"柿の木の下、三十年の帰郷" 第19話
靴は履いていくよと言うと履いていきなさい。これが柔らかくて歩きやすいから。発の直しいの鍵を閉めた。ガチャっと回回し、しっかり閉まっているのを確認する。母は庭にち、私を見ていた。私が買ってあげたあの青いダウンコートを着ている。フードのファーがちがり、母の姿がよりさく見えた。母さん、向こうで落ち着いたら話するから。もし緒にみたくなったら迎えに来るよう。あんたは自分の仕事をしっかりやりな。私はここで自由に暮らすから。私はそれ以説得せず鞄を背負ってをた。母もついてきてしいのにって私を見送る。私は歩きし振り返らなかった。母はダウンコートの裾を握りしめたままそこにっている。に入りなよ。は寒いから。あんたのろ姿を見送らせておくれ。私は背を向け歩き続けた。歩幅を広げ、のおじいさんののを通り過ぎ、古いクスノキのを曲がってをるのにた。し歩いてから振り返るとくののところにまだあの青いさな点が見えた。もう振り返らずに町へ向かった。バスはしばらく待って発した。私は番ろの窓際の席に座った。バスがりし、窓ののがろへとざかるのを見つめる。にに乗ったと同じ景だった。
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だが胸のにあるいは全く違っていた。あのはへびすことしか考えていなかったが、今はいかにして頻繁に帰ってくるかを考えていた。県内駐屯に着いたのは午だった。駐屯の敷はの側にあり、入には警備員がっていた。
分証を見せてに入る。話したりいが入りで待っていて、私の鞄を受け取りながら言った。さあ、まずは宿舎に案内するよ。宿舎は古かったが、綺麗に掃除されていた。1DK でさなキッチンがついている。彼がベッドメイキングを伝ってくれ、来週から仕事だからまずはゆっくり休めようと言った。あ、ありがとう。
彼が帰った、私はい子に座り、部のを見回した。い壁、フローリングの、向きの窓からは向かいの建物のにある太陽温器が見えた。の駐屯の宿舎より半分以の広さだが、はとても落ち着いていた。母のいるにづいたからだ。
落ち着いた翌、私は古のバイクを買った。は買えなかったので妥協したが、県内駐屯からまでのをるにはバスよりバイクの方がい。が空いていれば半で着く。
最初の週末、私はバイクに乗って菅沢へ帰った。に入るとのおじいさんがまた柿のので将を指していた。
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バイクのエンジン音を聞いて将の駒を放りしてちがった。おお、もう帰ってきたのか。これからは毎週帰って来ますよ。
のは鍵がかかっていた。しく作った鍵を取りしてをける。母は所のに遊びにっているようだ。台所に入ると鍋の蓋がき、まな板のには半分切られたかぼちゃが置いてあった。私はエプロンをに着けかぼちゃを切り終え、鍋にお湯を沸かした。
お湯が沸いた頃母が帰ってきた。台所の音を聞きつけ、を覗き込んで私が鍋をかき混ぜているのを見て驚いた。どうして帰ってきたんだい?週末は休みだから帰ってきたんだよ。そんなに無理しなくていいのに。しい仕事が始まったばかりなんだから休んでなさい。バイクならすぐだから。
私たちはテーブルを囲んでかぼちゃの煮物と打ちうどんをべた。私がをこね、母が麺棒で伸ばして切ったうどんだ。太さは揃いだったが、腰があって美しい。、母はお茶を入れてくれた。で庭に座ってお茶をむ。柿のの芽が吹き始め、緑の葉がに揺れていた。
母は湯呑みを持ちながら柿のを見げて言った。今は実がたくさんなるといいけどね。そしたら干し柿にして送ってあげるから。送らなくていいよ。毎週帰ってくるから自分でべるさ。
毎週帰ってくるなんてガソリン代がもったいないよ。
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