガラスが並ぶ、空きだらけの通りを奥へとんだ。
の最奥、そこに3階建てのコンクリート造りの古い建物が気にそびえっていた。 建物の1階部分には、文字の剥げかけた「診療所」という古い板が掲げられている。 かりは切なく、窓ガラスには埃がびっしりと積もっていた。みさ子はその錆びついたドアノブにをかけ、ゆっくりと押し込んだ。 鍵はかかっておらず、キィ、とな音をててドアがいた。 内部には、特の消毒薬の匂いとカビの匂いが混ざりった、たい空気が充満していた。
ロビーの受付デスクは埃にまみれ、待の子はいくつか倒れたまま放置されている。 壁に貼られた「美肌管理」「注入治療」といったあせた美容皮膚科のポスターを見つめながら、みさ子は記憶の糸を繰り寄せた。 (ここは……夫の診療所のは、確かにあの児童養護施設だった所だ……) 彼女は軋むの階段を、すりの埃を払いながら歩ずつ2階へと登っていった。 静まり返った廊の両側には、古いのドアが然と並んでいる。
最初のいくつかの部は、破れた壁と割れたガラスの破片が散乱するだけの、完全な空き部だった。
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