みかん小説
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"柿の木の下、三十年の帰郷" 第13話

母は黙り込んだ。

診療所の先鏡をかけたの男性だった。

と腕を診て血圧を測り、音を聞いた。

は加齢による関節痛ですね。を取れば誰でもこうなります。鎮痛剤と湿布をしておきます。腕は単なる打撲ですが、ひどくはありません。血圧がいので、普段の事は塩分を控えてください。」

母は隣で満げに聞いていた。

「先、私はもう何きてるんだ。自分の体のことくらいは分かってるよ。」

薬をもらって帰るすがら、母はブツブツと文句を言った。

「薬を買うなんて無駄遣いだよ。」

した額じゃないよ。」

「あんたが稼ぐおは、楽なもんじゃないのに。」

「今はそれなりに料をもらってるから丈夫だよ。」

に着くともう暗くなりかけていた。

私は庭の落ち葉を集めて焚きをつけた。

炎が塀を赤く照らす。

母は台所の入りに座り、ネギの根をつちぎってはボールに放り込んでいた。

私は焚きの炎を見つめながら、は町の駐屯話をして異の件を確認しようと考えていた。

の午、町の郵便局へって話をかけた。

まずは今の駐屯司に連絡し、状況を伝えて異内示がているか確認した。

「まだ続きですが、もうすぐだといます。」

「分かった。きがあればすぐ教えてくれ。

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次に県庁所の駐屯にいる昔のいに話をかけた。

昔偵察部隊で緒だった男で、今は県内の駐屯の広報部署にいる。

「実に戻って、そちらの駐屯に異したいんだ。続きの件、伝ってくれないか?」

「任せとけ。おほど優秀な幹部が来るなら、こちらとしても歓迎だ。」

話を切り、郵便局のにしばらくっていた。

気は良く、太陽のがポカポカと体に温かい。

通りにはなく、何かの老向ぼっこをしながらラジオのノイズ混じりの音を聞いていた。

内示がりるまでまだがかかりそうだ。

この数の片付けをして過ごそう。

に戻り母に、「へ焚きを拾いにってくる」と伝えた。

が来れば焚きがたくさん必になる。

母はお腹が空くからと、おにぎりを持たせてくれた。

子供の頃、母が町から買ってきた菓子を自分ではべず、細かくちぎって私のに入れてくれたのを覚えている。

おにぎりを懐に入れ、斧を背負ってを登る。

昔よく歩いただ。幅はし広くなっていたが、でこぼこしているのは変わらない。

腹で振り返ると、沢に見えた。

根から煙ががり、静かで穏やかな景だった。

焚き束作り、りる。

肩にずっしりとみをじた。

こんな労働をするのは何ぶりだろうか。

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兵の頃、装備を背負ってを歩いた覚が蘇った。

に着き焚きを積むと、母はすでに鍋でおにぎりを蒸しげていた。

湯気がもわっとがる。

蓋をけ、お玉でおにぎりをつ取って私に渡した。

いうちにべなさい。」

私は座敷に座り、ランプのかりを頼りにおにぎりをすすった。

ご飯は柔らかく煮こまれていて、子供の頃にべたのと同じだった。

母は私の向かいに座り、針と糸を取りしてちぎれた着のボタンを縫い始めた。

その縫い目はやはり隙なく綺麗に揃っていた。

私は母に々なことを聞きたかった。

この数どうやってで過ごしてきたのか。

たけしのことは体どういう経緯なのか。

痛む、変形したった目はどうしたのか。

しかしからるのはおにぎりをすする音だけだった。

ずるずるとすする音と、台所の焚きがパチパチとはぜる音だけが静かなに響いた。

べ終わり、私は器を台に置いた。

「母さん、帰って来る途のおじいさんに会ったよ。ちょっとに転んだって聞いた。」

母は俯いたままボタンを縫い続け、「うん」とだけ答えた。

これからはもうど声もいかないよ。母のが止まり、顔をげて私を見た。移願いをしたんだ。県内のにポストがあってね。

ここからで 2 だ。母は私をじっと見つめた。ランプのが母の顔で揺れている。母はゆっくりと針と糸を置き、髪をかきげていった。

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