"黒いゴミ袋に詰まった十五年" 第3話
私が息ついて座るための所など最初からどこにも用されていなかった。
「うちの嫁は気が利かなくてごめんなさいね」と義母が親戚に笑う。
私も台所の隅で緒に笑って聞いていた。
番辛かったのは子供ができないことを執拗に責められるようになった期だ。
親戚の集まりにけば必ず「まだなのか」と配の親族から回しに聞かれた。
若いうちに産んでおかないとこのの血が途絶えてしまうわよ。
そんなない言葉を投げかけられても夫は決して私をかばおうとはしなかった。
ただ面倒臭そうに酒をみ、私がでをげるのを横目で見ているだけだった。
所のたちも顔をわせるたびに「おめでたはまだなの」と余計な探りを入れてきた。
町内会の回覧板を回しにくすら目が気になってくようになっていた。
世体を何より気にする義母はで何も言えない分、のでの私への当たりがににくなった。
「あなたのご両親はどういう教育をしてあなたを送りしたのかしらね」。
その言葉は私というだけでなく私を育ててくれた実をも否定するものだった。
私は全て自分が悪いのだと責め、で駅にある婦科の病院に通い始めた。
待には夫婦で寄り添いながらそうに順番を待っているたちがたくさんいた。
広告
私はいつも部の隅で古い雑誌をめくりながら自分の名が呼ばれるのをじっと待った。
恥ずかしい検査を受けい薬をみ、には体調を崩すほど辛い治療にも耐えた。
それでも夫の健は度も緒に病院へき、医師から結果を聞きにってはくれなかった。
「俺は仕事があって忙しいんだからおでってくればいいだろう」。
夕の席でそう言で片付けられ、私は聞を読む夫のたい背を見送るしかなかった。
「どうせおの体に問題があるんだから俺がっても何のもない」。
その決定な言葉を聞いた夜私はたい布団ので声を殺してで泣いた。
義母も「あなたの方に問題があるんでしょう」とたく決めつけ、私を気遣うことは切なかった。
このので私はしずつ透なになり、を失っていくようだった。
それでも子供を残せない私がこので居所を作るためには働くしかないのだとい込んでいた。
毎朝く起きて義父の正尾の血圧を測り、の薬をさなケースに分けて準備する。
義父の自由なにわせて廊にはすりの代わりにさな子をいくつも置いた。
義母の好みにわせて朝を作り、夫の弁当を詰めて洗濯を回して玄関を掃く。
誰かに褒められるわけでもなく、ただそれが私の唯の理由になっていた。
広告
私がいなければこのの活は回らないのだと無理やり自分に言い聞かせていた。
そうやって自分というを削り、すり減らしながら今というまできてきたのだ。
公園の々がたいにきく揺れ、乾いた落葉の擦れる音が静寂を破った。
私はえ切った両で膝のの黒いゴミ袋の結び目にそっと触れた。
やはり義父の自由なで結んだとはえないほどそれは固く結ばれていた。
何度も何度も、まるで何かを封じ込めるように結び直された跡があった。
そのに乗ってくの学から夕方のチャイムがかすかに聞こえてきた。
この袋をけなければ私は永にこのでの 15 という過に引きずられたままになる。
私はゆっくりとく息を吐き、たくなった指先を結び目にかけた。
く結ばれた黒いビニールがカサカサな音をててしだけ緩む。
その隙から見えたのは臭いゴミでもただの品でもなかった。
私の目にび込んできたのは見覚えのある古い聞の束だった。
そしてその奥からさな茶いの端が顔を覗かせていた。
たいので黒いビニールが乾いた音をてた。
私は公園のベンチに座ったまま震える指先で結び目をほどいた。
を広げるとから古いと埃りの混ざったような静かな匂いがした。
広告
おすすめ作品
-
完結第27話
中卒の兄、結婚式で覚醒す
弟が名医として結婚式を挙げた日。 学歴至上の親戚たちは、医者の弟を持ちながら中卒でトラック運転手の俺を見下し、笑いものにした。 「こんな底辺な兄がいるなんて、恥ずかしいわw」 「せっかく医者になったのに、身内が足を引っ張る」 義父である大病院の院長まで、俺を蔑み、権力で圧しつけてくる。 誰もが俺を惨めな負け組だと決めつけたその瞬間―― ずっと黙っていた弟が、冷めた声で義父に告げた。 「院長。あなたはまだ、兄の正体に気づかないんですか?」 たった一言で、豪華な結婚式会場は一瞬で凍りついた。 彼らが馬鹿にした中卒の底辺兄。 実は、年商数百億の企業社長で、弟の夢を全部支えてきた男だった。 続々と入る国税局捜査、崩壊する権力、覆される階級。 学歴と肩書きだけで人を見下すエリートたちの顔面が、地に落ちる―― 最強兄の無双逆転、最後まで必見!因果応報|人生逆転|怒り|兄弟姉妹|親子関係4.1萬字5 71 -
完結第21話
父の残した翼
結婚 1 週間後、夫は毎晩汗だくで私の母の部屋から出てくる。 あまりに不自然な様子に不安を抱いた私は、部屋に隠しカメラを仕掛けた。 録画映像を再生した瞬間、私は衝撃でその場に膝から崩れ落ちた…… 夫の優しい仮面の裏に隠された、金欲と脅迫の悪夢が、全て記録されていた。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|親子関係3.2萬字5 132 -
完結第6話
他人と言われた娘
5歳の娘・マリが、義実家のクリスマスパーティーで泣きながら尋ねた。 「おばあちゃん、マリのは?」 長男嫁の子どもたちにはプレゼントを渡した姑。けれどマリにだけは、冷たい言葉を浴びせた。 「低学歴の嫁から生まれた子なんて、うちの孫じゃない」 施設で育ち、大学には行けなかった美優。結婚当初から姑に見下され続けても、夫の母だからと我慢してきた。しかも美優は、姑が知らないところで、何年も仕送りを続けていた。 しかし、娘まで“他人”扱いされた瞬間、美優の中で何かが切れる。 「分かりました。今後は他人として接します」 翌月、姑は初めて知ることになる。 自分の生活を支えていた仕送りが、誰から届いていたのかを。 そして、他人だと笑った相手に頼っていた姑の暮らしは、静かに崩れ始める――。嫁姑|親子関係9.2千字5 2 -
完結第10話
母が家を消した日
75歳の高橋幸は、お盆の夜、廊下の向こうから聞こえてきた家族の会話に足を止めた。 「おばあちゃんが施設に行ったら、この家、私たちのものになるの?」 息子夫婦は、幸を介護施設へ入れ、そのマンションを売って自分たちのローンや教育費に充てる計画を立てていた。しかも、その話は一時の思いつきではなく、すでに何か月も前から進められていたものだった。 翌朝、息子と嫁は何事もなかったように優しい顔で接してくる。病院での認知症検査、施設リスト、マンション売却後の資金計画――幸は静かに証拠を集めながら、最後の決断を胸に秘める。 そして、息子一家が海外旅行へ出かけた日。 幸は長年暮らしたマンションを売り、誰にも告げず東京を離れた。 旅行から戻った家族を待っていたのは、もう開かないオートロックと、母が残した一通の手紙だった――。因果応報|絶縁|親子関係1.4萬字5 2