みかん小説
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"柿の木の下、三十年の帰郷" 第9話

「よし子さん、ずっとあんたの帰りを待ってたんだよ。昨夜あんたが帰ってきたことに広まってるぞ。」

「なんて広まってるんですか?」

「偉くなって帰ってきてたけしのやつをボコボコにしたってな。」

「ボコボコになんてしてませんよ。ちょっと引っ張っただけです。」

おじいさんはニヤリと笑った。

「ちょっと引っ張っただけでもいい教訓になっただろうよ。あいつは普段から酒をむと分別がなくなるからな。いい薬だ。」

私は笑って答えずおじいさんに別れを告げて歩きした。

町に着き材で頑丈なの扉を枚とペンキ、しい鍵を買った。

の主は私の装を見て「どこから来た」と聞いた。

「沢です。」

「あ、あのから派な自官っていうのはあんたのことか。」

「はい。」

は途端に良くなった。

「おばさんであんたを育てて自隊に送りして苦労したんだぞ。」

「分かってます。」

は買ったものをに積みまで送るよと言ってくれたが、私は断った。

丈夫です。自分で担いで帰ります。」

枚と具まとめたものでキロくらいあった。

肩に担いで分歩く。

度休み端のに座ってタバコを吸った。

くのは葉が落ち、まるで毛を刈られた獣のように寒々しかった。

に着くと母が台所で忙しそうにしていた。

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音を聞きつけててきた母は私が汗だくで扉を担いでいるのを見て急いでタオルを持ってきてくれた。

背伸びをして私の額の汗を拭こうとするので「自分でやるよ」と言って受け取った。

母はを引っ込め横で私が古い枠をしい扉を取り付けるのを見ていた。

調子をわせ何度かけ閉めしてみる。

なくぴったり閉まった。

しい鍵を取り付け、古い鍵は捨てた。

母はその周りをうろうろしながら扉や鍵を撫でた。

「この扉本当に分いね。」

「ああ、これなら棒も入ってこれないよ。」

その言葉を聞いて母の表し複雑だった。

私は母を町の診療所へ連れてった。

と腕を見てもらおう、と言うと「どこも悪くないのになんで先に見てもらうんだい」と言いやがった。

「昨夜転んだ腕を見ないわけにはいかないだろう。」

「ちょっと擦りむいただけさ。」

「じゃあは?」

母は黙り込んだ。

診療所の先鏡をかけたの男性だった。

と腕を見て血圧を測り、音を聞いた。

は加齢による関節痛ですね。を取れば誰でもこうなります。鎮痛剤と湿布をしておきます。腕は打撲ですがひどくありません。血圧がいので塩分を控えてください。」

母は隣で満げに聞いていた。

「先、私はもう何きてるんだ。自分の体のことくらいは分かってるよ。

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薬をもらって帰るすがら、母はブツブツ文句を言った。

「薬を買うなんて無駄遣いだよ。」

した額じゃないよ。」

「あんたが稼ぐおは楽なもんじゃないのに。」

「今はそれなりにもらってるから丈夫だよ。」

に着くともう暗くなりかけていた。

私は庭の落ち葉を集めてをつけた。

炎が塀を赤く照らした。

母は台所のさな子に座り、ランプのかりを両で包み込んでいた。

灯りに照らされた顔で私を見ていった。

「健、ご飯はべたかい。鍋にうどんが残ってるよ。まだべてない?」

母は台にをついてがろうとしたが、に力が入らずによろけた。

私が支えようとを伸ばすと、母はそれをで遮り、自分で鍋のところへ歩いていった。

蓋をけ、お玉でかき混ぜる。

台所のにふわりと温かい湯気ががり、うどんのいい匂いが広がった。

私はろから母の丸まった背を見ていた。

灯りの髪が透けて見える。鍋を握るその指は関節が太く変形していた。

だ。

この私はの世界で々なことを経験した。訓練、任務、何千もの部を指揮してきた。

でも母はこの台所できてきたのだ。

そして今私のために鍋にうどんを残してくれていた。

喉の奥が詰まって言葉がなかった。

私はろを向き、壁にかかった古いカレンダーを見るふりをしての甲で目を拭った。

母はうどんを器によそい、私のに渡した。

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