"半纏に縫われた遺言" 第21話
私は、彼のから直接聞かなくても、その目のを見ただけで、痛いほどすべてが理解できた。
私は、これまでずっとバカのようにだらしなく半分けていたを、そっと静かに閉じた。 そして、この3週、職員たちを欺くためにわざと暗くぼやかしていた両目の瞳の焦点を、ゆっくりと、力く、元の鋭い職の目へとわせ直した。 ので、顎をぐっとげた。 曲がっていた背筋を、定規を当てたかのように真っ直ぐに伸ばした。 3週の、半纏の内側に完全に隠し続けてきた、浅の老舗を切り盛りしてきた裁士としての、徹で毅然とした差しが、瞬にしてその顔へと戻った。
その劇な変化は、にしてわずか3秒もかからなかったが、病で見守っていた院や護師、そして査察班の男たち全員が、ハッと息を呑んで直した。 さっきまでの周りにご飯粒を付け、よだれを垂らしながらな言葉を呟いていた「ボケ老」の顔が、次の瞬には、40、浅の厳しい職の世界をでき抜いてきた、厳格な「女将」の顔へと完全に変貌していたからだ。
院のが、魚のようにいたまま固まった。 壁際の見習い護師たちが、その威圧に怯えるようにして、さらにずさりした。 「……院。私はねえ、これっぽっちも怖くなんかはなかったよ。
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うちのがねえ、国から必ず私を守るための、最の『虎の子』を遣わしてくれると、最初から信じていたからねえ」
私の凛とした、分の淀みもない確な声が、暗い病の方の壁に、鋭く響き渡った。 1ヶく、言もまともなの言葉を喋っていなかった老のから放たれた、完璧な文章の響きに、周囲の捜査官たちは驚愕して顔を見わせた。 壁際にいた護師の女は、恐怖のあまり背をコンクリートの壁に激しく叩きつけた。 私が本当は認症などではなかったこと、そして、自分たちがこの3週の、の老の張り巡らせた巧妙な芝居の檻のに、逆に完全に騙され、ハメられていたという恐ろしい事実に、この瞬、連はようやく気づいたのだ。
「正当な医療為」だと必に叫んでいた院の醜い反論が、空気で々に砕され、虚しく消えっていく音が聞こえるようだった。 田健はゆっくりとからちがると、背に控えていた査察班の男たちに向かって、徹にく頷いた。 令状を持った捜査官たちが、斉に廊の突き当たりにある院や事務へと突入していった。 しばらくすると、廊の向こう側から、頑丈な庫がバールでこじけられる属音、引きしが次々と荒々しく引き抜かれる音、そして職員のパソコンのハードディスクが押収される騒がしい音が、壁を伝って聞こえてきた。
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それから10分ほど経った頃、の捜査官が、証拠品の詰まった段ボール箱を両で抱えて病へと戻ってきた。 そのからは、美の名がはっきりと署名された「額の寄付入細」、毎の薬の投与量が美しく改ざんされた「偽の護記録簿」、そして、役所を騙すために量に偽造された「度認症診断」の束が、次々と証拠として引きされていった。 この3週の、私が半纏ののさな帳に、鉛の先でびっしりとき留め続けた、正確な付と額の記録が、これらの連の残した裏の類と、これから文字の狂いもなく、1つ1つ完璧に致していくことだろう。
院の顔は、コンクリートと同じ、血の気のないへと完全に変わっていった。 田健が、再び私のベッドの横へと戻り、誰にも聞こえないようない、優しい声で私に報告してくれた。 「お母さん……してください。桜ちゃんは完全に無事です。今は、僕の霞が関の事務所のソファで、温かい毛布に包まれて、ぐっすりと眠っていますから」
その青の言葉をにした瞬、この1ヶ、私の胸の真んにずっしりと使えていた、巨なたいが、音をてて綺麗に消えっていくのが分かった。 桜が、連の魔のから逃れて無事であること。 それこそが、今この極限の瞬のなかで、私がこの世で最も聞きたかった、最の救いのらせだった。
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