"柿の木の下、三十年の帰郷" 第8話
母が布団から起きがり私を呼んだ。
私が台所から返事をすると靴を履いて歩いてくる音が聞こえた。
歩、また歩。
母は入りにち、かまどのにしゃがむ私を見て、でも見ているかのように瞬ち尽くした。
「できたよ。」
私は器にお湯を注ぎテーブルに運んだ。
母は棚から漬け物をし、さく切って皿に乗せた。
さらに卵をつ持ってきた。
「漬け物だけで分だよ。そんな気を使わなくていいのに。」
「めったに帰ってこないんだからしはいいものをべなさい。」
目玉焼きは半熟で、箸でつつくと黄がとろりと流れした。
母は自分の分の卵も私の器に移した。
「母さんもべなよ。」
と私が戻す。
私たちはテーブルに向かいい、黙々とお茶をんだ。
はどんどんるくなり、庭の柿ののが計回りに移った。
べ終わり、私が器を洗っていると母は縁側に座って言った。
「あんたので器なんか洗わせるわけにはいかないよ。」
「俺は何でもできるんだ。駐屯で毎訓練ばかりしてるとってるのか。」
母は笑い、それ以は止めなかった。
を拭きながら私は言った。
「たけしのにってくるよ。」
母の顔から笑顔が消えた。
「なんでくんだい?」
「きっちり話をしておかないと。」
「をさないでおくれ。」
「さないさ。」
をて向へみをつ抜けるとたけしのに着いた。
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庭はうちよりも荒れていて塀は部崩れ、焚きが乱雑に積まれている。
たけしは庭で顔を洗っているところだった。
音に気づいて顔をげ私を見るとが震え、タオルを洗面台に落とした。
私は入にち、には入らなかった。
「たけし、し話がある。」
彼はちがり、ズボンでを拭いた。
顔にはまだ昨夜の恐怖が残っている。
「昨夜は酒をんでいたからこれ以は追求しない。だがこれだけは言っておく。度と俺の母さんにづくな。」
彼はをきかけたが、私の肩の階級章を見て言葉をみ込み、コクコクと頷いた。
「もし何か困ったことがあれば俺に言えばいい、だが母さんのことには切関わるな。」
彼はまた頷いた。
私はポケットから万円を取りし塀ののに置いた。
「昨夜突きばした怪の治療費だ。があるに町の病院にけ。」
彼は呆然としておを受け取ろうとしなかった。
私は返事を待たずに背を向けた。
帰り、起きした所のたちがのところで朝をべていた。
私を見てみんな瞬ハッとした顔をした。
のおばあさんが先に気づいて声をかけた。
「あれ?よし子さんのとこの健かい?」
「はい。帰ってきました。」
おばあさんは私の制をからまで眺め、
「いや、随分派になって」と言った。
周りのたちも々に「いつ帰ってきたのか」
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「向こうではどうしているのか」と聞いてきた。
私は軽く返事をし、すぐにに戻った。
母は庭で落ち葉を掃いていた。
箒をかす作がゆっくりだ。
私は箒を取りげ、「俺がやるよ」と言った。
母はをさず、「今回は何いられるんだい」と聞いた。
「状況次第だけどから半はいるつもりだ。」
「そうか。」
庭に落ち葉はなく、柿のの葉がに吹かれて数枚落ちているだけだった。
集めてにし、「畑はどうなっているか」聞いた。
「おじさんのとこの息子に任せてあるよ。」
「あんたの畑、うまくやってるか?」
「まあね。ただは照り続きであんまり来が良くなかった。」
掃除を終え、私はのボロボロの扉をし、寸法を測って町へしいのを買いにく準備をした。
「おを使わなくていいよ。この扉まだ使えるから。」
「どこが使えるんだ?隙からが吹き込んでるじゃないか。」
母はそれ以止めずから古い錠を探ししてきた。
「しい扉にするなら鍵も必だろう。これはまだ使えるから。」
受け取ってみるとひどく錆びついている。
「鍵もしいのをつけるよ。」
から町までは歩いて分。
私は自転に乗らず歩いて向かった。
途でのおじいさんが焚きを積んだ荷を引いているのにあった。
「乗っていくか」と言われたが、「歩くのが気持ちいいから」
と断った。
おじいさんは荷を止め私に話しかけた。
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