みかん小説
本棚

"半纏に縫われた遺言" 第15話

その夜の11、老たちの激しいいびきの音だけが満ちる静まり返った病で、私は毛布をまですっぽりとかぶった。 そして、半纏の内側から赤いラジオを取りし、裏面にあるさなネジを、の爪の先を使って慎に回し始めた。 完全な暗で、指先の覚だけを頼りにさなネジを回すのは、容易なことではなかった。 ネジをすためには、正確に3回転半、へと回さなければならなかった。 しかし、2回転目を回したその瞬、指先の汗のせいで爪がツルリと滑り、さなネジが布団のにポロリと落ちてしまった。

臓がドキンと止するかとうほどの恐怖が襲った。 私は息を殺し、布団のシーツの隙本の指をわせ、必になってネジの属の触を探し回った。 数分獄のような探索の末、ようやく指先にさな触が触れ、ネジを回収することができた。 指先にはや汗がびっしりと滲んでいた。また滑り落ちるのを恐れた私は、着ている半纏の裏で指の汗をきれいに拭き取ってから、再び慎にネジを回し直した。

3回転半をすべて回し終えると、パカリと池カバーがき、その内部に埋め込まれていた、爪ほどのきさの角い記録媒体が姿を現した。 私はそれを指先でピンセットのようにつまみ、慎に引き抜いた。

広告

この3週、介護士たちの横領の会話や院正の音声を残さず記録し続けた、このさなプラスチックの媒体1つが、今この瞬においては、世界で最も力な、連を破滅させるための「爆弾」だった。 私はそれをビニール袋で固く包み込み、鉄男へのメモと緒に、半纏のポケットの最もい奥底へと切に隠し入れた。

翌朝、昼の配膳の。鉄男が「腐った玉ねぎの箱を返品しにく」という名目で、厨の勝からロビーへときなプラスチックケースを抱えててきた。 私は堂の入りくので、汚れた雑巾を引きずりながらヘラヘラとうろうろし、わざとに転がしておいた玉ねぎを拾い集めるふりをして、彼の元へと腰をく屈めた。 膝の関節がズキンと激しく痛んだが、私は声をげずに歯をいしばった。

鉄男が履いている靴のすぐ横にひざをついた、その瞬の交差の瞬だった。 私は半纏のポケットから、ビニールに包まれた記録媒体と極秘のメモを取りし、彼の履いている黒い靴の内側の、ふくらはぎの隙へと滑り込ませた。 指先からビニール袋の触がれたその瞬、私は肩に乗っていた、世界で最もい荷物をようやくろしたかのような、奇妙な解放を覚えた。

鉄男は、瞬きつせず、元の玉ねぎの箱をガバと持ちげた。

広告

「おばあさん、の玉ねぎを拾ってくれて、ありがとよ」 鉄男は、演技にしてはなかなか自然な、ぶっきらぼうな声を周囲の職員に聞こえるようにすと、私に向かってげて挨拶した。 私は「へへへ、えへへ」との抜けた笑い声をげながら、空気に向かって何度もきくを振ってみせた。 鉄男は踵を返して勝ると、材トラックの運転席に乗り込み、力くエンジンをかけた。

ドッドッドというディーゼルエンジン特たい響きが、施設の暗い庭の空気を激しく揺らした。 トラックがの坂りながら、ガコンとギアを変えるたびに、エンジン音のさが変わっていくのが聞こえた。 その音がだんだんとざかり、る国の彼方へと完全に消えていくのを、私はベッドのでじっとを澄まして聴いていた。 そして、入所してから初めて、誰にも見られないよう、声をさずに静かに笑った。 角ががり、目尻に職の皺が寄るその覚が、あまりにも久しぶりで、しだけぎこちなかった。 目から溢れたものが、涙なのか笑いなのか分からないまま、温かく頬を伝って流れ落ちていった。 (あなたが25に浅で蒔いてくれた、あのの種がねえ……今、この毛な奥のコンクリートので、ついに青い芽を吹いたよ。

あとは、その茎を伝って、私がへと登るだけだかねえ……)

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: